「何度もトイレに駆け込む日々、もううんざり…」
「便に血が混じるたび、不安で押しつぶされそうになる…」
「腹痛と下痢が止まらず、外出もままならない…」
もしかしたら、それは潰瘍性大腸炎のサインかもしれません。
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症が起こる病気で、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴です。
放置すると、日常生活に支障をきたすだけでなく、大腸がんのリスクを高めるなど、重篤な合併症を引き起こすこともあります。
この記事では、潰瘍性大腸炎の最新治療と安心生活ガイドについて、看護師の視点から詳しく解説します。
潰瘍性大腸炎とは:大腸の粘膜に炎症が起こる病気
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症が起こり、びらん(粘膜のただれ)や潰瘍(粘膜の傷)ができる病気です。
炎症は、直腸から始まり、連続的に大腸全体に広がることもあります。
原因はまだはっきりと解明されていませんが、免疫異常や遺伝的要因、環境要因などが複雑に関与して発症すると考えられています。
潰瘍性大腸炎の症状:血便、腹痛、下痢などが主な症状
潰瘍性大腸炎の主な症状は、以下の通りです。
- 血便:
- 鮮血便や粘血便(粘液と血液が混ざった便)が出る。
- 排便回数が増える(1日10回以上になることも)。
- 便意切迫感(トイレに間に合わないほど強い便意)。
- 腹痛:
- 下腹部痛や腹部のけいれん痛がある。
- 食後に激しい腹痛があり、冷や汗が出るほど。
- 排便後に痛みが和らぐことがある。
- 下痢:
- 水様便や泥状便が出る。
- 残便感がある(排便後もまだ便が残っている感じ)。
- 夜間にも下痢や腹痛で目が覚める。
- その他:
- 発熱(38度以上の高熱が出ることもある)。
- 体重減少(食欲不振や栄養吸収不良による)。
- 貧血(慢性的な出血による)。
- 全身倦怠感(疲れやすく、体がだるい)。
- 食欲不振(吐き気や嘔吐を伴うこともある)。
- 関節炎、皮膚炎、虹彩炎など、腸以外の場所に炎症が起こることもある。
これらの症状は、病気の活動期(症状が悪化する時期)に現れやすく、寛解期(症状が落ち着く時期)にはほとんど症状がなくなることもあります。
潰瘍性大腸炎の原因:免疫異常、遺伝的要因、環境要因などが複雑に関与
潰瘍性大腸炎の原因は、まだはっきりと解明されていませんが、以下の要因が複雑に関与して発症すると考えられています。
- 免疫異常:
- 本来、体を守るはずの免疫が、腸の粘膜を攻撃してしまう自己免疫疾患と考えられています。
- 免疫細胞の過剰な活性化や、免疫を抑制する機能の低下などが関与していると考えられています。
- 遺伝的要因:
- 家族に潰瘍性大腸炎の人がいると、発症リスクが数倍高まると言われています。
- 特定の遺伝子変異が、潰瘍性大腸炎の発症に関与していると考えられています。
- 環境要因:
- 食生活の乱れ:高脂肪食、高タンパク食、加工食品の摂取など。
- ストレス:精神的なストレスや過労など。
- 腸内細菌の乱れ:特定の腸内細菌の減少や、悪玉菌の増加など。
- その他:喫煙、特定の薬剤の服用、感染症なども関与している可能性が指摘されています。
これらの要因が単独で、または複合的に作用して、潰瘍性大腸炎を発症すると考えられています。
潰瘍性大腸炎の診断方法:大腸内視鏡検査、血液検査、便検査など
潰瘍性大腸炎の診断には、以下の検査が行われます。
- 大腸内視鏡検査:
- 大腸の粘膜の状態を直接観察し、炎症や潰瘍の有無、範囲、程度などを確認します。
- 組織を採取し、顕微鏡で詳しく調べる(病理検査)ことで、確定診断を行います。
- 炎症の分布や程度、合併症の有無などを評価するために、定期的に行われます。
- 血液検査:
- 炎症反応(CRP、赤沈など)や貧血(ヘモグロビン、ヘマトクリットなど)の有無などを調べます。
- 栄養状態(アルブミンなど)や肝機能、腎機能なども評価します。
- 薬物療法を行う場合は、副作用の有無などを確認するために定期的に行われます。
- 便検査:
- 便中の血液(潜血反応)や炎症物質(カルプロテクチンなど)の有無などを調べます。
- 細菌感染や寄生虫感染の有無なども調べます。
- 病気の活動性を評価するために、定期的に行われることがあります。
- X線検査:
- 大腸の形状や狭窄(腸管が狭くなること)、瘻孔(腸管と他の臓器がつながる穴)などの合併症の有無などを調べます。
- 重症例や手術前に行われることがあります。
- CT検査やMRI検査も、同様の目的で行われることがあります。
これらの検査結果を総合的に判断して、潰瘍性大腸炎と診断されます。
潰瘍性大腸炎の治療法:薬物療法、食事療法、手術など
潰瘍性大腸炎の治療法は、病気の重症度や症状によって異なります。
- 薬物療法:
- 5-アミノサリチル酸製剤:炎症を抑えるために、第一選択薬として使用されます。
- メサラジン、サラゾピリンなど。
- 軽症から中等症の活動期、寛解期の維持療法に使用されます。
- ステロイド:炎症を強力に抑えるために、短期間使用されます。
- プレドニゾロン、メチルプレドニゾロンなど。
- 中等症から重症の活動期に使用されます。
- 長期使用は副作用のリスクがあるため、注意が必要です。
- 免疫調節薬:免疫の働きを調整し、炎症を抑えるために使用されます。
- アザチオプリン、6-メルカプトプリンなど。
- ステロイドの減量や中止を目的として、長期的に使用されます。
- 副作用のリスクがあるため、定期的な血液検査が必要です。
- 生物学的製剤:炎症に関わる特定の物質(TNF-α、インテグリンなど)を抑えるために使用されます。
- インフリキシマブ、アダリムマブ、ベドリズマブ、ウステキヌマブなど。
- 中等症から重症の活動期、寛解期の維持療法に使用されます。
- 高額な薬剤ですが、効果が高い場合もあります。
- 5-アミノサリチル酸製剤:炎症を抑えるために、第一選択薬として使用されます。
- 食事療法:
- 低残渣食:消化しやすい食事を摂ることで、腸への負担を軽減します。
- 白米、うどん、鶏肉、魚、豆腐など。
- 食物繊維や脂肪の多い食品は控えましょう。
- 高カロリー食:栄養状態を改善するために、高カロリーの食事を摂ります。
- 消化の良い高カロリー食品(エンシュアなど)を使用することもあります。
- ビタミンやミネラルもバランスよく摂りましょう。
- 症状に合わせた食事制限:症状に合わせて、食事内容を調整します。
- 下痢がひどい場合は、水分や電解質を補給しましょう。
- 貧血がある場合は、鉄分を多く含む食品を摂りましょう。
- 腹痛がある場合は、刺激の少ない食事を摂りましょう。
- 低残渣食:消化しやすい食事を摂ることで、腸への負担を軽減します。
- 手術:
- 薬物療法で効果がない場合や、重篤な合併症が起こった場合に検討されます。
- 大腸全摘術:大腸を全て摘出する手術。
- 回腸貯留嚢肛門吻合術:小腸で便を貯める袋を作り、肛門につなげる手術。
- 瘻孔切除術:瘻孔(腸管と他の臓器がつながる穴)を切除する手術。
- 薬物療法で効果がない場合や、重篤な合併症が起こった場合に検討されます。
これらの治療法を組み合わせることで、症状の改善や寛解状態の維持を目指します。
潰瘍性大腸炎のQ&A
Q:潰瘍性大腸炎は、放置するとどうなりますか?
A:潰瘍性大腸炎を放置すると、以下のような合併症を引き起こすことがあります。
- 大腸がん:発症から10年以上経過すると、大腸がんのリスクが高まります。
- 中毒性巨大結腸症:大腸が拡張し、腸閉塞や穿孔(腸に穴が開くこと)を引き起こすことがあります。
- 大量出血:重度の炎症により、大量の出血が起こることがあります。
- その他:関節炎、皮膚炎、虹彩炎など、腸以外の場所に炎症が起こることがあります。
これらの合併症は、日常生活に支障をきたすだけでなく、命に関わることもあります。
Q:潰瘍性大腸炎は、治りますか?
A:潰瘍性大腸炎は、完治が難しい病気ですが、適切な治療を続けることで、症状をコントロールし、寛解状態を維持することは可能です。
根気強く治療を続けることが大切です。
Q:潰瘍性大腸炎の治療期間は、どのくらいかかりますか?
A:潰瘍性大腸炎の治療期間は、病気の重症度や治療への反応によって異なります。
軽症から中等症の場合は、数週間から数ヶ月で症状が改善することが多いです。
重症の場合は、数ヶ月から数年単位で治療が必要になることがあります。
寛解状態を維持するためには、数年から生涯にわたって治療を続ける必要があります。
Q:潰瘍性大腸炎の治療費は、どのくらいかかりますか?
A:潰瘍性大腸炎の治療費は、治療法や医療機関によって異なります。
薬物療法の場合、月々の薬代や診察料がかかります。
生物学的製剤を使用する場合は、さらに高額になることがあります。
手術を行う場合は、入院費や手術費用がかかります。
潰瘍性大腸炎は、指定難病に認定されており、医療費助成制度を利用できる場合があります。
詳しくは、医療機関や自治体にご相談ください。
Q:潰瘍性大腸炎の予防法はありますか?
A:潰瘍性大腸炎を完全に予防する方法はありませんが、以下のことに注意することで、発症リスクを下げることができる可能性があります。
- バランスの取れた食事
- ストレスを溜め込まない
- 十分な睡眠をとる
- 適度な運動をする
- 禁煙
Q:潰瘍性大腸炎の相談は、何科に行けば良いですか?
A:潰瘍性大腸炎の相談は、消化器内科や炎症性腸疾患(IBD)専門外来で受け付けています。
看護師として伝えたいこと:一人で悩まず、私たちにご相談ください
潰瘍性大腸炎は、症状や治療に対する不安など、患者さん一人ひとりの悩みや不安が大きい病気です。
潰瘍性大腸炎と向き合い、より良い生活を送れますように。
出典
- 難病情報センター 潰瘍性大腸炎(指定難病97):https://www.nanbyou.or.jp/entry/62
- 国立成育医療研究センター 潰瘍性大腸炎:https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/ibd/uc.html