「静かな部屋にいると、まるでセミが鳴いているようなキーンという音が聞こえ、集中できない。」
「夜、寝ようとすると、ザーという音が気になって眠れない。」
「最近、耳鳴りがひどくなり、めまいや吐き気もする。」
もしかしたら、それは耳鳴りかもしれません。
耳鳴りは、周囲に音源がないにもかかわらず、耳や頭の中で音が聞こえる症状です。
多くの場合、自分にしか聞こえませんが、まれに他の人にも聞こえることがあります。
この記事では、耳鳴りの原因、症状、治療法について、看護師の視点から詳しく解説します。
耳鳴りとは:周囲に音源がないのに音が聞こえる症状
耳鳴りは、実際には音がしていないのに、耳や頭の中で何らかの音が聞こえる症状です。
聞こえ方は様々で、「キーン」「ジー」「ザー」「ピー」など、人によって表現が異なります。
また、音の大きさや持続時間も個人差が大きく、常に聞こえる人もいれば、時々聞こえる人もいます。
耳鳴りの症状:音の種類、聞こえ方、持続時間など
耳鳴りの主な症状は、以下の通りです。
- 音の種類:
- 高い音:「キーン」「ピー」「ヒュー」など
- 静かな部屋にいると、まるでセミが鳴いているようなキーンという音が聞こえ、集中できない。
- 高い音が断続的に聞こえ、イライラする。
- 低い音:「ジー」「ザー」「ブーン」など
- 夜、寝ようとすると、ザーという音が気になって眠れない。
- 低い音が常に聞こえ、頭が重く感じる。
- 金属音:「キンキン」「カチカチ」など
- 金属音が響き、耳が痛い。
- 金属音が断続的に聞こえ、不快感がある。
- 脈打つような音:「ドクドク」「ズキンズキン」など
- 心臓の拍動に合わせて、ドクドクという音が聞こえる。
- 頭の中でズキンズキンと音が響き、頭痛がする。
- 高い音:「キーン」「ピー」「ヒュー」など
- 聞こえ方:
- 片耳だけ聞こえる
- 右耳だけに耳鳴りがする。
- 左耳だけに耳鳴りがする。
- 両耳で聞こえる
- 両耳で同じ音が聞こえる。
- 両耳で違う音が聞こえる。
- 頭の中で響く
- 頭全体に音が響く。
- 後頭部や側頭部に音が響く。
- 片耳だけ聞こえる
- 持続時間:
- 一時的に聞こえる
- 数分から数時間で消える。
- 特定の状況下(疲れた時、ストレスを感じた時など)に現れる。
- 常に聞こえる
- 常に音が聞こえ、日常生活に支障をきたす。
- 音の大きさが変化することはあるが、完全には消えない。
- 時間帯によって聞こえ方が違う
- 夜になると音が大きくなる。
- 朝は音が小さく、夕方から夜にかけて大きくなる。
- 一時的に聞こえる
これらの症状は、原因や個人差によって異なります。
また、耳鳴りに伴って、難聴、めまい、耳の痛み、耳閉感などの症状が現れることもあります。
耳鳴りの原因:様々な要因が複雑に関与
耳鳴りの主な原因は、以下の通りです。
- 耳の病気:
- 耳垢栓塞:耳垢が溜まり、耳の穴を塞いでしまう状態。
- 外耳道炎:耳の穴の皮膚が炎症を起こした状態。
- 中耳炎:中耳が炎症を起こした状態。
- 突発性難聴:突然、片耳または両耳の聞こえが悪くなる病気。
- メニエール病:めまい、難聴、耳鳴りを繰り返す病気。
- 耳硬化症:耳小骨の動きが悪くなり、聞こえが悪くなる病気。
- 聴神経腫瘍:聴神経にできる腫瘍。
- 全身の病気:
- 高血圧:血圧が高い状態が続くと、血管に負担がかかり、耳鳴りを引き起こすことがあります。
- 動脈硬化:血管が硬くなり、血流が悪くなる状態。
- 糖尿病:血糖値が高い状態が続くと、神経や血管が障害され、耳鳴りを引き起こすことがあります。
- 甲状腺疾患:甲状腺ホルモンの異常が、耳鳴りを引き起こすことがあります。
- 貧血:鉄分不足などにより、耳鳴りを引き起こすことがあります。
- 薬の副作用:
- アスピリン:大量に服用すると、耳鳴りを引き起こすことがあります。
- 利尿薬:脱水症状を引き起こし、耳鳴りを悪化させることがあります。
- 抗がん剤:聴神経を障害し、耳鳴りを引き起こすことがあります。
- ストレスや疲労:
- ストレス:精神的なストレスが、耳鳴りを悪化させることがあります。
- 過労:肉体的な疲労が、耳鳴りを悪化させることがあります。
- 睡眠不足:睡眠不足が続くと、耳鳴りが悪化することがあります。
- その他:
- 加齢:加齢に伴い、聴神経が衰え、耳鳴りを引き起こすことがあります。
- 騒音:大きな音を長時間聞くと、聴神経が障害され、耳鳴りを引き起こすことがあります。
- 顎関節症:顎関節の異常が、耳鳴りを引き起こすことがあります。
- 頸椎の異常:頸椎の歪みが、耳鳴りを引き起こすことがあります。
これらの原因が複雑に関与している場合もあります。
耳鳴りの治療法:原因疾患の治療、薬物療法、音響療法など
耳鳴りの治療法は、原因や症状によって異なります。
- 原因疾患の治療:
- 耳の病気や全身の病気が原因の場合は、その病気の治療を行います。
- 例:中耳炎の場合は、抗生物質やステロイド薬を使用します。
- 例:高血圧の場合は、降圧薬を使用します。
- 耳の病気や全身の病気が原因の場合は、その病気の治療を行います。
- 薬物療法:
- ビタミン剤:神経の機能を改善します。
- ビタミンB12、メチコバールなどが使用されます。
- 血行促進薬:内耳の血流を改善します。
- イソソルビド、アデホスコーワなどが使用されます。
- 血管拡張薬:内耳の血管を広げます。
- カルナクリンなどが使用されます。
- ステロイド薬:炎症を抑えます。
- プレドニゾロンなどが使用されます。
- 抗不安薬や抗うつ薬:精神的な不安や抑うつ症状を和らげます。
- ロラゼパム、エスシタロプラムなどが使用されます。
- ビタミン剤:神経の機能を改善します。
- 音響療法:
- ホワイトノイズやマスカーなど、耳鳴りに似た音を聞くことで、耳鳴りを軽減します。
- ホワイトノイズ:ザーというような、様々な周波数の音を組み合わせた音。
- マスカー:耳鳴りの音に似た音を発生させる機器。
- TRT療法:耳鳴りに慣れるための訓練を行います。
- カウンセリングと音響療法を組み合わせた治療法。
- 耳鳴りに対するネガティブな感情を軽減し、耳鳴りと上手く付き合っていくことを目指します。
- ホワイトノイズやマスカーなど、耳鳴りに似た音を聞くことで、耳鳴りを軽減します。
- その他:
- カウンセリング:ストレスや不安を軽減します。
- 心理療法士が、カウンセリングを行います。
- ストレスの原因を特定し、対処法を学びます。
- 生活習慣の改善:十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動などを心がけます。
- 睡眠:7時間以上の睡眠時間を確保しましょう。
- 食事:塩分やカフェインを控え、バランスの取れた食事を心がけましょう。
- 運動:ウォーキングやストレッチなど、軽い運動を継続しましょう。
- カウンセリング:ストレスや不安を軽減します。
治療期間は、原因や症状によって異なります。
耳鳴りに関するQ&A
Q:耳鳴りは、放置するとどうなりますか?
A:耳鳴りを放置すると、以下のような症状が現れることがあります。
- 難聴
- めまい
- 睡眠障害
- 集中力低下
- うつ病
また、原因によっては、重大な病気が隠れている可能性もあります。
耳鳴りが気になる場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
Q:耳鳴りは、治りますか?
A:耳鳴りの原因や症状によっては、完全に治らない場合もあります。
しかし、適切な治療を行うことで、症状を軽減したり、耳鳴りと上手く付き合っていくことは可能です。
諦めずに、医師と相談しながら治療を進めましょう。
Q:耳鳴りの治療期間は、どのくらいかかりますか?
A:耳鳴りの治療期間は、原因や症状によって異なります。
数週間で改善する人もいれば、数ヶ月、数年単位で治療が必要な人もいます。
治療期間の目安としては、3ヶ月~6ヶ月程度ですが、根気強く治療を続けることが大切です。
Q:耳鳴りの治療費は、どのくらいかかりますか?
A:耳鳴りの治療費は、治療法や医療機関によって異なります。
薬物療法の場合、月々の薬代や診察料がかかります。
音響療法やTRT療法の場合、自由診療となることが多く、1回の治療費は数千円~数万円程度です。
医療費助成制度を利用できる場合もありますので、医療機関や自治体にご相談ください。
Q:耳鳴りの予防法はありますか?
A:耳鳴りを完全に予防する方法はありませんが、以下のことに注意することで、発症リスクを下げることができる可能性があります。
- ストレスを溜め込まない
- 十分な睡眠をとる
- バランスの取れた食事を心がける
- 適度な運動をする
- 騒音を避ける
- イヤホンやヘッドホンの使用時間を短くする
- 禁煙、節酒
- 定期的な健康診断を受ける
Q:耳鳴りの相談は、何科に行けば良いですか?
A:耳鳴りの相談は、耳鼻咽喉科で受け付けています。
また、精神科や心療内科でも相談できます。
Q:耳鳴りの音の種類によって、原因は異なりますか?
A:耳鳴りの音の種類によって、原因を特定することは難しいです。
しかし、一般的に、高い音の耳鳴りは内耳や聴神経の障害、低い音の耳鳴りは中耳の炎症や血管の異常が原因となることが多いと言われています。
脈打つような耳鳴りは、血管の異常が原因である可能性が高いです。
Q:耳鳴りとめまいが同時に起こる場合、どのような病気が考えられますか?
A:耳鳴りとめまいが同時に起こる場合、メニエール病、突発性難聴、聴神経腫瘍などが考えられます。
これらの病気は、早期発見・早期治療が大切です。
早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
Q:耳鳴りの原因となる薬はありますか?
A:アスピリン、利尿薬、抗がん剤など、一部の薬は耳鳴りを引き起こすことがあります。
薬を服用中に耳鳴りが始まった場合は、医師や薬剤師に相談してください。
Q:耳鳴りを改善するための生活習慣はありますか?
A:以下の生活習慣を心がけることで、耳鳴りを改善できる可能性があります。
- ストレスを溜め込まない
- 十分な睡眠をとる
- バランスの取れた食事を心がける
- 適度な運動をする
- 騒音を避ける
- イヤホンやヘッドホンの使用時間を短くする
- 禁煙、節酒
看護師として伝えたいこと:一人で悩まず、専門家の力を借りましょう
耳鳴りは、決して珍しい症状ではありません。
一人で悩まず、専門家の力を借りることで、症状を改善し、安心して生活できるようになります。
耳鳴りと向き合い、穏やかな毎日を取り戻しましょう。
出典
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 耳の症状:https://www.jibika.or.jp/modules/disease/index.php?content_id=15
- 慶応義塾大学病院 難聴、耳鳴り (hearing loss, tinnitus):https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000558.html