「最近、フケがひどくて、肩に落ちるのが気になる…」
「頭皮がかゆくて、赤くなっている…」
「顔に脂っぽいかさぶたのようなものができて、見た目も気になる…」
もしかしたら、それは脂漏性皮膚炎かもしれません。
脂漏性皮膚炎は、皮脂の分泌が多い部位に発症する皮膚炎で、フケやかゆみ、赤みなどの症状が現れます。
放置すると症状が悪化したり、慢性化したり、脱毛を引き起こすこともあるため、早めの対策が大切です。
この記事では、脂漏性皮膚炎の症状、原因、改善スキンケア、治療法について、看護師の視点から詳しく解説します。
脂漏性皮膚炎とは：皮脂の分泌が多い部位に発症する皮膚炎
脂漏性皮膚炎は、皮脂の分泌が多い部位、例えば頭皮、顔面、胸、背中などに発症する皮膚炎です。
皮膚の常在菌であるマラセチアが、皮脂を分解する際に生成する物質が炎症を引き起こすと考えられています。
乳児期と成人期に発症しやすく、症状や原因が異なります。
脂漏性皮膚炎の症状：フケ、かゆみ、赤みなど
脂漏性皮膚炎の主な症状は、以下の通りです。
- フケ：
- 細かい粉状のフケから、黄色っぽいベタベタしたフケまで、様々なタイプのフケが出る
- フケの量は、季節や体調によって変化する
- フケが肩に落ちて、黒い服が着られない
- 黄色っぽいベタベタしたフケが、髪にへばりつく
- かゆみ：
- 軽いかゆみから、我慢できないほどのかゆみまで、個人差が大きい
- かゆみで掻きむしると、症状が悪化することがある
- 夜間にかゆみがひどくなり、眠れない
- 赤み（紅斑）：
- 皮膚が赤くなり、炎症を起こしている
- 赤みは、フケやかゆみを伴うことが多い
- 炎症がひどくなると、皮膚がただれることもある
- 顔の赤みがひどく、化粧で隠せない
- その他：
- 皮膚の乾燥
- 皮膚のひび割れ
- 脂っぽいかさぶた
- 脱毛：炎症がひどくなると、脱毛を引き起こすことがある
- 精神的なストレス：見た目が気になる、かゆみがつらいなど、精神的なストレスになる
これらの症状は、個人差が大きく、すべてが現れるわけではありません。
また、症状の程度も、軽いものから日常生活に支障をきたすほどの重いものまで様々です。
脂漏性皮膚炎の原因：マラセチア、皮脂の過剰分泌、生活習慣の乱れなど
脂漏性皮膚炎の原因は、まだはっきりと解明されていませんが、以下の要因が複雑に関与して発症すると考えられています。
- マラセチア：
- 皮膚の常在菌であるマラセチアが、皮脂を分解する際に生成する物質が炎症を引き起こす
- マラセチアは、皮脂を栄養源として増殖するため、皮脂の分泌が多い部位で炎症が起こりやすい
- マラセチアの増殖を抑えるには、抗真菌薬が有効
- 皮脂の過剰分泌：
- ホルモンバランスの乱れ、ストレス、食生活の乱れなどが原因で、皮脂が過剰に分泌される
- 皮脂が多いと、マラセチアが増殖しやすくなる
- 思春期や妊娠中は、ホルモンバランスが乱れやすく、皮脂の分泌も増える
- 生活習慣の乱れ：
- 睡眠不足、偏った食生活、過度のストレスなどは、皮膚のバリア機能を低下させ、脂漏性皮膚炎を発症しやすくする
- 間違ったスキンケアも、症状を悪化させる原因となる
- 睡眠不足は、ターンオーバーを乱し、皮脂の分泌を増やす
- その他：
- 遺伝的要因：家族に脂漏性皮膚炎の人がいると、発症しやすい
- 免疫力の低下：免疫力が低下すると、マラセチアが増殖しやすくなる
- 一部の薬剤の副作用：ステロイド薬、抗うつ薬など
- 季節：高温多湿の季節は、皮脂の分泌が増え、症状が悪化しやすい
これらの要因が単独で、または複合的に作用して、脂漏性皮膚炎を発症すると考えられています。
脂漏性皮膚炎の治療法：薬物療法、スキンケア、生活習慣の改善など
脂漏性皮膚炎の治療法は、症状の程度や原因によって異なります。
- 薬物療法：
- 抗真菌薬：マラセチアの増殖を抑える
- 外用薬（塗り薬）、内服薬（飲み薬）がある
- 症状が軽い場合は、外用薬のみで改善することが多い
- ケトコナゾール、ミコナゾールなどの成分が含まれる
- ステロイド外用薬：炎症を抑える
- 短期間の使用にとどめる
- 長期間使用すると、副作用が出ることがある
- ヒドロコルチゾン、ベタメタゾンなどの成分が含まれる
- ビタミンD3外用薬：皮膚のターンオーバーを正常化する
- 症状が慢性化している場合に有効
- カルシポトリオールなどの成分が含まれる
- 抗真菌薬：マラセチアの増殖を抑える
- スキンケア：
- 刺激の少ないシャンプーや洗顔料を使用する
- アミノ酸系のシャンプー、低刺激性の洗顔料など
- コラージュフルフルネクストシャンプー、ミノン全身シャンプーなど
- 洗浄料は十分に泡立て、優しく洗う
- ゴシゴシ洗いは、皮膚を傷つけ、症状を悪化させる
- 洗浄後は、保湿剤でしっかりと保湿する
- セラミド、ヒアルロン酸などの成分が含まれる保湿剤がおすすめ
- キュレル、カルテHDなど
- 爪を短く切っておく（掻きむしりを防ぐため）
- 刺激の少ないシャンプーや洗顔料を使用する
- 生活習慣の改善：
- 睡眠時間を十分に確保する：7～8時間の睡眠が理想
- バランスの取れた食生活を心がける：ビタミンB群、亜鉛などを積極的に摂取する
- ストレスを溜め込まない：適度な運動、趣味などでストレスを発散する
- 適度な運動をする：ウォーキング、ジョギングなど
- 禁煙、禁酒：タバコ、アルコールは皮膚のバリア機能を低下させる
これらの治療法を組み合わせることで、症状の改善や再発予防を目指します。
脂漏性皮膚炎の改善スキンケア：刺激の少ない洗浄料と保湿剤が重要
脂漏性皮膚炎の改善スキンケアは、刺激の少ない洗浄料と保湿剤を使用することが重要です。
- 洗浄料：
- アミノ酸系のシャンプーや洗顔料など、低刺激性のものを選ぶ
- 泡立ちが良く、優しく洗えるものがおすすめ
- コラージュフルフルネクストシャンプー、ミノン全身シャンプーなど
- 洗浄料は十分に泡立て、指の腹で優しく洗う
- ゴシゴシ洗いは、皮膚を傷つけ、症状を悪化させる
- 洗浄料が残らないように、しっかりと洗い流す
- 保湿剤：
- セラミド、ヒアルロン酸などの保湿成分が含まれるものがおすすめ
- 乳液、クリーム、ジェルなど、自分の肌質に合ったタイプを選ぶ
- キュレル、カルテHDなど
- 洗顔後や入浴後など、皮膚が乾燥しやすい時に塗る
- 乾燥が気になる場合は、こまめに塗る
- その他：
- 爪を短く切っておく：掻きむしりを防ぐ
- 紫外線対策：日焼け止め、帽子、日傘などで紫外線から肌を守る
- 刺激の少ないメイク：ミネラルファンデーションなど
これらのスキンケアを毎日続けることで、症状の改善や再発予防につながります。
脂漏性皮膚炎のQ&A
Q：脂漏性皮膚炎は、放置するとどうなりますか？
A：脂漏性皮膚炎を放置すると、以下のような状態になることがあります。
- 症状が悪化し、かゆみや赤みがひどくなる
- 慢性化し、治りにくくなる
- 脱毛を引き起こすことがある
- 精神的なストレスになる
- 感染症を引き起こすことがある
これらの状態になると、日常生活に支障をきたすだけでなく、治療にも時間がかかってしまいます。
早期に適切な治療を受けることが大切です。
Q：脂漏性皮膚炎は、自然に治りますか？
A：脂漏性皮膚炎は、自然に治ることもありますが、症状が長引いたり、悪化したりすることもあります。
特に、成人期の脂漏性皮膚炎は、慢性化しやすく、根気強い治療が必要です。
早期に適切な治療を受けることで、症状の改善を早め、再発のリスクを減らすことができます。
Q：脂漏性皮膚炎の治療期間は、どのくらいかかりますか？
A：脂漏性皮膚炎の治療期間は、症状の程度や治療への反応によって異なります。
軽症の場合は、数週間から数ヶ月で症状が改善することが多いです。
重症の場合は、数ヶ月から年単位で治療が必要になることもあります。
根気強く治療を続けることが大切です。
Q：脂漏性皮膚炎の治療費は、どのくらいかかりますか？
A：脂漏性皮膚炎の治療費は、治療法や医療機関によって異なります。
薬物療法の場合、1回の診察料と薬代で数千円程度です。
重症の場合は、検査や入院が必要になることもあります。
医療費助成制度を利用できる場合もありますので、医療機関や自治体にご相談ください。
Q：脂漏性皮膚炎の予防法はありますか？
A：脂漏性皮膚炎を完全に予防する方法はありませんが、以下のことに注意することで、発症リスクを下げることができる可能性があります。
- バランスの取れた食生活を心がける
- 睡眠時間を十分に確保する
- ストレスを溜め込まない
- 刺激の少ないシャンプーや洗顔料を使用する
- 正しいスキンケアを行う
- 紫外線対策をする
- 禁煙、禁酒
Q：脂漏性皮膚炎の相談は、何科に行けば良いですか？
A：脂漏性皮膚炎の相談は、皮膚科で受け付けています。
看護師として伝えたいこと：諦めずに根気強く治療を続けましょう
脂漏性皮膚炎は、症状が改善しても再発を繰り返すことがあります。
根気強く治療を続けることが大切です。
一人で悩まず、医療機関にご相談ください。
脂漏性皮膚炎と向き合い、より良い生活を送りましょう。
出典
- ひまわり医院（内科・皮膚科） 脂漏性皮膚炎の原因や薬・日常の治し方について：https://soujinkai.or.jp/himawariNaiHifu/seborrheic-dermatitis/
- 恩賜財団済生会：https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/dermatitis_seborrheica/
