「唾を飲み込むたびに、ガラスの破片が喉を通るような激しい痛みがある。」
「熱が39度以上出て、喉の奥が腫れている感じがする。」
「声が全く出なくなり、呼吸も苦しい。」
もしかしたら、それは咽頭炎かもしれません。
咽頭炎は、喉の奥にある咽頭という部分が炎症を起こした状態です。
風邪やインフルエンザなど、様々な原因で発症し、放置すると重症化することもあります。
この記事では、咽頭炎の原因、症状、治療法について、看護師の視点から詳しく解説します。
咽頭炎とは:喉の奥の粘膜が炎症を起こした状態
咽頭炎は、喉の奥にある咽頭という部分の粘膜が炎症を起こした状態です。
咽頭は、鼻や口から入った空気や食べ物の通り道であり、ウイルスや細菌に感染しやすい場所です。
そのため、咽頭炎は、風邪やインフルエンザなどの感染症によって引き起こされることが多いです。
咽頭炎の症状:喉の痛み、発熱、咳など
咽頭炎の主な症状は、以下の通りです。
- 喉の痛み:
- 唾を飲み込むたびに、ガラスの破片が喉を通るような激しい痛みがある。
- 喉の奥が焼け付くように痛い。
- 声がかすれて、ほとんど出ない。
- 発熱:
- 39度以上の高熱が出て、悪寒がする。
- 熱が38度前後で、倦怠感が強い。
- 熱が微熱程度で、長期間続く。
- 咳:
- 痰が絡む湿った咳が出る。
- 乾いた咳が止まらない。
- 咳がひどく、夜も眠れない。
- その他:
- 喉の奥が赤く腫れ上がり、白い膿が付着している。
- 首のリンパ節が腫れて、触ると痛い。
- 頭痛や関節痛、筋肉痛がひどい。
- 食欲がなく、水分も摂れない。
- 呼吸が苦しい。
これらの症状は、原因や個人差によって異なります。
また、咽頭炎の種類によっても症状が異なります。
咽頭炎の種類:急性咽頭炎、慢性咽頭炎、扁桃炎、喉頭炎など
咽頭炎は、症状の持続期間や炎症の部位によって、様々な種類に分けられます。
- 急性咽頭炎:
- 急激に発症し、1週間程度で治る。
- 原因は、ウイルスや細菌感染が多い。
- 慢性咽頭炎:
- 症状が3週間以上続く。
- 原因は、喫煙、飲酒、乾燥、アレルギーなど様々。
- 扁桃炎:
- 扁桃が炎症を起こした状態。
- 高熱や喉の激しい痛みを伴うことが多い。
- 喉頭炎:
- 喉頭が炎症を起こした状態。
- 声のかすれや呼吸困難を引き起こすことがある。
咽頭炎の原因:ウイルス、細菌、アレルギーなど
咽頭炎の主な原因は、以下の通りです。
- ウイルス感染:
- ライノウイルス:一般的な風邪の原因となるウイルス。
- アデノウイルス:高熱や目の充血、下痢などを伴うことがある。
- インフルエンザウイルス:高熱や全身の倦怠感が強い。
- RSウイルス:乳幼児に重症化することがある。
- コロナウイルス:発熱や咳、味覚・嗅覚障害などを伴うことがある。
- 細菌感染:
- A群溶血性レンサ球菌:放置するとリウマチ熱や急性糸球体腎炎を引き起こすことがある。
- 肺炎球菌:高齢者や免疫力が低下している人に重症化することがある。
- インフルエンザ菌:中耳炎や副鼻腔炎を合併することがある。
- アレルギー:
- 花粉:季節性のアレルギー性鼻炎を伴うことが多い。
- ハウスダスト:一年を通して症状が現れることがある。
- ペットの毛:ペットを飼っている人に多い。
- その他:
- 喫煙:喉の粘膜を刺激し、慢性的な炎症を引き起こす。
- 飲酒:喉の粘膜を刺激し、炎症を悪化させる。
- 乾燥:喉の粘膜が乾燥すると、ウイルスや細菌に感染しやすくなる。
- 大声の出し過ぎ:喉の粘膜を傷つけ、炎症を引き起こす。
- 胃食道逆流症:胃酸が逆流し、喉の粘膜を刺激する。
これらの原因が複雑に関与している場合もあります。
咽頭炎の治療法:原因に合わせた治療、安静、水分補給など
咽頭炎の治療法は、原因や症状によって異なります。
- 原因に合わせた治療:
- ウイルス感染の場合:安静、水分補給、症状を和らげる薬(解熱鎮痛剤、鎮咳去痰薬など)。
- 細菌感染の場合:抗菌薬(ペニシリン系、セフェム系など)。
- アレルギーの場合:抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬、ステロイド薬など)。
- 安静:
- 十分な睡眠と休養をとり、体力の回復を促す。
- 無理をせず、静かに過ごす。
- 水分補給:
- こまめに水分を摂取し、喉の乾燥を防ぐ。
- 冷たい飲み物や刺激の少ない飲み物を選ぶ。
- その他:
- 加湿器を使用し、部屋の湿度を適切に保つ。
- うがい薬を使用し、喉を清潔に保つ。
- 禁煙、禁酒を徹底する。
- 喉を温める(蒸しタオル、温かい飲み物など)。
- 喉に優しい食べ物を選ぶ(おかゆ、うどん、プリンなど)。
治療期間は、原因や症状によって異なります。
咽頭炎に関するQ&A
Q:咽頭炎は、放置するとどうなりますか?
A:咽頭炎を放置すると、以下のような合併症を引き起こすことがあります。
- 扁桃周囲膿瘍:扁桃の周りに膿が溜まり、激しい痛みや高熱を引き起こす。
- 喉頭蓋炎:喉頭の入り口にある喉頭蓋が腫れ上がり、呼吸困難を引き起こすことがある。
- 敗血症:細菌が血液に入り込み、全身に感染が広がる。
- リウマチ熱:A群溶血性レンサ球菌感染後、数週間後に発症することがある。
- 急性糸球体腎炎:A群溶血性レンサ球菌感染後、数週間後に発症することがある。
特に、A群溶血性レンサ球菌による咽頭炎は、これらの合併症を引き起こすリスクが高いです。
喉の痛みがひどい場合や、高熱が出た場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
Q:咽頭炎は、人にうつりますか?
A:咽頭炎の原因がウイルスや細菌の場合、人にうつる可能性があります。
特に、発症後数日間は感染力が強いと言われています。
以下のことに注意して、感染拡大を防ぎましょう。
- マスクを着用する。
- 手洗い、うがいを徹底する。
- タオルや食器を共有しない。
- 人混みを避ける。
- 十分な換気を行う。
Q:咽頭炎の治療期間は、どのくらいかかりますか?
A:咽頭炎の治療期間は、原因や症状によって異なります。
急性咽頭炎の場合、1週間程度で治ることが多いです。
慢性咽頭炎の場合、数週間から数ヶ月単位で治療が必要になることもあります。
細菌感染による咽頭炎の場合、抗菌薬を服用し、1週間から10日程度で症状が改善することが多いです。
Q:咽頭炎の治療費は、どのくらいかかりますか?
A:咽頭炎の治療費は、治療法や医療機関によって異なります。
一般的な風邪による咽頭炎の場合、診察料と薬代で数千円程度です。
細菌感染による咽頭炎の場合、抗菌薬の投与が必要になるため、もう少し費用がかかることがあります。
扁桃周囲膿瘍や喉頭蓋炎など、重症化した場合は、入院治療が必要になるため、さらに費用がかかります。
Q:咽頭炎の予防法はありますか?
A:咽頭炎を完全に予防する方法はありませんが、以下のことに注意することで、発症リスクを下げることができる可能性があります。
- 手洗い、うがいを徹底する。
- マスクを着用する。
- 十分な睡眠と休養をとる。
- バランスの取れた食事を心がける。
- 部屋の湿度を適切に保つ。
- 禁煙、禁酒。
- 人混みを避ける。
- 予防接種を受ける(インフルエンザ、肺炎球菌など)。
Q:咽頭炎の相談は、何科に行けば良いですか?
A:咽頭炎の相談は、耳鼻咽喉科で受け付けています。
内科や小児科でも相談できます。
Q:咽頭炎の時に、市販薬を使用しても良いですか?
A:咽頭炎の症状を和らげるために、市販の鎮痛薬やうがい薬を使用しても良い場合があります。
しかし、市販薬はあくまで対症療法であり、原因を治療するものではありません。
症状が改善しない場合や、悪化する場合は、医療機関を受診しましょう。
また、市販薬を使用する際は、薬剤師に相談し、用法用量を守って使用しましょう。
Q:咽頭炎の時に、食事で気をつけることはありますか?
A:咽頭炎の時は、喉に優しい食事を心がけましょう。
- 柔らかく、刺激の少ない食べ物を選ぶ(おかゆ、うどん、プリンなど)。
- 冷たいものや温かいものを摂る(冷たいアイスクリームや温かいスープなど)。
- 香辛料やアルコールなど、刺激の強いものは避ける。
- 水分をこまめに摂り、喉の乾燥を防ぐ。
Q:咽頭炎の時に、仕事や学校は休むべきですか?
A:咽頭炎の原因や症状によって異なります。
ウイルス感染による咽頭炎の場合、人にうつる可能性があるため、症状が落ち着くまで休むことをお勧めします。
細菌感染による咽頭炎の場合、抗菌薬を服用していれば、症状が落ち着けば仕事や学校に行っても良い場合があります。
しかし、無理をすると症状が悪化したり、長引いたりすることがあります。
医師に相談し、指示に従いましょう。
看護師として伝えたいこと:喉の痛み、我慢しないで!早めの受診と適切なケアで快適な毎日を
咽頭炎は、放置すると重症化することもあります。
喉の痛みや発熱などの症状がある場合は、我慢せずに早めに医療機関を受診しましょう。
また、医師の指示に従い、適切なケアを行うことで、症状を早く改善することができます。
咽頭炎と向き合い、快適な毎日を取り戻しましょう。
出典
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 耳鼻咽喉科・頭頸部外科が扱う代表的な病気:https://www.jibika.or.jp/modules/disease/index.php?content_id=22
- 日本病巣疾患研究会 慢性上咽頭炎:https://jfir.jp/chronic-epipharyngitis/