「最近、閉経したはずなのにまた出血がある」
「おりものの量が増えた気がする」
「もしかして、子宮体がん?」
もしかしたら、それは子宮体がんのサインかもしれません。
子宮体がんは、早期発見・早期治療が重要な病気です。
この記事では、子宮体がんの原因、症状、検査、治療法、そして予防策について、看護師の視点から詳しく解説します。
子宮体がんとは:子宮内膜から発生するがん
子宮体がんとは、子宮体部の内膜(子宮内膜)から発生するがんです。
子宮がんには、子宮体がんのほかに、子宮頸がんがあります。
子宮頸がんは、子宮の入り口(頸部)にできるがんです。
子宮体がんの罹患率:近年増加傾向
子宮体がんの罹患率は、近年増加傾向にあります。
国立がん研究センターのデータによると、2019年には約1万8千人が子宮体がんと診断されました。
子宮体がんの好発年齢:閉経後の女性に多い
子宮体がんは、閉経後の50歳~60歳代の女性に多く発症します。
しかし、40歳代から発症する人もいます。
子宮体がんの症状:不正出血が最も多い
子宮体がんの主な症状は、以下の通りです。
- 不正出血: 閉経後の出血、月経以外の出血、性交後の出血など。
- 閉経後の出血は、子宮体がんの最も一般的な症状です。
- 少量でも続く場合は、医療機関を受診しましょう。
- おりものの異常: 量が増えたり、色が変化したり、悪臭を伴ったりする。
- おりものの量が増えたり、血が混じったりする場合は、注意が必要です。
- 悪臭を伴う場合は、がんが進行している可能性があります。
- 骨盤痛: 下腹部や腰に痛みが生じる。
- がんが進行すると、骨盤内に痛みが生じることがあります。
- 排尿・排便障害: 血尿や血便が出たり、排尿時痛や便秘になったりする。
- がんが進行し、膀胱や直腸に浸潤すると、これらの症状が現れることがあります。
これらの症状は、子宮体がんの早期から現れることがあります。
特に、閉経後の不正出血は、子宮体がんの最も一般的な症状であり、注意が必要です。
子宮体がんの原因:女性ホルモンと生活習慣
子宮体がんの主な原因は、女性ホルモンのバランスの乱れや、生活習慣の乱れなどです。
- 女性ホルモン:
- エストロゲンという女性ホルモンが過剰に分泌されると、子宮内膜が厚くなり、がん化しやすくなります。
- 閉経後もエストロゲンが分泌され続ける状態は、子宮体がんのリスクを高めます。
- 生活習慣:
- 肥満、糖尿病、高血圧などの生活習慣病は、子宮体がんのリスクを高めます。
- 動物性脂肪の摂取量が多いと、エストロゲンの分泌量が増え、子宮体がんのリスクを高める可能性があります。
- その他:
- 未婚、未出産、高齢出産も、子宮体がんのリスクを高める要因とされています。
- 子宮内膜増殖症は、子宮体がんの前がん状態とされています。
子宮体がんの検査:細胞診と組織診
子宮体がんの検査は、以下の流れで行われます。
- 問診: 症状や既往歴、生活習慣などについて問診を行います。
- 内診: 医師が膣から指を入れて、子宮の状態を触診します。
- 細胞診: 子宮内膜の細胞を採取し、顕微鏡で調べます。
- 子宮体がんの細胞診は、子宮体部に細い器具を挿入して子宮内膜の細胞を採取します。
- 検査結果は、クラスI〜Vに分類されます。
- クラスI、II:正常
- クラスIIIa:子宮内膜増殖症
- クラスIV、V:がんの疑い
- 組織診: 細胞診で異常が見つかった場合に行われます。
- 子宮内膜の一部を採取し、詳しく調べます。
- 組織診の結果によって、子宮体がんの確定診断が行われます。
- 画像検査:
- 超音波検査:子宮の状態や、がんの広がり具合を調べます。
- MRI検査:がんの広がり具合や、リンパ節への転移を調べます。
- CT検査:遠隔転移の有無を調べます。
子宮体がんの病期(ステージ):進行度合いで分類
子宮体がんの病期(ステージ)は、がんの進行度合いによって、0期からIV期に分類されます。
- 0期:子宮内膜異型増殖症(前がん状態)
- I期:がんが子宮体部に限局している
- II期:がんが子宮頸部に広がっている
- III期:がんが子宮外に広がっているが、骨盤内にとどまっている
- IV期:がんが骨盤外に広がっている、または遠隔転移がある
子宮体がんの治療:手術が中心
子宮体がんの治療は、手術が中心となります。
- 手術療法:
- 単純子宮全摘出術:子宮、卵巣、卵管を摘出します。
- 拡大子宮全摘出術:子宮、卵巣、卵管に加えて、周囲の組織やリンパ節も摘出します。
- 広汎子宮全摘出術:子宮、卵巣、卵管、膣の一部、リンパ節などを広範囲に摘出します。
- 放射線療法:
- 高エネルギーの放射線を照射し、がん細胞を破壊します。
- 手術後や、手術ができない場合に行われることがあります。
- 化学療法(抗がん剤):
- 抗がん剤を使用し、がん細胞の増殖を抑えます。
- 進行したがんや、再発した場合に行われることがあります。
- ホルモン療法:
- ホルモン剤を使用し、がん細胞の増殖を抑えます。
- ごく早期のがんで、妊娠・出産の希望がある若い女性に行われることがあります。
子宮体がんの予後:ステージによって異なる
子宮体がんの予後は、ステージによって異なります。
一般的に、早期に発見された子宮体がんほど、予後が良いとされています。
5年生存率は、0期でほぼ100%、I期で約90%、II期で約80%、III期で約60%、IV期で約20%となっています。
子宮体がんの予防:生活習慣の改善と定期的な検診
子宮体がんを予防するためには、生活習慣の改善と定期的な検診が大切です。
- 生活習慣の改善:
- バランスの取れた食事を心がけ、肥満を解消する。
- 適度な運動を続ける。
- 禁煙する。
- 過度な飲酒を控える。
- 定期的な検診:
- 定期的に婦人科検診を受け、子宮体がんの早期発見に努める。
- 特に、閉経後の女性は、年1回は検診を受けることが望ましい。
子宮体がんに関するQ&A
Q:子宮体がん検診は、どのようなことをするのですか?
A: 子宮体がん検診では、問診、内診、細胞診が行われます。
- 問診: 症状や既往歴、生活習慣などについて質問します。
- 内診: 医師が膣から指を入れて、子宮の状態を触診します。
- 細胞診: 子宮内膜の細胞を採取し、顕微鏡で調べます。
細胞診では、子宮体部に細い器具を挿入して子宮内膜の細胞を採取します。
検査結果は、クラスI〜Vに分類されます。
- クラスI、II:正常
- クラスIIIa:子宮内膜増殖症
- クラスIV、V:がんの疑い
Q:子宮体がん検診の費用はどのくらいですか?
A: 子宮体がん検診の費用は、医療機関や検査内容によって異なります。
自治体によっては、補助金が出る場合があります。
お住まいの自治体の窓口や、医療機関に問い合わせてみましょう。
Q:子宮体がん検診は、どのくらいの頻度で受ければ良いですか?
A: 閉経後の女性は、年1回は検診を受けることが望ましいです。
40歳代の女性も、年1回は検診を受けることをおすすめします。
Q:子宮体がんの治療期間はどのくらいですか?
A: 治療期間は、がんの進行度合いや治療法によって異なります。
- 手術療法の場合、入院期間を含めて1ヶ月程度かかることがあります。
- 放射線療法や化学療法の場合は、数ヶ月かかることがあります。
Q:子宮体がんは、遺伝しますか?
A: 子宮体がんの発生には、遺伝的な要因も関与していると考えられています。
しかし、子宮体がんのほとんどは、遺伝とは関係なく発生します。
Q:子宮体がんを予防するために、どのようなことに気を付ければ良いですか?
A: 子宮体がんを予防するためには、以下の点に注意することが大切です。
- バランスの取れた食事を心がけ、肥満を解消する。
- 適度な運動を続ける。
- 禁煙する。
- 過度な飲酒を控える。
- 定期的に婦人科検診を受け、子宮体がんの早期発見に努める。
看護師として伝えたいこと:不安な気持ち、ご相談ください
子宮体がんの診断を受けた時は、大きな不安や恐怖を感じるかもしれません。
しかし、子宮体がんは、早期発見・早期治療を行うことで、治癒率が高い病気です。
「もしかして、子宮体がんかも…?」
と、少しでも不安に感じたら、まずは医療機関を受診し、ご相談くださいね。
出典
- 国立がん研究センター 子宮体がん(子宮内膜がん):https://ganjoho.jp/public/cancer/corpus_uteri/index.html
- 日本産科婦人科学会 子宮体がん:
- https://www.jsog.or.jp/citizen/5714/