「最近、妻に『前はもっと優しかったのに…』と冷たい目で見られるようになった。」
「仕事でミスが増え、部下にも厳しく当たってしまう。昔はこんなんじゃなかったのに…。」
もしかしたら、それは男性更年期障害かもしれません。
更年期障害は、女性だけの問題ではありません。
男性も、加齢に伴うホルモンバランスの変化によって、心身に様々な不調が現れることがあります。
この記事では、男性更年期障害の原因、症状、検査、対策、そして治療法について、看護師の視点から詳しく解説します。
男性更年期障害とは:男性ホルモンの低下によって起こる心身の不調
男性更年期障害とは、加齢に伴う男性ホルモン(テストステロン)の低下によって起こる、心身の様々な不調の総称です。
医学的には、「加齢性腺機能低下症候群(LOH症候群)」とも呼ばれます。
女性の更年期障害と比べて、症状が現れる年齢や期間には個人差が大きいのが特徴です。
男性更年期障害の原因:男性ホルモンの低下とストレス
男性更年期障害の主な原因は、以下の2つです。
- 男性ホルモン(テストステロン)の低下:
- テストステロンは、男性らしい体つきや性機能を維持するために重要なホルモンです。
- 加齢とともに、テストステロンの分泌量は徐々に低下していきます。
- テストステロンの低下は、身体的な症状だけでなく、精神的な症状にも影響を与えます。
- 具体的には、筋肉量の減少、骨密度の低下、体脂肪の増加、性欲の低下、気分の落ち込みなどが起こります。
- ストレス:
- 仕事や家庭でのストレスは、男性ホルモンの分泌を抑制することがあります。
- また、ストレスは自律神経のバランスを乱し、更年期症状を悪化させることもあります。
- 具体的には、睡眠不足、イライラ、不安、集中力低下などが起こります。
男性更年期障害の症状:身体的、精神的、性的な症状が現れる
男性更年期障害の主な症状は、以下の3つに分類されます。
- 身体的な症状:
- 疲れやすい、だるい:朝起きるのがつらい、午後になると疲れがピークに達する、休日も寝てばかりいるなど。
- ほてり、発汗:急に顔が熱くなる、寝汗をかく、汗をかきやすくなるなど。
- 動悸、息切れ:階段を上るのがつらい、少し動いただけで息切れする、胸がドキドキするなど。
- めまい、耳鳴り:立ちくらみがする、耳鳴りが続く、頭がボーっとするなど。
- 睡眠障害(不眠、中途覚醒など):寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、朝早く目が覚めるなど。
- 筋肉痛、関節痛:肩や腰が痛む、関節がこわばる、力が入りにくいなど。
- 頻尿、残尿感:トイレに行く回数が増えた、尿が出にくい、残尿感があるなど。
- 精神的な症状:
- イライラ、怒りっぽくなる:些細なことで怒ってしまう、家族に当たり散らしてしまう、感情のコントロールが難しいなど。
- 気分の落ち込み、憂鬱:気分が晴れない、何を見ても楽しくない、将来に希望が持てないなど。
- 不安、焦燥感:いつも何か心配事がある、落ち着かない、じっとしていられないなど。
- 集中力、記憶力の低下:仕事でミスが増えた、人の名前が思い出せない、物忘れがひどくなったなど。
- やる気が出ない、意欲の低下:趣味を楽しめなくなった、何をするのも面倒くさい、生きがいを感じられないなど。
- 性的な症状:
- 性欲の低下:性的なことに興味がなくなった、パートナーとのスキンシップを避けるようになったなど。
- ED(勃起不全):勃起しにくくなった、勃起しても維持できない、性行為に自信がなくなったなど。
- 朝立ちの減少:朝立ちがなくなった、または回数が減ったなど。
これらの症状は、個人差が大きく、複数の症状が同時に現れることもあれば、特定の症状だけが現れることもあります。
男性更年期障害の検査:問診、血液検査、心理検査など
男性更年期障害の検査は、以下の方法で行われます。
- 問診:
- 症状や生活習慣、既往歴などを詳しく確認します。
- 男性更年期障害の症状チェックシートなどを用いて、症状の程度を評価します。
- 問診では、症状が現れ始めた時期、症状の種類と程度、日常生活への影響などを確認します。
- 血液検査:
- テストステロン値やLH(黄体形成ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)などのホルモン値を測定します。
- 貧血や肝機能、腎機能なども確認します。
- 血液検査では、ホルモン値だけでなく、他の病気の可能性も調べます。
- 心理検査:
- うつ病や不安障害など、精神的な症状を評価するために行われることがあります。
- 心理検査では、質問票や面談などを用いて、精神的な状態を評価します。
男性更年期障害の対策:ホルモン補充療法、薬物療法、生活習慣の改善
男性更年期障害の対策は、以下の3つが中心となります。
- ホルモン補充療法(HRT):
- テストステロンを補充することで、症状の改善を目指します。
- 注射、塗り薬、貼り薬など、様々な投与方法があります。
- ホルモン補充療法は、医師の指導のもと、慎重に行う必要があります。
- ホルモン補充療法は、効果が期待できる一方で、副作用のリスクもあります。
- 副作用としては、前立腺肥大、睡眠時無呼吸症候群、多血症などが報告されています。
- ホルモン補充療法を受ける場合は、定期的な検査が必要です。
- 薬物療法:
- 症状に合わせて、漢方薬や抗うつ薬、抗不安薬などが用いられます。
- ED治療薬も有効な場合があります。
- 漢方薬は、体質や症状に合わせて処方されます。
- 抗うつ薬や抗不安薬は、精神的な症状を改善するために用いられます。
- ED治療薬は、勃起不全を改善するために用いられます。
- 生活習慣の改善:
- バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけましょう。
- ストレスを溜め込まないように、趣味やリラックスできる時間を持つことも大切です。
- バランスの取れた食事は、筋肉量や骨密度を維持するために重要です。
- 適度な運動は、テストステロンの分泌を促進し、ストレス解消にもつながります。
- 十分な睡眠は、ホルモンバランスを整え、疲労回復にもつながります。
- ストレス解消法を見つけ、実践することも大切です。
男性更年期障害に関するQ&A
Q:男性更年期障害は、何歳くらいから始まりますか?
A:男性更年期障害は、40代後半から50代にかけて始まることが多いです。
しかし、個人差が大きく、30代で始まる人もいれば、60代以降に始まる人もいます。
Q:男性更年期障害は、自然に治りますか?
A:男性更年期障害は、自然に治ることもありますが、症状が長期間続く場合や、日常生活に支障が出る場合は、医療機関を受診しましょう。
適切な治療を受けることで、症状を改善することができます。
Q:男性更年期障害の治療期間はどのくらいですか?
A:男性更年期障害の治療期間は、個人差や症状の程度によって異なります。
数ヶ月で症状が改善する人もいれば、数年かかる人もいます。
医師と相談しながら、根気強く治療を続けましょう。
Q:男性更年期障害の予防法はありますか?
A:男性更年期障害を完全に予防することは難しいですが、生活習慣を改善することで、症状を軽くしたり、発症を遅らせたりすることができます。
- バランスの取れた食事を心がける
- 肉、魚、野菜、果物などをバランスよく摂りましょう。
- 大豆製品や亜鉛を含む食品は、男性ホルモンの分泌を促す効果が期待できます。
- アルコールやカフェインは控えめにしましょう。
- 適度な運動を続ける
- 有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、水泳など)と筋力トレーニングを組み合わせましょう。
- 運動は、テストステロンの分泌を促し、ストレス解消にもつながります。
- 運動習慣がない場合は、軽い運動から始め、徐々に運動量を増やしましょう。
- 十分な睡眠をとる
- 睡眠時間は、毎日7~8時間を目安にしましょう。
- 寝る前にスマートフォンやパソコンを見るのは避けましょう。
- 寝室は、暗く静かな環境にしましょう。
- ストレスを溜め込まない
- 趣味やリラックスできる時間を持つようにしましょう。
- 悩みや不安は、一人で抱え込まず、誰かに相談しましょう。
- ストレス解消法を見つけ、実践しましょう。
Q:男性更年期障害の相談は、何科に行けば良いですか?
A:男性更年期障害の相談は、泌尿器科やメンズヘルス外来などで受け付けています。
また、精神的な症状が強い場合は、精神科や心療内科を受診することもできます。
Q:パートナーに男性更年期障害の症状が出ているように感じます。どう接すれば良いでしょうか?
A:パートナーの男性更年期障害は、パートナーだけでなく、あなた自身もつらいと感じることがあるかもしれません。
しかし、パートナーを責めたり、否定したりするのは避けましょう。
- パートナーの話をよく聞き、共感する
- パートナーの気持ちに寄り添い、理解しようと努めましょう。
- 感情的にならず、冷静に話を聞きましょう。
- パートナーの行動や態度に理解を示す
- イライラしたり、落ち込んだりするのは、病気のせいであることを理解しましょう。
- 優しく接し、安心感を与えましょう。
- 医療機関への受診を勧める
- 一人で悩まず、専門家の力を借りることも大切です。
- 一緒に医療機関を受診するのも良いでしょう。
- パートナーをサポートする
- 家事や育児などを分担し、パートナーの負担を減らしましょう。
- 一緒に趣味を楽しんだり、旅行に行ったりするのも良いでしょう。
看護師として伝えたいこと:一人で悩まず、医療機関に相談を
男性更年期障害は、決して恥ずかしいことではありません。
一人で悩まず、医療機関に相談することで、適切な治療を受けることができます。
男性更年期障害と向き合い、充実した毎日を取り戻しましょう。
出典
- 日本内分泌学会 男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群):https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=71
- 恩賜財団 済生会 男性の「更年期障害」をご存じですか? 男性ホルモン減少による「LOH症候群」にご用心!: https://www.saiseikai.or.jp/medical/column/loh_syndrome/