「昨日まで何ともなかったのに、今朝起きたら全身に赤い発疹が広がっていて、かゆみが止まらない。」
「特定の食べ物を食べると、必ずと言っていいほど蕁麻疹が出る。原因は分かっているけど、どう対策すればいいのか分からない。」
もしかしたら、それは蕁麻疹(じんましん)かもしれません。
蕁麻疹は、誰にでも起こりうる一般的な皮膚の症状ですが、原因や症状は多岐にわたります。
この記事では、蕁麻疹の原因、症状、検査、対策、そして治療法について、看護師の視点から詳しく解説します。
蕁麻疹(じんましん)とは:皮膚に膨疹(ぼうしん)ができる病気
蕁麻疹(じんましん)とは、皮膚の一部が突然赤く盛り上がり、かゆみを伴う病気です。
この盛り上がりは「膨疹(ぼうしん)」と呼ばれ、数分から数時間で消えることがほとんどです。
しかし、症状が1ヶ月以上続く場合は、慢性蕁麻疹と診断されます。
蕁麻疹(じんましん)の原因:アレルギー、物理的刺激、ストレスなど様々
蕁麻疹の主な原因は、以下の通りです。
- アレルギー性蕁麻疹:
- 特定の食物(青魚、エビ、カニ、ソバ、牛乳、卵、小麦、大豆、ナッツ類など)、薬剤(抗生物質、解熱鎮痛薬、造影剤など)、植物、昆虫(ハチ、アリなど)、ラテックスなどが原因となります。
- アレルギー反応によってヒスタミンなどの化学物質が放出され、血管が拡張し、皮膚に膨疹が現れます。
- アレルギー性蕁麻疹は、原因物質を摂取したり、接触したりしてから数分から数時間以内に症状が現れることが多いです。
- 物理性蕁麻疹:
- 摩擦や圧迫(下着の締め付け、ベルトなど)、寒冷、温熱、日光、振動などの物理的な刺激が原因となります。
- 皮膚への機械的な刺激によってヒスタミンが放出され、蕁麻疹が引き起こされます。
- 物理性蕁麻疹は、刺激を受けてから数分以内に症状が現れることが多いです。
- コリン性蕁麻疹:
- 発汗、運動、精神的ストレス、入浴、熱い食べ物などが原因となります。
- 発汗時に放出されるアセチルコリンという物質が、蕁麻疹を引き起こします。
- 小さな膨疹がたくさんでき、チクチクとした痛みを伴うことが多いのが特徴です。
- コリン性蕁麻疹は、発汗後数分から数時間以内に症状が現れることが多いです。
- 心因性蕁麻疹:
- 精神的なストレスや疲労、睡眠不足、不安などが原因となります。
- ストレスによって自律神経が乱れ、ヒスタミンが放出されると考えられています。
- 心因性蕁麻疹は、ストレスを感じた時や、ストレスから解放された時などに症状が現れることが多いです。
- 特発性蕁麻疹:
- 原因が特定できない蕁麻疹です。
- 慢性蕁麻疹の多くは、特発性蕁麻疹に分類されます。
- 特発性蕁麻疹は、症状が長期間続き、原因が特定できないため、治療が難しいことがあります。
- その他:
- 感染症(ウイルス、細菌、真菌など)、自己免疫疾患、悪性腫瘍などが原因となることもあります。
- これらの原因による蕁麻疹は、一般的な蕁麻疹とは異なる症状や経過を示すことがあります。
蕁麻疹(じんましん)の症状:かゆみ、赤み、膨疹が主な症状
蕁麻疹の主な症状は、以下の通りです。
- かゆみ:
- 蕁麻疹の最も一般的な症状です。
- 夜も眠れないほどのかゆみが全身に広がり、掻きむしってしまうため、皮膚が傷だらけになってしまった。
- かゆみの程度は、軽いものから耐えられないほど強いものまで様々です。
- 赤み:
- 皮膚が赤く盛り上がります。
- 赤みの範囲や形は、原因や個人差によって異なります。
- 赤みは、膨疹の周りに現れることが多いですが、膨疹自体が赤いこともあります。
- 膨疹(ぼうしん):
- 皮膚が蚊に刺されたように膨らみます。
- 大きさや形は様々で、地図のように広がることもあります。
- 数分から数時間で消えることがほとんどですが、数日間続くこともあります。
- 膨疹は、中心部が白っぽく、周囲が赤いことが多いです。
- その他:
- 喉の粘膜に蕁麻疹ができると、呼吸困難や窒息を引き起こすことがあります。
- 腹痛や吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状を伴うこともあります。
- 頭痛、めまい、動悸などの全身症状を伴うこともあります。
- まぶたや唇が腫れることがあります(血管性浮腫)。
蕁麻疹(じんましん)の検査:問診、皮膚テスト、血液検査など
蕁麻疹の検査は、以下の方法で行われます。
- 問診:
- 症状が現れた時期、場所、誘因などを詳しく確認します。
- 食物、薬剤、生活環境など、アレルギーの原因となる可能性のあるものを確認します。
- 症状の経過や、過去の蕁麻疹の経験なども確認します。
- 皮膚テスト(プリックテスト、皮内テスト):
- アレルギーの原因となる可能性のある物質を皮膚に少量つけ、反応を確認します。
- アレルギー性蕁麻疹の原因を特定するために行われます。
- プリックテストは、皮膚に針を刺してアレルゲンを注入し、反応を見ます。
- 皮内テストは、皮膚に注射針を刺してアレルゲンを注入し、反応を見ます。
- 皮膚テスト費用は、保険適用で3割負担の場合、1種類あたり数百円から千円程度です。
- 血液検査:
- IgE抗体価やヒスタミン遊離試験などを行い、アレルギー反応の有無や程度を確認します。
- 慢性蕁麻疹の場合、甲状腺機能検査や自己抗体検査、炎症反応などを確認することもあります。
- 血液検査費用は、保険適用で3割負担の場合、検査項目によって異なりますが、数千円から1万円程度です。
- その他:
- 食物負荷試験:食物アレルギーが疑われる場合に行われます。
- 運動負荷試験:コリン性蕁麻疹が疑われる場合に行われます。
- 寒冷負荷試験:寒冷蕁麻疹が疑われる場合に行われます。
蕁麻疹(じんましん)の対策:原因の除去、薬物療法、生活習慣の改善
蕁麻疹の対策は、以下の通りです。
- 原因の除去:
- 原因が特定できている場合は、原因物質や刺激を避けることが最も重要です。
- 食物アレルギーの場合は、原因となる食物を完全に避けるようにしましょう。
- 食品表示をよく確認し、原因となる食物が使われていないか注意しましょう。
- 外食時は、店員にアレルギーがあることを伝え、原因となる食物が使われていないか確認しましょう。
- 薬剤アレルギーの場合は、原因となる薬剤を避けるようにしましょう。
- 医師や薬剤師にアレルギーがあることを伝え、原因となる薬剤が処方されないようにしましょう。
- 市販薬を購入する際は、成分表示をよく確認し、原因となる薬剤が含まれていないか確認しましょう。
- 物理性蕁麻疹の場合は、刺激を避けるために、ゆったりとした服装を選び、皮膚を冷やすようにしましょう。
- 綿やシルクなど、肌に優しい素材の服を選びましょう。
- 締め付けの少ない下着を選びましょう。
- 夏場は、通気性の良い服を選び、汗をかいたらこまめに着替えましょう。
- 冬場は、厚着をして体を冷やさないようにしましょう。
- 入浴時は、熱いお湯を避け、ぬるま湯に短時間浸かるようにしましょう。
- コリン性蕁麻疹の場合は、発汗を避けるために、運動や入浴を控えめにしましょう。
- 運動をする場合は、涼しい時間帯を選び、こまめに休憩を取りましょう。
- 入浴は、ぬるま湯に短時間浸かるようにしましょう。
- 発汗を抑えるために、制汗剤を使用するのも良いでしょう。
- 心因性蕁麻疹の場合は、ストレスを解消するために、リラックスできる時間を作りましょう。
- 睡眠時間を十分に確保し、規則正しい生活を送りましょう。
- ストレス解消法を見つけ、実践しましょう。
- アロマテラピーや音楽療法など、リラックス効果のあるものを取り入れるのも良いでしょう。
- 薬物療法:
- 抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の内服薬や外用薬が用いられます。
- 抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンの働きを抑え、かゆみや赤みを軽減します。
- 抗アレルギー薬は、アレルギー反応に関わる化学物質の放出を抑え、蕁麻疹の発生を予防します。
- 内服薬は、全身の症状に効果があります。
- 外用薬は、皮膚の症状に直接効果があります。
- 症状の程度や原因に合わせて、適切な薬を選択しましょう。
- 症状が重い場合は、ステロイド薬が使用されることもあります。
- ステロイド薬は、炎症を抑える効果があり、蕁麻疹の症状を速やかに改善します。
- しかし、副作用のリスクもあるため、医師の指示に従って使用しましょう。
- 喉の粘膜に蕁麻疹ができ、呼吸困難がある場合は、アドレナリン注射が必要になることがあります。
- アドレナリン注射は、気道を広げ、呼吸困難を改善します。
- 呼吸困難を感じたら、すぐに救急車を呼びましょう。
- 抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の内服薬や外用薬が用いられます。
- 生活習慣の改善:
- ストレスや疲労を避け、十分な睡眠とバランスの取れた食事を心がけましょう。
- 睡眠不足は、免疫力を低下させ、蕁麻疹を悪化させる可能性があります。
- バランスの取れた食事は、免疫力を高め、蕁麻疹の予防につながります。
- 特に、ビタミンやミネラルを豊富に含む野菜や果物を積極的に摂りましょう。
- アルコールや香辛料など、蕁麻疹を悪化させる可能性のあるものは控えましょう。
- アルコールは、血管を拡張させ、蕁麻疹を悪化させることがあります。
- 香辛料は、発汗を促し、コリン性蕁麻疹を悪化させることがあります。
- 皮膚を清潔に保ち、かゆくても掻かないようにしましょう。
- 皮膚を清潔に保つことで、二次感染を防ぎます。
- かゆくても掻くと、皮膚が傷つき、蕁麻疹が悪化することがあります。
- かゆみが強い場合は、冷やすと楽になることがあります。
- 爪を短く切っておくことも有効です。
- ストレスや疲労を避け、十分な睡眠とバランスの取れた食事を心がけましょう。
蕁麻疹(じんましん)に関するQ&A
Q:蕁麻疹は、うつりますか?
A:蕁麻疹は、基本的にうつりません。
しかし、蕁麻疹の原因が感染症(ウイルスや細菌)である場合は、感染症がうつる可能性があります。
Q:蕁麻疹が出たら、病院に行くべきですか?
A:蕁麻疹の症状が軽い場合は、市販薬で様子を見ても良いでしょう。
しかし、以下の場合は、医療機関を受診してください。
- 症状がひどく、日常生活に支障がある場合
- 喉の粘膜に蕁麻疹ができ、呼吸困難がある場合
- 症状が1ヶ月以上続く場合
- 原因が分からない場合
Q:蕁麻疹の治療期間はどのくらいですか?
A:蕁麻疹の治療期間は、原因や症状によって異なります。
急性蕁麻疹の場合は、数日から数週間で治ることがほとんどです。
慢性蕁麻疹の場合は、数ヶ月から数年、またはそれ以上かかることもあります。
Q:蕁麻疹が出やすい食べ物はありますか?
A:蕁麻疹が出やすい食べ物は、人によって異なります。
一般的には、以下の食べ物が蕁麻疹を引き起こしやすいと言われています。
- 青魚(サバ、アジ、イワシなど)
- エビ、カニ
- ソバ
- 牛乳
- 卵
- 小麦
- 大豆
- ナッツ類(ピーナッツ、アーモンドなど)
- チョコレート
- アルコール
Q:子供の蕁麻疹で注意することはありますか?
A:子供の蕁麻疹は、食物アレルギーや感染症が原因であることが多いです。
特に、喉の粘膜に蕁麻疹ができ、呼吸困難がある場合は、すぐに医療機関を受診してください。
また、子供はかゆみを我慢できずに掻きむしってしまうことがあるので、爪を短く切る、ミトンをつけるなどの対策を取りましょう。
看護師として伝えたいこと:原因を特定し、適切な対策を
蕁麻疹は、原因が特定できれば、適切な対策を取ることで症状をコントロールできます。
しかし、原因が分からない場合や、症状が重い場合は、自己判断せずに医療機関を受診してください。
蕁麻疹と向き合い、快適な生活を取り戻しましょう。
出典
- 日本皮膚科学会 蕁麻疹(じんましん):https://www.dermatol.or.jp/qa/qa9/index.html
- 日本アレルギー学会 蕁麻疹(じんましん)/Q&A:https://www.jsaweb.jp/modules/citizen_qa/index.php?content_id=12