「線がゆがむ?」加齢黄斑変性ってどんな病気?サインと原因、大切な視力を守る対策【看護師監修】

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「新聞の文字が読みにくくなったな…」
「まっすぐな線が、なんだかゆがんで見えるんだけど…」
「車の運転中、標識が見えづらいことがある…」

年齢を重ねるとともに、「見え方」に変化を感じる方は少なくありません。
そのサインの中に、加齢黄斑変性という目の病気が隠れていることがあります。

加齢黄斑変性は、進行すると読書や人の顔の判別などが難しくなり、生活に大きな影響を与える可能性のある病気ですが、早く気づいて適切な対策をとることで、視力低下の進行を抑えられる可能性が高まります。

この記事では、看護師の視点から、加齢黄斑変性がどのような病気なのか、どんなサインがあるのか、そして大切な視力を守るために今日からできることについて、分かりやすくお伝えします。

見る力の要!「黄斑(おうはん)」とは?

私たちの目は、カメラに例えられます。レンズにあたるのが「角膜」や「水晶体」、フィルムにあたるのが「網膜」です。

網膜の中心には、「黄斑(おうはん)」と呼ばれる小さな場所があります。
黄斑には、色や形を識別するための重要な細胞が集まっており、物事をはっきりと見たり、文字を読んだり、人の顔を認識したりといった、「見る力」の中心を担っています。

例えるなら、黄斑はカメラのフィルムの「ど真ん中」にある、最も高性能な部分のようなものです。

加齢黄斑変性ってどんな病気?

加齢黄斑変性は、名前の通り、主に加齢が原因で、この「黄斑」に障害が起こり、見え方に異常が生じる病気です。
欧米では成人の失明原因の第1位であり、日本でも高齢化に伴い患者さんが増えています。

黄斑がうまく働かなくなることで、視力(特に中心部の視力)が低下したり、物の形がゆがんで見えたりするといった症状が現れます。

こんな見え方、要注意!~セルフチェックとサイン~

加齢黄斑変性で特徴的なのは、主に「中心部」の見え方に異常が現れることです。
周辺部の視野は比較的保たれることが多いです。

以下のような見え方の変化に心当たりがないか、チェックしてみましょう。

  • 物がゆがんで見える(変視症): 一番気づきやすいサインかもしれません。電柱や窓枠など、まっすぐな線や格子状の線が、波打ったり、折れ曲がったりして見えます。
  • 見たいものがかすむ、中心が見えにくい(中心暗点): 本や新聞を読もうとしても、読みたい部分がかすんで見えたり、黒っぽい点や灰色っぽい点が現れて見えなかったりします。
  • 視力(特に中心の視力)が低下する: 以前は読めていた小さな文字が読めなくなるなど、視力が落ちたと感じます。
  • 色の区別がつきにくくなる: 色が薄く見えたり、違った色に見えたりすることがあります。

【自宅で簡単!アムスラー検査】

黄斑の状態をセルフチェックできる簡単な方法に「アムスラー検査」があります。

  1. チェックしたい目に合ったメガネやコンタクトレンズを使用します。
  2. 部屋の明るさを普段通りにします。
  3. アムスラーチャート(格子状の図。インターネットで検索すると出てきます)を、顔の正面約30cmの距離に持ちます。
  4. 片方の目を手で隠し、もう片方の目で、チャートの中心にある黒い点を見つめます。
  5. 中心を見つめたまま、格子線全体がゆがんで見えないか、線が途切れていないか、かすんで見えないか、黒い点が見えなくならないかを確認します。
  6. もう片方の目も同じようにチェックします。

もし、線がゆがんで見える、途切れて見える、中心が見えにくいといった異常があれば、すぐに眼科を受診しましょう。この検査は、病気の早期発見や、病気の進行の有無を確認するためにとても有効です。

どうして起こるの?~原因とリスク要因~

加齢黄斑変性の主な原因は「加齢」ですが、それ以外にもいくつかのリスク要因が知られています。

  • 加齢: 最も大きな要因です。特に50歳を過ぎるとリスクが高まります。
  • 喫煙: 加齢黄斑変性の最大の危険因子です。 喫煙者は非喫煙者に比べて発症リスクが数倍高まると言われており、進行も速い傾向があります。タバコは目の健康にとって、非常に大きなマイナス要因です。
  • 遺伝: 家族に加齢黄斑変性の人がいる場合、発症リスクが高まることがあります。
  • 生活習慣: 栄養バランスの偏った食事、肥満、高血圧、高コレステロールなどもリスクを高める可能性があります。
  • 紫外線: 強い紫外線を長年浴びることも、リスク要因の一つと考えられています。

これらの要因が組み合わさることで、黄斑にダメージが蓄積され、病気が発症・進行すると考えられています。

加齢黄斑変性には二つのタイプがあります

加齢黄斑変性には、大きく分けて二つのタイプがあります。

  • 萎縮型(いしゅくがた): 黄斑の組織が、時間をかけてゆっくりと傷んでいくタイプです。進行は比較的穏やかですが、有効な治療法は限られています。
  • 滲出型(しんしゅつがた): 網膜の下に「新生血管(しんせいけっかん)」という異常な血管が生えてきて、そこから血液や水分が漏れ出し、黄斑にダメージを与えるタイプです。進行が速く、急激な視力低下を招きやすいですが、現在はこちらのタイプに有効な治療法があります。

日本人では滲出型が多い傾向があり、急に見え方がおかしいと感じたら、滲出型の可能性があるため、特に早めの受診が重要です。

大切な視力を守るために~看護師がお伝えする向き合い方とケア~

加齢黄斑変性と診断された場合でも、また、予防や進行抑制のために、ご自身でできることや、医療の中で受けられるサポートがあります。
看護師として、そのお手伝いができればと思っています。

  1. 早期発見のための定期的な検査と受診
    加齢とともにリスクが高まる病気ですので、症状がなくても定期的に眼科検診を受けることが大切です。
    特に、見え方の変化(ゆがみ、かすみなど)に気づいたら、決して自己判断せず、早急に眼科を受診しましょう。
    「年のせいかな?」と思わず、「念のため専門家に見てもらおう」と行動することが、早期発見につながり、その後の視力を守るために非常に重要です。
    眼科では、視力検査、眼底検査に加え、OCT(光干渉断層計)という網膜の断面を詳しく見る検査や、必要に応じて蛍光眼底造影検査などを行い、病気の診断やタイプの特定を行います。
    これらの検査について不安があれば、看護師に遠慮なく尋ねてください。
  2. 医療的なサポート(医師による治療)
    加齢黄斑変性の治療は、主に滲出型に対して行われます。
    現在、最も一般的な治療法は、新生血管の成長を抑える薬を眼内に注射する抗VEGF薬注射です。この注射により、新生血管からの血液や水分の漏れを抑え、病気の進行を遅らせたり、一部視力が改善したりすることが期待できます。
    萎縮型には、現在のところ病気の進行を止める確立された治療法はありませんが、進行を遅らせるための研究が進められています。
    看護師は、治療に対する不安をお伺いしたり、注射前後の注意事項を確認したり、副作用の観察を行ったりと、医師と連携しながら治療を受ける方をサポートします。
  3. ご自身でできること~生活習慣の見直しとセルフケア~
    加齢黄斑変性の予防や進行を遅らせるために、ご自身でできる大切なことがあります。
    • 何よりも禁煙!: 喫煙されている方は、禁煙することが最も効果的な対策の一つです。医師や看護師に相談し、禁煙外来などを利用することも検討しましょう。
    • バランスの取れた食事: 特に、黄斑の健康に良いとされる栄養素を含む食品を積極的に摂りましょう。
      • ルテイン、ゼアキサンチン: ほうれん草、ケール、ブロッコリーなどの緑黄色野菜。
      • オメガ3脂肪酸: サバ、イワシなどの青魚。
    • 栄養補助食品(サプリメント): 一部の研究で、特定のビタミンやミネラル(亜鉛、ビタミンC、E、ルテイン、ゼアキサンチンなど)を含むサプリメントが、進行を遅らせる効果が期待できるとされています(AREDSサプリメント)。ただし、必ず医師や薬剤師に相談の上、服用してください。
    • 生活習慣病の管理: 高血圧や高コレステロールは、目の血管にも負担をかけ、病気のリスクを高める可能性があります。医師の指示に従い、適切に管理することが大切です。
    • 紫外線対策: 外出時には、つばの広い帽子をかぶったり、UVカット効果のあるサングラスをかけたりして、目への紫外線の影響を減らしましょう。
    • アムスラー検査の習慣化: 自宅でできるアムスラー検査を定期的に行い、見え方の変化がないかチェックする習慣をつけましょう。片目ずつ行うのがポイントです。
    • 視力低下への適応: もし視力が低下した場合でも、読書拡大器、音声読み上げソフト、文字サイズを大きくできるPCやスマホ、高コントラストの画面設定など、利用できる様々な補助具や工夫があります。また、家の中の照明を明るくする、滑りやすいものをなくすなど、安全に生活するための環境調整も大切です。利用できる福祉サービスや相談窓口について、看護師や専門の相談員に尋ねてみてください。
  4. 心理的なサポートと社会資源の活用
    見え方が変わることは、不安や落ち込みにつながることがあります
    一人で悩まず、家族や友人、医療従事者など、信頼できる人に気持ちを話してみましょう。
    また、ロービジョンケア(視覚に障害のある方の生活をサポートするケア)の専門家や、視覚障害者向けの支援団体など、利用できる社会資源についても情報収集し、必要であれば繋がっていくことも大切です。

よくあるご質問に看護師がお答えします

Q1: 加齢黄斑変性は完全に治りますか?一度悪くなった視力は戻りますか?

A1: 残念ながら、一度ダメージを受けた黄斑を完全に元の状態に戻すことは、現在の医療では難しいことが多いです。特に、萎縮型には確立した治療法がありません。

しかし、滲出型に対しては、抗VEGF薬注射などの治療によって、新生血管の活動を抑え、病気の進行を遅らせたり、止めることが期待できます。 治療の効果によっては、一時的に視力が改善する方もいらっしゃいますが、多くは「これ以上悪くしないこと」を目指します。

大切なのは、病気を早く発見し、適切な治療や対策を始めることで、重い視力障害に至るのを防ぐことです。失われた視力を完全に回復させるのは難しくても、残っている視力を最大限に活かせるよう、医療とセルフケアの両面から向き合っていくことが重要です。

Q2: 予防のために今日からできることはありますか?

A2: はい、今日からすぐに始められる大切なことがあります。最も効果が期待できるのは「禁煙」です。喫煙習慣がある方は、ぜひ禁煙にチャレンジしてください。

その他には、黄斑の健康に良いとされるルテインやゼアキサンチン、オメガ3脂肪酸などを多く含む、バランスの取れた食事を心がけること。そして、外出時に帽子やUVカット機能付きのサングラスを使って、目への紫外線の影響を減らすことも大切です。

また、高血圧や高コレステロールといった生活習慣病がある方は、主治医の指示に従ってしっかりと管理することも、目を含む全身の血管の健康を守るために重要です。

そして、症状がなくても、50歳を過ぎたら定期的に眼科検診を受けることを習慣にしましょう。

Q3: 目に注射をするのは怖いのですが、痛みはありますか?頻度はどれくらいですか?

A3: 目に注射をすると聞くと、皆さん不安を感じるのは当然です。しかし、眼科で行う抗VEGF薬の注射は、局所麻酔の目薬を使ってから行うため、強い痛みを感じる方は少ないです。 チクっとした軽い痛みや、目に押されるような圧迫感を感じることはありますが、耐えられないほどの痛みではないことがほとんどです。処置自体も数分で終わります。

注射の頻度は、病気の状態や治療への反応によって異なりますが、治療開始直後は月に1回の注射を数ヶ月続け、その後は病状を見ながら2ヶ月や3ヶ月に1回と間隔を空けていくパターンが多いです。 定期的な通院と注射が必要になります。

不安や恐怖を感じる場合は、遠慮なく医師や看護師にその気持ちを伝えてください。処置の前に詳しく説明を聞いたり、リラックスできるよう配慮してもらったりすることができます。

Q4: もし視力がかなり低下してしまったら、どのような生活になりますか?何かサポートはありますか?

A4: 加齢黄斑変性で中心視力が低下しても、周辺の視力は比較的保たれることが多いため、全く何も見えなくなる「全盲」になることは稀です。しかし、読書、料理、外出など、日常生活に支障が出ることがあります。

視力が低下した場合でも、生活の質を維持するための様々なサポートがあります。

  • 拡大鏡や拡大読書器などの補助具の活用。
  • スマートフォンやパソコンの画面の文字を大きくしたり、音声読み上げ機能を使ったりする工夫。
  • 家の中の照明を明るくしたり、物の配置を工夫したりして、安全に動き回れるようにする。
  • 文字や色がはっきり見えるようにコントラストを調整する。

また、医療機関の看護師や、ロービジョンケアを専門とする視能訓練士、地域の視覚障害者生活訓練等事業相談支援事業など、視覚に障害のある方をサポートする様々な専門家やサービスがあります。これらの情報を提供したり、必要な支援に繋がるお手伝いをするのも看護師の役割の一つです。一人で抱え込まず、ぜひ利用できるサポートについて尋ねてみてください。見え方が変化しても、できることはたくさんあります。

最後に

加齢黄斑変性は、決して他人事ではない、年齢とともに注意が必要な病気です。
「年のせいだから…」と諦めず、見え方の変化に気づいたら、まずは眼科を受診することをお勧めします。

早期に適切な診断と治療を受けること、そして禁煙やバランスの取れた食事といった日々の生活習慣を見直すことが、大切な視力を守り、より豊かな毎日を送るために繋がります。

不安なことや分からないことがあれば、いつでも医療機関にご相談ください。

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