「階段を踏み外して、足首がぐにゃり。経験したことのない激痛が走り、立てなくなった。」
「子供が遊具から落ちて、腕が変な方向に曲がっている。泣き叫んでいて、どうしたらいいか分からない。」
もしかしたら、それは骨折かもしれません。
骨折は、日常生活で起こりやすい怪我の一つです。
適切な応急処置と治療をしないと、後遺症が残ることもあります。
この記事では、骨折の原因、症状、応急処置、検査、治療、リハビリ、予防法について、看護師の視点から詳しく解説します。
骨折とは:骨の連続性が断たれた状態
骨折とは、骨に外力が加わり、骨の連続性が断たれた状態を指します。
骨折には、完全に骨が折れる完全骨折と、ひびが入るような不全骨折があります。
また、骨折の種類によって、開放骨折(骨折部が皮膚を突き破っている)と閉鎖骨折(皮膚は損傷していない)に分けられます。
骨折の原因:転倒、スポーツ、事故など
骨折の主な原因は、以下の通りです。
- 転倒:
- 高齢者の場合、骨粗鬆症により骨が弱くなっているため、軽い転倒でも骨折しやすいです。
- 特に、股関節や背骨の骨折は、寝たきりの原因となることがあります。
- スポーツ:
- スポーツの種類によって、骨折しやすい部位が異なります。
- 例えば、サッカーでは足首や膝、野球では腕や肩、バスケットボールでは足首や指を骨折しやすいです。
- スポーツ中の衝突や転倒、過度な負荷などが原因となります。
- 事故:
- 交通事故や転落事故など、強い外力が加わることで骨折することがあります。
- 高速で衝突した場合や、高所から転落した場合は、複数の骨折や内臓損傷を伴うことがあります。
- その他:
- 骨粗鬆症、骨腫瘍、疲労骨折なども、骨折の原因となります。
- 疲労骨折は、同じ部位に繰り返し負荷がかかることで、骨にひびが入る状態です。
- 骨腫瘍は、骨にできる腫瘍で、骨を弱くし、骨折しやすくします。
骨折の症状:痛み、腫れ、変形、機能障害など
骨折の主な症状は、以下の通りです。
- 痛み:
- 骨折した箇所を触ると、ズキズキと脈打つような痛みが走り、少しでも動かそうとすると、激痛で声も出せないほどだった。
- 骨折した部位に激しい痛みが生じます。
- 動かすと痛みが強くなります。
- 安静にしていても、痛みが続くことがあります。
- 腫れ:
- 骨折した部位が腫れます。
- 内出血により、皮膚が変色することがあります。
- 腫れは、骨折後数時間から数日かけて徐々に大きくなります。
- 変形:
- 骨折した部位が変形することがあります。
- 特に、完全骨折の場合に顕著です。
- 骨折した部位が通常とは異なる方向に曲がったり、短縮したりすることがあります。
- 機能障害:
- 骨折した部位を動かせなくなることがあります。
- 神経損傷を伴う場合、しびれや麻痺が生じることがあります。
- 骨折した部位を動かそうとすると、激しい痛みが生じることがあります。
- その他:
- 発熱、悪寒、吐き気などの全身症状が現れることがあります。
- 開放骨折の場合、骨折部から出血することがあります。
骨折の応急処置:安静、冷却、固定、挙上
骨折が疑われる場合は、以下の応急処置を行いましょう。
- 安静:
- 骨折した部位を動かさないようにしましょう。
- 無理に動かすと、骨折が悪化したり、神経や血管を損傷したりすることがあります。
- 冷却:
- 氷嚢や冷湿布などで骨折した部位を冷やしましょう。
- 冷却により、痛みや腫れを軽減することができます。
- 冷やしすぎると凍傷になることがあるので、タオルなどでくるんで冷やしましょう。
- 固定:
- 添え木や包帯などで骨折した部位を固定しましょう。
- 固定により、骨折部の安静を保ち、痛みを軽減することができます。
- 身近にある雑誌や段ボールなどを添え木代わりに使うこともできます。
- 挙上:
- 骨折した部位を心臓より高く上げましょう。
- 挙上により、腫れを軽減することができます。
- 枕やクッションなどを利用して、楽な姿勢を保ちましょう。
骨折の検査:レントゲン検査、CT検査、MRI検査など
骨折の検査は、以下の方法で行われます。
- レントゲン検査:
- 骨折の有無や程度を確認します。
- 骨折の種類や位置を特定します。
- レントゲン検査費用は、保険適用で3割負担の場合、1,000円~3,000円程度です。
- CT検査:
- レントゲン検査では確認できないような細かい骨折や、関節内の骨折を確認します。
- 骨折の状態を立体的に把握します。
- CT検査費用は、保険適用で3割負担の場合、5,000円~10,000円程度です。
- MRI検査:
- 骨折に伴う靭帯や軟骨の損傷を確認します。
- 疲労骨折や骨挫傷など、レントゲン検査では診断が難しい骨折を確認します。
- MRI検査費用は、保険適用で3割負担の場合、8,000円~15,000円程度です。
- その他:
- 骨シンチグラフィー:骨折の治癒過程や、骨腫瘍の有無を確認します。
- 関節鏡検査:関節内の骨折や、靭帯損傷を確認します。
骨折の治療:保存療法、手術療法、リハビリテーションなど
骨折の治療は、骨折の種類や程度によって異なります。
- 保存療法:
- ギプスやシーネなどで骨折部位を固定し、自然治癒を待ちます。
- 比較的軽度の骨折や、手術が難しい場合に選択されます。
- 保存療法期間は、骨折の種類や程度によって異なりますが、数週間から数ヶ月程度です。
- 手術療法:
- 金属製のプレートやスクリューなどで骨折部位を固定します。
- 複雑な骨折や、関節内の骨折の場合に選択されます。
- 手術時間や入院期間は、手術方法や骨折の種類によって異なります。
- 手術費用は、手術方法や入院期間によって異なりますが、保険適用で3割負担の場合、10万円~30万円程度です。
- リハビリテーション:
- 骨折後の機能回復を目的として、運動療法や物理療法などを行います。
- リハビリテーションは、早期に開始することが重要です。
- リハビリテーション期間は、骨折の種類や程度によって異なりますが、数週間から数ヶ月程度です。
- リハビリテーション費用は、医療機関やリハビリテーション内容によって異なります。
骨折のリハビリテーション:早期開始と継続が大切
骨折後のリハビリテーションは、早期開始と継続が大切です。
リハビリテーションの目的は、以下の通りです。
- 関節の可動域を広げる:
- 骨折により、関節が硬くなり、動かしにくくなることがあります。
- リハビリテーションにより、関節の可動域を広げ、日常生活動作をスムーズに行えるようにします。
- 具体的には、関節をゆっくりと動かす運動や、ストレッチなどを行います。
- 筋力を回復する:
- 骨折により、筋肉が衰え、筋力が低下することがあります。
- リハビリテーションにより、筋力を回復し、日常生活動作に必要な力をつけます。
- 具体的には、重りを使った運動や、ゴムバンドを使った運動などを行います。
- 痛みを軽減する:
- 骨折後の痛みは、リハビリテーションの妨げになることがあります。
- リハビリテーションにより、痛みを軽減し、スムーズに運動を行えるようにします。
- 具体的には、温熱療法や電気療法などを行います。
- 日常生活動作を練習する:
- 骨折により、日常生活動作が困難になることがあります。
- リハビリテーションにより、日常生活動作を練習し、早期に自立した生活を送れるようにします。
- 具体的には、歩行練習や階段昇降練習、着替えや入浴練習などを行います。
リハビリテーションは、医師や理学療法士の指導のもと、段階的に進めていきます。
- 初期段階:
- 骨折部の安静を保ちながら、関節の可動域を広げる運動や、痛みを軽減する治療を行います。
- 中期段階:
- 骨折部の状態に合わせて、筋力回復運動や、日常生活動作練習を行います。
- 後期段階:
- 日常生活動作に必要な筋力や関節の可動域を回復し、社会復帰を目指します。
リハビリテーション期間は、骨折の種類や程度、年齢、全身状態などによって異なります。
リハビリテーションを早期に開始し、継続することで、後遺症のリスクを減らし、早期に日常生活に復帰することができます。
骨折の予防:骨粗鬆症対策、転倒予防、スポーツ時の注意など
骨折の予防は、以下の点に注意しましょう。
- 骨粗鬆症対策:
- カルシウムやビタミンDを積極的に摂取し、骨密度を高めましょう。
- 適度な運動を行い、骨に刺激を与えましょう。
- 定期的に骨密度検査を受け、骨の状態を確認しましょう。
- 転倒予防:
- バランス感覚を養う運動を行いましょう。
- 家の中の段差をなくし、滑りやすい場所には滑り止めを敷きましょう。
- 夜間は足元を照らすようにしましょう。
- スポーツ時の注意:
- ウォーミングアップやクールダウンを十分に行いましょう。
- 自分の体力に合った運動を行いましょう。
- プロテクターなど、適切な保護具を着用しましょう。
骨折に関するQ&A
Q:骨折したら、すぐに病院に行くべきですか?
A:骨折が疑われる場合は、できるだけ早く医療機関を受診してください。
特に、以下の症状がある場合は、救急車を呼ぶことを検討しましょう。
- 激しい痛みがある
- 骨折部位が変形している
- 骨折部位を動かせない
- しびれや麻痺がある
Q:骨折の治療期間はどのくらいですか?
A:骨折の治療期間は、骨折の種類や程度によって異なります。
一般的には、数週間から数ヶ月程度かかります。
骨折後、1ヶ月程度で骨がくっつき始め、3ヶ月程度で日常生活に戻れることが多いです。
しかし、複雑な骨折や、高齢者の場合は、治療期間が長くなることがあります。
Q:骨折後、日常生活で注意することはありますか?
A:骨折後は、以下の点に注意しましょう。
- 医師や理学療法士の指示に従い、リハビリテーションを行いましょう。
- 骨折部位に負担がかからないように、安静に過ごしましょう。
- バランスの取れた食事を心がけ、骨の回復を促しましょう。
- 痛みがある場合は、無理をせず、医師に相談しましょう。
看護師として伝えたいこと:早期発見・早期治療、そして予防が大切
骨折は、早期に発見し、適切な治療を行うことで、後遺症のリスクを減らすことができます。
「ただの捻挫だろう」と自己判断せず、気になる症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。
骨折と向き合い、健康な生活を取り戻しましょう。
出典