「最近、お腹の右下側が痛む」
「吐き気や食欲不振もある」
「もしかして、盲腸（虫垂炎）？」
もしかしたら、それは虫垂炎かもしれません。
虫垂炎は、放置すると重篤な合併症を引き起こす可能性もある病気です。
この記事では、虫垂炎の原因、症状、検査、治療法、そして予防策について、看護師の視点から詳しく解説します。
虫垂炎（盲腸炎）とは：虫垂の炎症
虫垂炎とは、右下腹部にある盲腸の先端に付着している長さ約10cmほどの突起、虫垂に炎症が起こる病気です。
一般的には「盲腸」と呼ばれることが多いですが、正確には「虫垂炎」が正しい名称です。
青少年期に多くみられますが、どの年齢層でも発症する可能性があります。
虫垂炎（盲腸炎）の症状：右下腹部痛、吐き気、発熱など
虫垂炎の主な症状は、以下の通りです。
- 腹痛： 突然の上腹部（胃のあたり）の腹痛から始まり、徐々に痛みが右下腹部（虫垂のある部分）に移動する。右下腹部痛は、時間経過とともに増強し、我慢できないほどの痛みになることもあります。
- 吐き気・嘔吐： 吐き気や嘔吐を伴うことがあります。
- 発熱： 微熱から高熱まで、発熱が見られることがあります。
- 食欲不振： 食欲がなくなることがあります。
- 下痢または便秘： 下痢や便秘を伴うことがあります。
- 腹部膨満感： お腹が張った感じがすることがあります。
これらの症状は、虫垂炎以外の病気でも起こることがあります。
気になる症状がある場合は、医療機関を受診し、適切な検査を受けるようにしましょう。
放置すると、虫垂に穴が開き（穿孔）、膿が腹腔内に広がり、腹膜炎を起こす危険性もあります。
虫垂炎（盲腸炎）の原因：明確な原因は不明。様々な要因が関与
虫垂炎の明確な原因は、まだ解明されていません。
しかし、様々な要因が複合的に関与して発症すると考えられています。
- 虫垂の閉塞： 糞石、異物、腫瘍などによって虫垂の内腔が閉塞し、細菌感染を引き起こす。
- 細菌感染： 大腸菌などの腸内細菌が、閉塞した虫垂内で繁殖し、炎症を引き起こす。
- 生活習慣： 暴飲暴食、過労、ストレスなどが、免疫力を低下させ、虫垂炎の発症リスクを高める可能性がある。
- 遺伝的要因： 家族歴に虫垂炎を発症した人がいる場合、発症リスクが高まる可能性がある。
虫垂炎（盲腸炎）の検査：触診、血液検査、画像検査など
虫垂炎の診断には、以下の検査が行われます。
- 触診： 腹部を触診し、圧痛や反跳痛（押さえた後、手を離すと痛みが強くなること）の有無を確認します。
- 血液検査： 白血球数やCRP（炎症反応を示す物質）などを測定し、炎症の程度を調べます。
- 尿検査： 尿路結石など、他の疾患との鑑別を行います。
- 画像検査：
- 超音波検査（エコー検査）： 虫垂の腫れや周囲の炎症を調べます。
- CT検査： 虫垂の状態や周囲の臓器の状態を詳しく調べます。
虫垂炎（盲腸炎）の治療：手術が基本。薬物療法も
虫垂炎の治療は、手術が基本となります。
虫垂を切除することで、炎症の広がりを防ぎ、合併症のリスクを減らすことができます。
- 開腹手術： 腹部を切開し、虫垂を切除する手術。
- 腹腔鏡手術： 腹部に小さな穴をいくつか開け、カメラや手術器具を挿入して行う手術。
近年では、腹腔鏡手術が主流となっています。
腹腔鏡手術は、開腹手術に比べて傷跡が小さく、術後の回復も早いというメリットがあります。
手術時間は、通常1～2時間程度で、入院期間は1週間程度です。
軽症の場合は、抗生物質による薬物療法で炎症を鎮め、経過をみることもあります。
しかし、薬物療法で改善が見られない場合や、症状が悪化する場合には、手術が必要となります。
虫垂炎（盲腸炎）の予防：生活習慣の改善、早期発見・早期治療
虫垂炎を予防するための確実な方法はありませんが、以下の点に注意することで、発症リスクを減らすことができると考えられています。
- 生活習慣の改善：
- バランスの取れた食事を心がける
- 適度な運動を続ける
- ストレスを解消する
- 十分な睡眠をとる
- 便秘を解消する
- 早期発見・早期治療：
- 腹痛などの症状が現れた場合は、我慢せずに医療機関を受診する
虫垂炎（盲腸炎）に関するQ&A
Q：虫垂炎は、放置するとどうなりますか？
A： 虫垂炎を放置すると、虫垂に穴が開き（穿孔）、膿が腹腔内に広がり、腹膜炎を引き起こすことがあります。
腹膜炎は、重篤な合併症であり、命に関わることもあります。
Q：虫垂炎の手術は、どのような方法で行われますか？
A： 虫垂炎の手術は、開腹手術と腹腔鏡手術の2種類があります。
近年では、腹腔鏡手術が主流となっています。
Q：虫垂炎の手術後、どのくらいで退院できますか？
A： 通常、手術後1週間程度で退院できます。
ただし、患者さんの状態によって、入院期間が長くなることもあります。
Q：虫垂炎の症状が現れたら、どうすれば良いですか？
A： 虫垂炎の疑いがある場合は、我慢せずに医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けるようにしましょう。
Q：虫垂炎と似た症状の病気はありますか？
A： はい、虫垂炎と似た症状の病気はいくつかあります。
- 急性腸炎： 細菌やウイルス感染によって起こる腸の炎症
- 卵巣嚢腫茎捻転： 卵巣嚢腫がねじれて血流が阻害される病気（女性に多い）
- 尿路結石： 尿路に結石が詰まる病気
- 憩室炎： 大腸の憩室に炎症が起こる病気
- 月経困難症： 生理痛がひどい（女性に多い）
- 子宮外妊娠： 受精卵が子宮以外の場所に着床する病気（女性に多い）
これらの病気も、腹痛や吐き気、発熱などの症状を伴うことがあります。
Q：虫垂炎の検査費用はどのくらいかかりますか？
A： 検査費用は、医療機関や検査内容によって異なりますが、一般的には数千円～数万円程度です。
- 触診： 数百円程度
- 血液検査： 数千円程度
- 尿検査： 数百円程度
- 超音波検査（エコー検査）： 数千円程度
- CT検査： 1万円～数万円程度
Q：虫垂炎の手術費用はどのくらいかかりますか？
A： 手術費用は、医療機関や手術方法、入院期間によって異なりますが、一般的には数十万円程度です。
- 開腹手術： 数十万円程度
- 腹腔鏡手術： 数万円～数十万円程度
Q：虫垂炎の手術後、日常生活で従注意することはありますか？
A： 虫垂炎の手術後は、以下の十に注意する必要があります。
- 食事： しばらくは消化の良いものを食べるようにしましょう。
- 運動： 激しい運動は避け、徐々に体を慣らしていきましょう。
- 入浴： 医師の指示に従いましょう。
- 創部のケア： 創部を清潔に保ち、感染予防に努めましょう。
- 排便： 便秘にならないように、食物繊維を積極的に摂取しましょう。
- 体調管理： 疲労を避け、十分な睡眠をとりましょう。
Q：虫垂炎の再発はありますか？
A： 虫垂炎の再発は、まれですが、可能性はあります。
再発のリスクを減らすためには、生活習慣を改善し、免疫力を高めることが大切です。
Q：虫垂炎の予防法はありますか？
A： 虫垂炎を予防するための確実な方法はありませんが、以下の点に注意することで、発症リスクを減らすことができると考えられています。
- 生活習慣の改善：
- バランスの取れた食事を心がける
- 適度な運動を続ける
- ストレスを解消する
- 十分な睡眠をとる
- 便秘を解消する
- 免疫力を高める：
- 規則正しい生活を送る
- 十分な栄養を摂取する
- 適度な運動をする
看護師として伝えたいこと：虫垂炎は、早期発見・早期治療が大切です
虫垂炎は、放置すると重篤な合併症を引き起こす可能性がある病気です。
「もしかして、虫垂炎かも…？」
と、少しでも不安に感じたら、まずは医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けるようにしましょう。
いつまでも、元気で、自分らしく過ごせるように、体を大切にしましょう。
出典
- 日本外科学会 急性虫垂炎：https://journal.jssoc.or.jp/articles/text/1210050503.html
- 一般社団法人日本小児外科学会 小児外科で治療する病気 急性虫垂炎：http://www.jsps.or.jp/archives/sick_type/kyusei-tyusuien
