「最近、物忘れがひどい」
「何度も同じことを聞いてしまう」
「認知症と診断されたけど、どんな病気なの?」
もしかしたら、それはアルツハイマー病かもしれません。
アルツハイマー病は、認知症の中で最も多い病気であり、誰もがなる可能性のある病気です。
この記事では、アルツハイマー病の原因、症状、検査、治療法、そして予防策について、看護師の視点から詳しく解説します。
アルツハイマー病とは:認知症の中で最も多い病気
アルツハイマー病とは、脳の神経細胞が徐々に壊れていくことで、認知機能が低下していく病気です。
認知症の中で最も多く、約7割を占めています。
アルツハイマー病の有病率:高齢化とともに増加
アルツハイマー病の有病率は、高齢化とともに増加しています。
日本では、2025年には約700万人がアルツハイマー病になると推計されています。
アルツハイマー病の好発年齢:65歳以上が多い
アルツハイマー病は、65歳以上で発症することが多いですが、若年性アルツハイマー病といって、65歳未満で発症する人もいます。
アルツハイマー病の症状:記憶障害から始まり、徐々に進行
アルツハイマー病の主な症状は、以下の通りです。
- 記憶障害:
- 初期:
- 数分前のことを忘れる
- 物を置いた場所を忘れる
- 何度も同じことを聞く
- 約束を忘れる
- 日付や曜日が分からなくなる
- 中期:
- 昔のことも忘れる
- 日時や場所が分からなくなる(失見当識)
- 迷子になる、徘徊する
- 家族や友人の名前が分からなくなる
- 日常生活が困難になる
- 末期:
- 家族の顔が分からなくなる
- 着替えや入浴が一人でできなくなる
- 言葉が少なくなり、会話が困難になる
- 寝たきりになる
- 初期:
- 精神症状:
- 抑うつ、不安、焦燥感
- 無関心、意欲低下
- 興奮、攻撃性
- 幻覚、妄想
- 行動異常:
- 徘徊
- 介護への抵抗
- 異食
- 収集癖
症状は徐々に進行していき、日常生活に支障をきたすようになります。
アルツハイマー病の原因:アミロイドβタンパクとタウタンパク
アルツハイマー病の原因は、まだ完全には解明されていませんが、アミロイドβタンパクとタウタンパクの蓄積が関与していると考えられています。
- アミロイドβタンパク:
- 脳内に蓄積すると、神経細胞を傷つけると考えられています。
- タウタンパク:
- 神経細胞内で異常にリン酸化すると、神経細胞の機能を障害すると考えられています。
これらのタンパク質の蓄積は、加齢や遺伝、生活習慣など、様々な要因によって促進されると考えられています。
アルツハイマー病の検査:神経心理学検査と画像検査
アルツハイマー病の診断には、以下の検査が行われます。
- 神経心理学検査:
- 記憶力や判断力、言語能力などを評価する検査を行います。
- 代表的な検査としては、MMSE(Mini-Mental State Examination)や、長谷川式簡易知能評価スケールなどがあります。
- 画像検査:
- MRI検査やCT検査で、脳の萎縮や、他の病気がないかを調べます。
- PET検査やSPECT検査で、脳の血流や代謝の状態を調べます。
- 髄液検査:
- 脳脊髄液中のアミロイドβタンパクやタウタンパクの量を測定します。
これらの検査結果を総合的に判断し、アルツハイマー病の診断を行います。
アルツハイマー病の治療:薬物療法と非薬物療法
アルツハイマー病の治療は、薬物療法と非薬物療法があります。
- 薬物療法:
- 認知症治療薬:
- アリセプト、レミニール、イクセロン、メマリーなどの薬が使用されます。
- これらの薬は、脳内の神経伝達物質を増やし、認知機能の低下を遅らせる効果があります。
- その他:
- 興奮や攻撃性などの精神症状に対しては、抗精神病薬や抗うつ薬などが使用されることがあります。
- 認知症治療薬:
- 非薬物療法:
- リハビリテーション:
- 回想法や音楽療法、作業療法など、様々なリハビリテーションを行い、残された機能を維持します。
- 環境調整:
- 家族や介護者のサポートを受けやすい環境を整え、安心して生活できるようにします。
- 心理療法:
- カウンセリングなどを行い、不安や抑うつなどの精神症状を軽減します。
- リハビリテーション:
アルツハイマー病の予防:生活習慣の改善が重要
アルツハイマー病を予防するためには、生活習慣の改善が重要です。
- バランスの取れた食事:
- 栄養バランスの取れた食事を心がけ、肥満を解消しましょう。
- 適度な運動:
- 適度な運動は、脳の活性化に繋がり、認知機能の低下を予防します。
- 知的活動:
- 読書や学習、ゲームなど、知的活動を積極的に行いましょう。
- 社会参加:
- 地域活動や趣味活動など、社会との繋がりを持ちましょう。
- 生活習慣病の予防:
- 高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病は、アルツハイマー病のリスクを高めます。
アルツハイマー病に関するQ&A
Q:アルツハイマー病は、遺伝しますか?
A: アルツハイマー病には、遺伝性のものと、そうでないものがあります。
遺伝性のアルツハイマー病は、比較的若年で発症することが多く、家族内に同じ病気の人がいる場合に注意が必要です。
Q:アルツハイマー病の検査費用はどのくらいですか?
A: 検査費用は、医療機関や検査内容によって異なります。
保険適用となる検査もありますので、医療機関に問い合わせてみましょう。
Q:アルツハイマー病の治療期間はどのくらいですか?
A: アルツハイマー病は、進行性の病気であり、完治することは難しいとされています。
しかし、適切な治療を行うことで、症状の進行を遅らせ、生活の質を維持することができます。
Q:アルツハイマー病の介護は、どのようにすれば良いですか?
A: アルツハイマー病の介護は、根気と優しさが大切です。
患者さんのペースに合わせて、無理のない範囲でサポートを行いましょう。
看護師として伝えたいこと:不安な気持ち、ご相談ください
アルツハイマー病と診断された時は、大きな不安や悲しみを感じるかもしれません。
しかし、アルツハイマー病は、決して一人で抱え込む必要はありません。
医療機関や介護施設、地域社会のサポートを受けながら、共に病気と向き合っていくことができます。
「もしかして、アルツハイマー病かも…?」
と、少しでも不安に感じたら、まずは医療機関を受診し、ご相談ください。
出典
- 厚生労働省 アルツハイマー病の新しい治療薬について:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000089508_00003.html
- 日本神経学会 (疾患・用語編)アルツハイマー病:https://www.neurology-jp.org/public/disease/alzheimer.html