「午後になると、体が鉛のように重くなり、何もする気が起きない。週末は、一日中寝て過ごしてしまう。」
「健康診断で脂肪肝と言われたけど、特に症状がないから放置している。お酒も毎日飲むし、食事も好きなものを好きなだけ食べている。」
もしかしたら、あなたの肝臓は悲鳴を上げているかもしれません。
脂肪肝は、肝臓に中性脂肪が過剰に蓄積した状態です。
放置すると、肝硬変や肝臓がんなど、命に関わる病気を引き起こすこともあります。
この記事では、脂肪肝の原因、症状、検査、対策、そして治療法について、看護師の視点から詳しく解説します。
脂肪肝とは:肝臓に中性脂肪が過剰に蓄積した状態
脂肪肝とは、肝臓に中性脂肪が過剰に蓄積した状態を指します。
通常、肝臓に蓄えられる中性脂肪は肝臓の重量の3~5%ですが、脂肪肝になると30%以上になります。
脂肪肝の原因:過剰な飲酒、肥満、糖尿病などが要因に
脂肪肝の主な原因は、以下の通りです。
- アルコールの過剰摂取:
- アルコールは肝臓で分解される際に中性脂肪の合成を促進します。
- 連日の飲酒や大量飲酒は、肝臓に負担をかけ、脂肪肝を引き起こします。
- 特に、男性は1日平均30g以上、女性は1日平均20g以上の純アルコール摂取で脂肪肝のリスクが高まると言われています。
- 肥満:
- 肥満は、内臓脂肪の蓄積を促し、肝臓にも脂肪が蓄積されやすくなります。
- 特に、内臓脂肪型の肥満は、脂肪肝のリスクを高めます。
- BMI(体格指数)が25以上の場合、脂肪肝のリスクが高まると言われています。
- 糖尿病:
- 糖尿病は、インスリンの働きが悪くなり、血糖値が上昇します。
- 高血糖は、肝臓での中性脂肪の合成を促進し、脂肪肝を引き起こします。
- 糖尿病患者の約70%に脂肪肝が見られると言われています。
- その他:
- 脂質異常症、薬剤(ステロイド、抗うつ薬など)、栄養障害、睡眠時無呼吸症候群なども、脂肪肝の原因となることがあります。
脂肪肝の患者数:成人の3人に1人が脂肪肝
脂肪肝の患者数は、近年増加傾向にあります。
成人の3人に1人が脂肪肝と言われており、特に40代以上の男性に多く見られます。
脂肪肝の症状:ほとんどが無症状、進行すると倦怠感や食欲不振
脂肪肝の主な症状は、以下の通りです。
- ほとんどが無症状:
- 初期の脂肪肝は、ほとんどの場合、自覚症状がありません。
- そのため、健康診断などで偶然発見されることが多いです。
- 進行すると:
- 午後になると、体が鉛のように重くなり、何もする気が起きない。週末は、一日中寝て過ごしてしまう。
- 倦怠感、食欲不振、右上腹部の不快感などが現れることがあります。
- さらに進行すると、肝機能が悪化し、黄疸や腹水、肝性脳症などが現れることもあります。
脂肪肝の検査:血液検査、腹部超音波検査、CT検査など
脂肪肝の検査は、以下の方法で行われます。
- 血液検査:
- 肝機能を示すAST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなどの数値を測定します。
- これらの数値が高い場合は、肝臓に異常がある可能性が考えられます。
- 血液検査費用は、保険適用で3割負担の場合、1,000円~3,000円程度です。
- 腹部超音波検査:
- 超音波を使って肝臓の状態を観察し、脂肪の蓄積具合を確認します。
- 検査は、痛みもなく、短時間で終わります。
- 腹部超音波検査費用は、保険適用で3割負担の場合、3,000円~5,000円程度です。
- CT検査・MRI検査:
- より詳細な肝臓の状態を観察し、脂肪の蓄積具合や肝臓の硬さを確認します。
- CT検査は、放射線を使用するため、妊娠中の方は医師に相談が必要です。
- MRI検査は、金属を身につけている方は受けられない場合があります。
- CT検査・MRI検査費用は、保険適用で3割負担の場合、5,000円~10,000円程度です。
- その他:
- 肝生検:肝臓の組織を採取し、顕微鏡で観察します。
- 肝臓の炎症や線維化の程度を調べます。
脂肪肝の対策:生活習慣の改善が基本
脂肪肝の対策は、以下の方法があります。
- 食生活の改善:
- バランスの取れた食事を心がけ、摂取カロリーを制限しましょう。
- 1日の摂取カロリー目安:男性1,800kcal、女性1,600kcal
- 炭水化物、脂質、タンパク質のバランス:炭水化物50~60%、脂質20~30%、タンパク質15~20%
- 特に、糖質や脂質の過剰摂取は控えましょう。
- 糖質:白米、パン、麺類、お菓子、ジュースなど
- 脂質:揚げ物、肉の脂身、バター、マヨネーズなど
- 野菜、魚、大豆製品などを積極的に摂りましょう。
- 野菜:1日350g以上
- 魚:週に2回以上
- 大豆製品:豆腐、納豆、味噌など
- アルコールは控え、禁酒・節酒に努めましょう。
- 禁酒が難しい場合は、休肝日を設けましょう。
- 飲酒する場合は、適量を守りましょう。
- バランスの取れた食事を心がけ、摂取カロリーを制限しましょう。
- 運動習慣の改善:
- 有酸素運動を中心に、1日30分以上、週3回以上の運動を目標にしましょう。
- 有酸素運動:ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなど
- 運動強度の目安:軽く息が弾む程度
- 筋力トレーニングも取り入れると、基礎代謝が上がり、脂肪燃焼効果が高まります。
- 筋力トレーニング:スクワット、腕立て伏せ、腹筋運動など
- 筋力トレーニングの頻度:週に2回程度
- 有酸素運動を中心に、1日30分以上、週3回以上の運動を目標にしましょう。
- 体重コントロール:
- 肥満の方は、適正体重を目指して減量しましょう。
- 1ヶ月に1~2kg程度の減量を目標にしましょう。
- 急激な減量は、肝臓に負担をかけることがあります。
- 適正体重の目安:BMI(体格指数)22
- BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
- 肥満の方は、適正体重を目指して減量しましょう。
- 糖尿病の治療:
- 糖尿病の方は、血糖コントロールをしっかり行いましょう。
- 医師の指示に従い、適切な薬物療法や食事療法を行いましょう。
- HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の目標値:7.0%未満
- 糖尿病の方は、血糖コントロールをしっかり行いましょう。
- 睡眠の質の向上:
- 睡眠不足は、脂肪肝のリスクを高める可能性があります。
- 睡眠時間:7時間程度
- 睡眠の質を高める:寝る前にスマートフォンやパソコンを見ない、寝室を暗く静かにする
- 睡眠不足は、脂肪肝のリスクを高める可能性があります。
脂肪肝の治療:原因疾患の治療と生活習慣の改善
脂肪肝の治療は、以下の方法があります。
- 原因疾患の治療:
- アルコール性脂肪肝の場合は、禁酒が基本です。
- 糖尿病や脂質異常症などが原因の場合は、それぞれの疾患の治療を行います。
- 生活習慣の改善:
- 食生活の改善、運動習慣の改善、体重コントロールなどを行います。
- これらの改善により、多くの場合は肝機能が改善します。
- 薬物療法:
- ビタミンE製剤や漢方薬などが使用されることがありますが、効果は限定的です。
- 医師の指示に従い、適切な薬物療法を行いましょう。
- その他:
- 重度の場合は、肝生検や肝移植が検討されることがあります。
脂肪肝に関するQ&A
Q:脂肪肝は、放置するとどうなりますか?
A:脂肪肝を放置すると、肝臓に炎症が起こり、肝線維化、肝硬変へと進行することがあります。
肝硬変になると、肝臓の機能が著しく低下し、黄疸や腹水、肝性脳症などが現れることがあります。
また、肝臓がんのリスクも高まります。
Q:脂肪肝の改善には、どのくらいの期間がかかりますか?
A:脂肪肝の改善期間は、原因や重症度によって異なります。
アルコール性脂肪肝の場合は、禁酒を続けることで、1~3ヶ月で肝機能が改善することが多いです。
肥満や糖尿病が原因の場合は、生活習慣の改善を継続することで、数ヶ月から年単位で改善が見られます。
Q:脂肪肝の人は、日常生活でどのようなことに注意すれば良いですか?
A:脂肪肝の人は、以下のことに注意しましょう。
- バランスの取れた食事を心がけ、摂取カロリーを制限しましょう。
- アルコールは控え、禁酒・節酒に努めましょう。
- 適度な運動を習慣にしましょう。
- 定期的に医療機関を受診し、肝機能検査を受けましょう。
- 睡眠をしっかりとるようにしましょう。
看護師として伝えたいこと:早期発見・早期対策が大切
脂肪肝は、早期に発見し、適切な対策を行うことで、改善が期待できます。
「特に症状がないから大丈夫」と思わず、定期的な健康診断を受け、生活習慣を見直しましょう。
脂肪肝と向き合い、健康な肝臓を取り戻しましょう。
出典