「疲れると、いつも同じ場所にできるあの嫌な水ぶくれ…」
「もしかして、キスでうつっちゃったのかな?」
それは、多くの人が悩む単純ヘルペスかもしれません。
一度できると何度も繰り返す厄介なこの病気。
感染経路や再発のメカニズムを知り、適切な対策をとることで、症状を和らげ、再発の頻度を減らすことができます。
この記事では、単純ヘルペスの気になる疑問を解消し、原因、症状、治療法、そして日常生活でできる予防策まで、看護師の視点から分かりやすく解説します。
ピリピリ、そして水ぶくれ…単純ヘルペスってどんな病気?
単純ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染によって起こる皮膚や粘膜の病気です。
特徴は、一度感染するとウイルスが神経に潜伏し、体の抵抗力が落ちた時などに再び活動を始め、同じ場所に症状を繰り返すことです。
症状チェック:唇や性器にできる特徴的な水ぶくれ
単純ヘルペスの主な症状は、ピリピリとした痛みやかゆみを伴い、小さな水ぶくれ(水疱)がまとまってできることです。
- 顔、特に唇に:口唇ヘルペス
- 最初に、かゆみやチクチクとした違和感を感じることが多く、その後、小さな水疱が多数現れます。
- 下半身、特に性器に:性器ヘルペス
- 性器やその周辺、お尻などに水疱ができ、排尿時の痛みや発熱、リンパ節の腫れを伴うこともあります。
水疱は数日後に破れ、ジュクジュクとした状態になり、その後かさぶたができて、通常2週間程度で自然に治ります。
しかし、ウイルスは神経に潜んでいるため、油断するとまた再発してしまうのです。
感染経路は?単純ヘルペスウイルスの種類
単純ヘルペスの原因となる単純ヘルペスウイルス(HSV)には、主に2つの型があります。
- 主に顔に:HSV-1型
- 口唇ヘルペスの主な原因です。幼い頃に、感染者との接触(キス、食器の共有など)を通じて感染することが多いと考えられています。
- 主に性器に:HSV-2型
- 性器ヘルペスの主な原因で、性交渉による感染がほとんどです。
一度感染すると、ウイルスは神経の細胞に潜み、普段は症状を起こしません。しかし、体の免疫力が低下した時などに、再び活動を始めます。
再発の引き金:こんな時に要注意!
単純ヘルペスウイルスが再活性化し、症状が現れるのには、いくつかのきっかけがあります。
- 免疫力の低下: 風邪、発熱、疲労、ストレス
- 体の抵抗力の低下: 病気、睡眠不足
- 紫外線: 強い日焼け
- 外傷: 患部への物理的な刺激
- ホルモンバランスの乱れ: 月経など
これらの要因が重なると、神経に潜んでいたウイルスが再び増殖し、皮膚や粘膜に炎症を引き起こします。
治療の基本:抗ウイルス薬で早めにケア
単純ヘルペスの治療には、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬が用いられます。
早期に治療を開始するほど、症状の悪化を防ぎ、治癒を早めることができます。
- 塗るタイプ:外用薬
- 症状が軽い場合や、再発の初期に使用します。抗ウイルス成分を含む軟膏やクリームを患部に塗布します。
- 飲むタイプ:内服薬
- 初めて感染した場合や、症状が重い場合、広範囲に及ぶ場合、再発を頻繁に繰り返す場合などに使用されます。
ピリピリ、チクチクといった初期症状を感じたら、迷わず皮膚科を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
似ているけど違う!単純ヘルペスと帯状疱疹
単純ヘルペスとよく混同される病気に帯状疱疹があります。どちらも水疱ができる病気ですが、原因となるウイルスや症状には違いがあります。
- 原因ウイルス:
- 単純ヘルペス:単純ヘルペスウイルス(HSV-1、HSV-2)
- 帯状疱疹:水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV:水ぼうそうのウイルス)
- 再発:
- 単純ヘルペス:何度も再発しやすい
- 帯状疱疹:通常、一度かかると再発はまれ
- 症状の特徴:
- 単純ヘルペス:局所的な水疱、再発部位が比較的決まっている
- 帯状疱疹:体の左右どちらかに帯状に広がる水疱と強い痛み
単純ヘルペスQ&A
Q:単純ヘルペスは、キス以外でもうつりますか?
A:はい、単純ヘルペスは、ウイルスが付着した手で患部に触れたり、タオルや食器などを共有したりすることでも感染する可能性があります。特に、水疱ができている時期はウイルスが多く排出されるため、注意が必要です。性器ヘルペスの場合は、性交渉が主な感染経路となります。
Q:単純ヘルペスを完全に治す方法はないのでしょうか?
A:残念ながら、単純ヘルペスウイルスは一度感染すると神経に潜伏するため、現在の医学では完全に体内から排除することはできません。しかし、抗ウイルス薬で症状を抑え、再発の頻度や程度をコントロールすることは可能です。
Q:単純ヘルペスの再発を防ぐために、日常生活でできることはありますか?
A:再発の頻度を減らすためには、以下の点に注意しましょう。
* 免疫力を高める: バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動を心がけましょう。
* ストレスを溜めない: 自分なりのリラックス方法を見つけ、ストレスをコントロールしましょう。
* 紫外線を避ける: 日差しの強い日は、UVカットのリップクリームや日焼け止めを使用しましょう。
* 患部を清潔に保つ: 水疱ができている時は、患部を触らないようにし、清潔に保ちましょう。
* 医師に相談する: 頻繁に再発する場合は、抗ウイルス薬の予防内服について医師に相談してみるのも良いでしょう。
Q:口唇ヘルペスができた時、メイクをしても大丈夫ですか?
A:口唇ヘルペスができている時は、できるだけ患部に触れたり、刺激を与えたりしない方が良いでしょう。
メイクをする場合は、患部を避けて行い、使用したメイク用品は清潔に保つようにしましょう。
治りかけでかさぶたになっている場合も、無理に剥がさないように注意が必要です。
Q:性器ヘルペスの場合、パートナーにうつさないためにはどうすれば良いですか?
A:性器ヘルペスは、性交渉によって感染します。
症状が出ている時はもちろん、症状がない時でもウイルスが排出されることがあるため、コンドームを使用することが感染リスクを減らす有効な手段です。
パートナーにも病気について理解してもらい、症状が出た場合は性交渉を避けるようにしましょう。
看護師として伝えたいこと:単純ヘルペスは、適切な治療とセルフケアで上手に付き合える病気です
単純ヘルペスは、繰り返すことで憂鬱な気持ちになることもあるかもしれません。
しかし、早期に適切な治療を受け、再発予防のためのセルフケアを続けることで、症状をコントロールし、日常生活への影響を最小限に抑えることができます。
もし、ヘルペスの症状が現れたら、我慢せずに皮膚科を受診してくださいね。
出典
- 日本皮膚科学会 ヘルペスと帯状疱疹:https://www.dermatol.or.jp/qa/qa5/index.html
- 川崎医科大学 総合医療センター 「ヘルペス」とは?-ヘルペスは大きく分けて2種類ある-:https://g.kawasaki-m.ac.jp/data/1337/125/