その激しいめまい、もしかして脳の病気?寝返り・起床時に襲われる良性発作性頭位めまい症の真実

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「朝、目覚めて体を起こそうとした瞬間、天井がぐるぐると回り出した…」
「夜中に寝返りを打つたびに、まるでジェットコースターに乗っているような激しいめまいに襲われる…」
「この異常なめまい、もしかして脳の病気なんじゃないか…?」

もしかしたら、あなたはそんな耐え難いめまいに、大きな不安を感じていませんか?

良性発作性頭位めまい症(BPPV)は、特定の頭の位置の変化によって引き起こされる、比較的頻度の高いめまい疾患です。

その激しい回転性のめまい発作は、まるで脳に何か異常が起きたのではないかと感じさせるほど強烈な場合があります。

しかし、「良性」という名前が示すように、多くの場合、命に関わるような重篤な病気ではありません。

この記事では、寝返りや起床時に起こりやすい良性発作性頭位めまい症の真実を明らかにし、その症状、原因、脳の病気との違い、そして自分でできる効果的な対処法、再発予防まで、看護師の視点から詳しく解説します。

良性発作性頭位めまい症(BPPV)とは:特定の頭の位置で起こる短時間だが強烈なめまい

良性発作性頭位めまい症(Benign Paroxysmal Positional Vertigo:BPPV)は、頭を特定の方向に動かした際に、数十秒から1分程度の短い時間ですが、非常に激しい回転性のめまいが突然現れる病気です。

「良性」という言葉に安心感を覚えるかもしれませんが、その発作の強さから、脳卒中や脳腫瘍といった重篤な病気を疑う方も少なくありません。

しかし、良性発作性頭位めまい症は、脳の異常ではなく、内耳の機能異常によって引き起こされる病気です。

良性発作性頭位めまい症の症状:ぐるぐる回る激しいめまい、吐き気、眼振

良性発作性頭位めまい症の主な症状は、以下の通りです。

  • 激しい回転性めまい:
    • 自分自身や周囲の景色がぐるぐると回るように感じる、非常に不快なめまい
    • 特定の頭の位置(寝返り時、起き上がり時、頭を洗う時、高い所の物を取る時など)で誘発されることが多い
    • めまいの持続時間は、通常数十秒から1分以内と短い
  • 吐き気、嘔吐:
    • めまいの強さに伴い、吐き気や実際に嘔吐してしまうことがある
    • 特に、めまい発作の初期に起こりやすい
  • 眼振(眼球振盪):
    • めまい発作中に、眼球が左右や上下、または回転するように細かく素早く揺れる
    • 医療機関でのめまい検査(Dix-Hallpikeテストなど)で確認される重要な所見
  • 体位変換によるめまいの誘発:
    • 寝返りを打つ瞬間
    • ベッドから起き上がろうとする時
    • 頭を上下に動かす時(例:洗髪時、高い所の物を取る時)
    • 天井を見上げる時
    • うつむく時

これらの症状は、特定の頭の位置の変化によって誘発されることが、良性発作性頭位めまい症の最も特徴的な点です。

めまい発作の間隔には個人差があり、数日から数週間続くこともあれば、数ヶ月ぶりに起こることもあります。

注意すべき症状:

良性発作性頭位めまい症では、通常、めまい以外の神経症状(手足の麻痺やしびれ、顔面の麻痺、言葉のもつれ、強い頭痛、意識消失など)を伴うことはありません。

もし、これらの症状がめまいに加えて現れた場合は、脳卒中や他の重篤な病気の可能性も考えられますので、すぐに医療機関を受診してください。

良性発作性頭位めまい症の原因:内耳の耳石の異常

良性発作性頭位めまい症の主な原因は、内耳にある平衡感覚を司る器官の一つ、「耳石器」の中にある小さな炭酸カルシウムの結晶、「耳石(じせき)」の異常です。

通常、耳石は耳石器内のゼラチン状の物質に付着しており、重力や加速度を感じ取るセンサーのような役割をしています。

しかし、何らかの原因で耳石が剥がれ落ち、平衡感覚を司るもう一つの重要な器官である「三半規管」の中に入り込んでしまうことがあります。

三半規管は、頭の回転運動を感知する役割を担っており、リンパ液で満たされています。

頭の位置が変わると、三半規管内に入り込んだ耳石がリンパ液の流れを異常に刺激し、脳が誤った回転運動の情報を認識することで、激しいめまいが引き起こされると考えられています。

耳石が剥がれ落ちる要因としては、以下のものが考えられますが、多くの場合、明確な原因は特定できません。

  • 加齢:内耳の組織が加齢とともに変化し、耳石が剥がれやすくなることがあります。
  • 頭部外傷:頭を強く打った衝撃で、耳石が剥がれることがあります。
  • 内耳の病気:メニエール病や前庭神経炎などの内耳の病気に続発することがあります。
  • 長期間の臥床:手術後や病気などで длительное время 寝ていると、耳石が移動しやすくなることがあります。
  • 骨粗鬆症:骨密度の低下が、耳石の形成や維持に影響を与える可能性が指摘されています。
  • 原因不明(特発性):最も多い原因であり、明らかな誘因なく発症します。

良性発作性頭位めまい症の診断:詳細な問診と眼振の確認が鍵

良性発作性頭位めまい症の診断は、主に耳鼻咽喉科の医師による詳細な問診と、特定の頭位変換によって誘発される眼振(眼球振盪)の観察によって行われます。

  • 問診:
    • めまいの種類(回転性、ふわふわするなど)
    • めまいが起こる時の具体的な状況や頭の位置
    • めまいの持続時間
    • 吐き気や嘔吐の有無
    • 過去の病歴(頭部外傷、耳の病気、神経系の病気など)
    • 服用中の薬
  • 眼振の観察:
    • Dix-Hallpike(ディックス・ホールパイク)テスト:患者さんをベッドに座らせ、頭を特定の方向に回した状態で急速に寝かせ、めまいと眼振の出現を観察する代表的な検査です。
    • 誘発される眼振の方向や時間、疲労現象(検査を繰り返すと眼振が出にくくなる現象)などを詳しく観察することで、どの三半規管に耳石が入り込んでいるかを特定することができます。

必要に応じて、聴力検査や平衡機能検査(重心動揺検査など)、画像検査(MRIなど)が行われることもあります。

画像検査は、めまいの原因が脳の病気ではないことを確認するために行われることが一般的です。

良性発作性頭位めまい症の治療と自分でできる対処法

良性発作性頭位めまい症は、多くの場合、自然に軽快することが期待できます。剥がれ落ちた耳石が、時間の経過とともに三半規管から自然に出て、元の耳石器に戻ることがあるためです。

しかし、症状が頻繁に起こる場合や、日常生活に支障をきたす場合は、以下の治療や自分でできる対処法が行われます。

  • 理学療法(耳石置換法):
    • 専門の医師や理学療法士が、患者さんの頭と体を特定の順序に従ってゆっくりと動かすことで、三半規管に入り込んだ耳石を、重力を利用して元の耳石器に戻す治療法です。
    • Epley(エプリー)法Semont(セモント)法などが代表的で、どの三半規管に耳石があるかによって使い分けられます。
    • 適切な耳石置換法を行うことで、多くの方が数回の治療でめまいの症状が劇的に改善します。
  • 薬物療法:
    • 抗めまい薬や制吐薬は、めまい発作時の症状を一時的に和らげるために使用されることがあります。しかし、良性発作性頭位めまい症の原因そのものを治療する効果はありません。
    • 主に、めまいが強く日常生活に支障が出る場合に、症状を緩和する目的で使用されます。
  • 自分でできる対処法:
    • めまいを誘発する頭の位置を避ける:しばらくの間、めまいが起こりやすい頭の動きや姿勢を意識的に避けるようにしましょう。例えば、高い所の物を取る時は踏み台を使う、寝返りをゆっくり行うなど。
    • ゆっくりとした動作を心がける:急な頭の動きは、めまいを誘発しやすいため、動作はゆっくりと行うように心がけましょう。
    • 十分な睡眠と休息:体調が悪いと、めまいが起こりやすくなることがあります。質の高い睡眠を確保し、心身ともにリラックスできる時間を作りましょう。
    • 水分補給をしっかりと行う:脱水状態は、めまいを引き起こす要因の一つとなることがあります。こまめに水分補給を心がけましょう。
    • 不安を軽減する:めまいに対する過度な不安や心配は、症状を悪化させることがあります。良性発作性頭位めまい症は適切な治療で改善することが多い病気であることを理解し、リラックスするように努めましょう。

良性発作性頭位めまい症のQ&A

Q:良性発作性頭位めまい症は、脳の病気とどう違うのですか?

A:良性発作性頭位めまい症は、内耳の異常によって起こるめまいであり、脳の病気ではありません。

良性発作性頭位めまい症の特徴:

  • 特定の頭の位置の変化で誘発される
  • めまいの持続時間が短い(数十秒〜1分以内)
  • めまい以外の神経症状(麻痺、言語障害など)を伴わないことが多い

脳の病気によるめまいの可能性が高い場合:

  • めまいが持続時間が長い、または持続する
  • めまいだけでなく、手足の麻痺やしびれ、顔面の麻痺、言葉のもつれ、強い頭痛、意識消失などを伴う
  • 聴力低下や耳鳴りを伴う
  • バランス感覚が著しく悪い

もし、上記のような症状がみられる場合は、すぐに医療機関を受診し、専門医の診察を受けてください。

Q:良性発作性頭位めまい症の治療期間は、どのくらいかかりますか?

A:良性発作性頭位めまい症の治療期間は、症状の程度原因となっている耳石の場所、そして理学療法への反応によって大きく異なります。
軽症の場合や、自然に耳石が元の場所に戻った場合は、数日から数週間で症状が改善することがあります。
理学療法(耳石置換法)を行う場合は、多くの方が1〜3回程度の治療(1週間以内)でめまいの症状が軽減または消失します。ただし、完全に症状がなくなるまでには、もう少し時間がかかる場合や、再発を繰り返す方もいらっしゃいます。
まれに、理学療法だけでは改善が難しい場合や、他の原因が隠れている可能性もあるため、根気強く医師と相談しながら治療を進めていくことが大切です。

Q:良性発作性頭位めまい症は、自分で治すための体操はありますか?

A:インターネット上には、良性発作性頭位めまい症に対する自己流の体操が紹介されていることもありますが、自己判断で行うことは推奨できません。
誤った方法で行うと、かえって症状を悪化させてしまう可能性や、他の病気を見逃してしまう危険性があります。
良性発作性頭位めまい症の治療の基本は、専門家による正確な診断に基づいた適切な耳石置換法です。
ご自身でできることとしては、めまいを誘発する頭の位置を避ける、ゆっくりと頭を動かすなどのセルフケアが大切です。
めまいの症状が続く場合は、必ず医療機関を受診し、医師や理学療法士の指導のもとで適切な治療を受けてください。

Q:良性発作性頭位めまい症の相談は、やはり耳鼻咽喉科に行くべきでしょうか?

A:はい、良性発作性頭位めまい症の相談は、まず耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。
耳鼻咽喉科は、めまいの専門的な診断と治療を行っており、良性発作性頭位めまい症に対する知識と経験が豊富です。
めまいの症状や経過を詳しく伝え、医師の指示に従って適切な検査と治療を受けてください。
脳神経内科でもめまいの診療を行っていますが、まずは耳鼻咽喉科を受診するのが一般的です。

Q:良性発作性頭位めまい症は、再発しやすいと聞きましたが、予防法はありますか?

A:良性発作性頭位めまい症は、残念ながら再発することがある病気です。
明確な予防法は確立されていませんが、日常生活で以下の点に注意することで、再発のリスクを減らすことができるかもしれません。

  • 急な頭の動きを避ける
  • 十分な睡眠と休息をとる
  • ストレスを溜め込まない
  • 体調管理に気をつける
  • 適度な運動を心がける

もし、再びめまい発作が起こった場合は、我慢せずに、以前受診した医療機関に相談するか、再度医療機関を受診してください。早期に適切な対処を行うことで、症状を和らげることができます。

看護師として伝えたいこと:激しいめまいに不安を感じたら、迷わず専門医を受診してください

良性発作性頭位めまい症による激しいめまいは、日常生活に大きな支障をきたし、精神的な不安も引き起こします。

しかし、適切な診断と治療を受けることで、多くの方が症状の改善を期待できます。

「もしかして脳の病気かも?」といった不安を抱え込まずに、まずは耳鼻咽喉科などの専門医に相談してください。

出典

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