「足の親指が痛い、曲がる…」それ外反母趾かも?原因・症状・今日からできる対策【看護師監修】

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「パンプスを履くと、親指の付け根が擦れて痛い…」
「気がついたら、足の親指が内側に曲がって、骨が出っ張ってきたみたい…」
「タコや魚の目ができやすくて困っている…」

足に関する、こうしたお悩みをお持ちの方、いらっしゃるのではないでしょうか。
特に女性に多く見られるこの状態は、「外反母趾(がいはんぼし)」かもしれません。

外反母趾は、見た目の問題だけでなく、痛みや歩きにくさを引き起こし、日常生活に大きな影響を与えることがあります。
しかし、適切な知識を持ち、早めに対策を始めることで、痛みを和らげたり、進行を遅らせたりすることが期待できます。

この記事では、看護師の視点から、外反母趾がどのような状態なのか、どんなサインがあるのか、なぜ起こるのか、そして、足の悩みを軽減するために今日からできることや、医療でのケアについて分かりやすくお伝えします。

外反母趾ってどんな状態?足に何が起こっているの?

外反母趾とは、足の親指が、付け根の関節(母趾MP関節)から小指側に「く」の字の形に曲がってしまい、それと同時に親指の付け根の骨(第1中足骨)が体の内側に出っ張ってくる状態を指します。

この「親指の付け根の出っ張り」が靴に擦れたり圧迫されたりすることで、痛みや炎症が生じやすくなります。

出っ張りの角度が15度以上になると外反母趾と診断されるのが一般的ですが、変形の角度と痛みの程度は必ずしも一致しません。

気づいて!外反母趾のサインと主な症状

外反母趾かどうかは、ご自身の足を見たり、普段の足の状態をチェックしたりすることで気づくことができます。以下のようなサインや症状がないか確認してみましょう。

  • 足の変形:
    • 立った時に、足の親指が小指側に曲がっている(「く」の字になっている)。
    • 親指の付け根の内側にある骨が出っ張っている(この部分が「バニオン」と呼ばれることもあります)。
    • 重症になると、親指が隣の第2趾(人差し指)の上に乗り上げたり、下に潜り込んだりしている。
  • 痛み:
    • 親指の付け根の出っ張った部分が、靴に当たって痛い、赤く腫れる、熱を持つ。
    • 靴を履いていない時でも、親指の付け根や足裏(特に親指の付け根の下あたり)が痛む(変形が進んだ場合に起こりやすいです)。
  • 皮膚の変化:
    • 親指の付け根の出っ張った部分に、靴擦れやタコができやすい。
    • 親指が曲がって隣の指と擦れる部分や、乗り上げられた指にタコや魚の目ができやすい。
  • その他の症状:
    • 足裏全体が疲れやすい、痛む(足のアーチの崩れに伴う)。
    • 足指がうまく使えず、歩きにくく感じる。
    • 足の変形が進むと、バランスを取りにくくなる。
    • 靴選びに困る(今まで履いていた靴がきつくなる)。

これらの症状は、最初から全てが現れるわけではなく、変形の進行度や普段履いている靴の種類によっても異なります。

どうしてなるの?原因とリスク要因

外反母趾になる原因は一つではなく、様々な要因が組み合わさって起こることがほとんどです。

  • 遺伝や生まれつきの要因:
    足の骨格の形、靭帯の柔らかさ(関節の緩みやすさ)、足のアーチのタイプ(扁平足や、逆に土踏まずが高い開張足など)といった、もともとの体質が大きく影響することが分かっています。家族に外反母趾の人がいる場合、なりやすい傾向があります。お子さんや男性にも外反母趾が見られるのは、こうした体質的な要因があるためです。
  • 履物の影響:
    先の細い靴やハイヒールは、外反母趾を悪化させる大きな要因となります。これらの靴は、つま先を圧迫し、足指が本来使うべき筋肉を使えなくさせ、親指の付け根に不自然な負担をかけるため、変形を助長してしまいます。
  • 足の機能の低下:
    足の指をうまく使えていない、足裏のアーチを支える筋力が弱いなども、足のバランスを崩し、外反母趾のリスクを高める可能性があります。
  • 年齢や性別:
    年齢とともに足の組織が変化すること、女性ホルモンが関節の靭帯を柔らかくする影響があること、そして女性がハイヒールを履く機会が多いことなどから、外反母趾は男性より女性に多く見られます。

これらの要因が複合的に関わり合い、親指の変形が少しずつ進行すると考えられています。

放置するとどうなるの?

外反母趾を放置して変形が進むと、痛みが増したり、タコや魚の目がひどくなったりするだけでなく、曲がった親指が隣の指を変形させてしまったり(槌趾ハンマートゥなど)、足裏の体重のかかり方が変わって別の場所に痛みが出たりすることもあります。

また、足のバランスが悪くなることで、膝や股関節、腰など、足より上の関節にまで影響が出て、痛みや不調の原因となることもあります。

早期に適切なケアを始めることで、痛みを和らげ、変形の進行を遅らせ、こうした他の場所への影響を防ぐことにつながります。

外反母趾のケアと向き合い方(看護師より)

外反母趾は、一度変形してしまった骨格を完全に元に戻すのは難しいことが多いですが、痛みを和らげ、これ以上変形が進まないようにするための様々な方法があります。
看護師として、皆さんの足の健康をサポートするためにできることをお伝えします。

  1. まずは医療機関にご相談を:
    足の痛みや変形が気になる場合は、一度整形外科を受診しましょう。医師が足の状態を診察し、必要であればレントゲン検査などを行い、外反母趾の診断や変形の程度を正確に把握してくれます。ご自身の足の状態を知ることが、適切な対策を始めるための第一歩です。看護師は、診察時の不安を和らげたり、医師からのアドバイスを分かりやすく補足したりするお手伝いができます。
  2. 最も大切なケアは「靴の見直し」:
    外反母趾による痛みの多くは、靴との摩擦や圧迫によって起こります。また、不適切な靴は変形を悪化させる最大の要因です。
    • ポイント: ヒールは低く(理想は3cm以下)、つま先に足指が無理なく広げられる十分なゆとり(幅と高さ)があり、足の甲を紐やベルトでしっかり固定できるものを選びましょう。素材は柔らかく、足の形に沿うものが理想です。
    • 靴選びのコツ: 足がむくみやすい午後に試着し、両足で履いてみて、つま先に1cm程度の「捨て寸」があるか、親指の付け根の出っ張り部分が圧迫されないかなどを確認しましょう。
    • 避けるべき靴: 先の細い靴、高すぎるヒール、足が前滑りしやすいミュールやパンプス、脱げないように足指に力を入れてしまうサンダルなどは、できるだけ避けるのが望ましいです。
  3. インソール(足底板)や装具の活用:
    足裏のアーチをサポートするインソール(足底板)は、足にかかる負担を分散し、痛みを和らげたり、足の機能的なバランスを改善したりするのに有効です。また、親指と人差し指の間に入れるパット(トーセパレーター)や、親指を正しい位置に固定する外反母趾用サポーター(夜間装具など、日中靴を履いている時には使えないものも)も、痛みの軽減に役立つ場合があります。これらは薬局などでも市販されていますが、ご自身の足に合ったものを選ぶことが大切ですので、医師や義肢装具士、整形靴店、フットケア専門の看護師などに相談してみましょう。
  4. 足指の運動・体操で機能を高める: 足の指やアーチの筋肉を意識して使う運動は、足の機能を高め、変形の進行を遅らせたり、足にかかる負担を軽減したりするのに役立ちます。
    • 足指じゃんけん: 足指でグー・チョキ・パーをするように動かします。
    • タオルギャザー: 床に置いたタオルを足指を使って手前に引き寄せます。
    • ビー玉つかみ: 床に置いたビー玉などを足指でつかんで持ち上げます。
    • グー・パー運動: 足指を強く握る(グー)、パッと広げる(パー)を繰り返します。 毎日続けることが大切です。無理のない範囲で、継続できるものを取り入れてみましょう。
  5. 痛みの対処と体重管理:
    痛みがある時は、無理せず足を休ませましょう。炎症がある場合は、患部を軽く冷やす(アイシング)のも有効です。
    慢性的なこりや痛みには、足湯などで温めるのが効果的なこともあります。
    市販の痛み止めや湿布薬は一時的な痛みの緩和に役立ちますが、頼りすぎるのではなく、痛みの原因となっている足の状態へのアプローチと並行して使用しましょう。
    また、過体重は足への負担を増やし、外反母趾を悪化させる要因となるため、適正体重を維持することも大切です。
  6. 手術療法:
    保存療法(靴の見直しや装具、体操など)をしっかりと行っても痛みが改善しない場合や、変形が非常に強く、合う靴がない、歩くのが難しいなど、日常生活に大きな支障が出ている場合には、手術が検討されます。
    手術では、親指の骨を切って正しい角度に矯正したり、関連する組織を調整したりすることで、変形を治し、痛みを改善することを目指します。
    手術方法は変形の程度や足の状態によって様々です。
    看護師は、手術を検討されている方の不安をお伺いしたり、手術前後の注意点や、退院後の生活、リハビリテーションについて分かりやすく説明したりすることで、手術を受けられる方をサポートします。

外反母趾について、よくあるご質問に看護師がお答えします

Q1: 変形しているけれど痛くないのですが、病院に行った方が良いですか?

A1: たとえ痛みがなくても、親指の変形が見られる場合は、一度整形外科を受診することをお勧めします。 現在痛みがなくても、変形は徐々に進行する可能性があり、将来的に痛みが出たり、タコや魚の目ができやすくなったり、他の指に変形が生じたりする原因となることがあります。

早期に専門家に見てもらうことで、ご自身の足の正確な状態を知り、今後の変形の進行を予防したり、痛みの発生を抑えたりするための適切なアドバイス(靴選び、インソールの選び方、足指の体操など)を受けることができます。今のうちにできる対策を知っておくことは、将来の足のトラブルを防ぐためにとても大切です。

Q2: 外反母趾は完全に治りますか?体操やサポーターで元の形に戻りますか?

A2: 残念ながら、一度変形してしまった骨の形を、体操やサポーターだけで完全に元の状態に戻すことは、難しいことが多いです。 外反母趾の「治療」は、変形を完全に消すことよりも、「痛みを和らげること」と「変形がこれ以上進まないようにすること」、そして「足の機能を改善し、快適に歩けるようにすること」に重点が置かれます。

足指の体操や適切なサポーター、そして何よりもご自身に合った靴を選ぶことは、足にかかる負担を減らし、痛みを軽減し、変形の進行を遅らせるために非常に有効です。これらのセルフケアや装具療法を根気強く続けることで、多くの場合、手術をせずに症状を管理していくことが可能です。

Q3: どんな靴を選べば外反母趾が悪化しにくいですか?ヒールは全くダメでしょうか?

A3: 外反母趾の足に最も優しい靴は、「ヒールが低く(3cm以下)、つま先に足指が無理なく広げられる十分な幅と高さのゆとりがあり、足の甲を紐やベルトでしっかり固定できる、柔らかい素材の靴」です。スニーカーなどが適しています。靴の中で足指が自由に動かせる余裕があることが大切です。

ハイヒールや先の細い靴は、足指を圧迫し、足裏に不自然な体重がかかるため、外反母趾の変形を悪化させる大きな原因となり得ます。可能な限り避けることが推奨されます。全く履けないというわけではありませんが、履く頻度や時間を減らしたり、履くなら太めの安定したヒールで、前足部に過度な負担がかからないデザインのものを選ぶなどの工夫をすると良いでしょう。

ご自身の足が快適だと感じる靴を選ぶことが、外反母趾のケアには最も重要です。

Q4: 手術は怖いのですが、どんな場合に検討しますか?手術をすれば完全に良くなりますか?

A4: 手術は、外反母趾の変形を矯正するための最終的な選択肢として考えられます。主に、保存療法(靴の見直し、装具、体操など)をしっかり行っても、日常生活に支障が出るほどの強い痛みが続く場合や、変形が著しく進行して合う靴がない、歩くことが困難になっている場合に検討されます。痛みが主な手術の理由であり、見た目の改善だけのために安易に行われることは少ないです。

手術によって変形は矯正され、痛みの改善や靴が履けるようになるなど、足の機能の回復が期待できます。しかし、手術方法によっては再発のリスクがゼロではないこと、術後には一定期間の安静やリハビリテーションが必要であることなども理解しておく必要があります。

手術を検討する際は、医師から手術方法、メリット、デメリット、リスク、回復期間などについて十分な説明を受け、ご自身のライフスタイルや希望と照らし合わせて慎重に判断することが大切です。不安なことや疑問があれば、遠慮なく医師や看護師に質問し、納得した上で選択しましょう。看護師も、手術に対する不安な気持ちに寄り添い、情報提供や精神的なサポートをすることができます。

最後に

外反母趾は、多くの方が抱える足の悩みですが、「仕方がない」と諦める必要はありません。早期にご自身の足の状態を知り、適切な靴を選び、日々のケアを続けることで、痛みを和らげ、活動的な毎日を送ることが可能です。

もし、足の痛みや変形に悩んでいるなら、一人で抱え込まず、まずは医療機関に相談してみてください。私たち看護師も、皆さんの足の健康と快適な歩行をサポートしたいと思っています。

足元から、心身ともに健康な毎日を送りましょう。

出典:

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