「最近、なんだか手がピクピクする…歳のせいかな?」
以前より、動き出しに時間がかかるようになった気がする…」
もしあなたが、このような体の変化を感じているなら、それは単なる加齢現象ではないかもしれません。
パーキンソン病は、ゆっくりと進行する神経の病気ですが、早期に気づき、適切な対応をとることで、症状の進行を緩やかにし、自分らしい生活を送ることができます。
この記事では、パーキンソン病の初期症状から進行、治療法、そして日常生活で気をつけることまで、看護師の視点から、あなたの疑問に寄り添いながら丁寧に解説します。
知っておきたいパーキンソン病:脳からの静かなサイン
パーキンソン病(Parkinson’s disease)は、脳の奥深くにある「黒質(こくしつ)」という部分の神経細胞が徐々に減っていくことで、スムーズな運動をコントロールする「ドーパミン」という物質が不足し、様々な運動症状が現れる病気です。
進行はゆっくりですが、日常生活に少しずつ影響を与えていきます。
見逃さないで!パーキンソン病の初期症状と進行
パーキンソン病の初期には、以下のような症状が現れることがあります。
- 静かに忍び寄る震え:振戦(しんせん)
- 安静にしている時に、主に手足、特に指先が震えます。「丸薬を数えるような」と表現されることもあります。動かそうとすると一時的に治まることが多いです。
- 体の動きが鈍くなる:無動・寡動(むどう・かどう)
- 動作がゆっくりになる、動き出すまでに時間がかかる、瞬きの回数が減る、表情が乏しくなる(仮面様顔貌)、声が小さくなるなどが見られます。
- 筋肉がこわばる:筋固縮(きんこしゅく)
- 筋肉が硬くなり、関節を動かそうとすると抵抗を感じます。
- バランスが取りにくい:姿勢反射障害
- バランスを保つのが難しくなり、つまずきやすくなります。
病気が進行すると、歩行が小刻みになったり、すり足になったり、歩き出しの一歩が出にくくなる(すくみ足)、歩き出すと止まれなくなる(加速歩行)などの症状が現れることがあります。
また、便秘、睡眠障害、嗅覚障害、抑うつなどの精神症状を伴うこともあります。
症状の現れ方や進行のスピードは人それぞれ異なります。
なぜ?パーキンソン病の原因を探る
パーキンソン病の根本的な原因はまだ特定されていませんが、以下の要因が関わっていると考えられています。
- 黒質の神経細胞が徐々に減少することによるドーパミン不足
- 遺伝的な要因
- 環境要因
- 酸化ストレス
- 異常なタンパク質の蓄積
これらの要因が複雑に絡み合って、神経細胞の変性と脱落を引き起こすと考えられています。
今できること:パーキンソン病の治療法
現在のところ、パーキンソン病を完全に治す治療法はありませんが、症状を和らげ、進行を遅らせるための様々な治療法があります。
- 薬で症状をコントロール:薬物療法
- 不足したドーパミンを補う薬(L-ドパ製剤)、ドーパミンの働きを助ける薬(ドーパミンアゴニスト)、その他の症状を和らげる薬などが用いられます。薬の種類や量は、患者さんの状態に合わせて医師がに調整します。自己判断で薬の量を変更したり、中止したりしてはいけません。
- 体を動かす:リハビリテーション
- 理学療法(運動療法)、作業療法、言語療法などが行われ、筋力や柔軟性、バランス能力、日常生活動作、コミュニケーション能力の維持・改善を目指します。自宅でできる運動もありますが、専門家の指導を受けることが効果的です。
- 手術という選択肢:脳深部刺激療法(DBS)
- 薬の効果が十分に得られない場合などに、脳の特定の部位に電極を埋め込み、電気刺激によって症状を緩和させる手術が検討されることがあります。
治療は、患者さんの症状や進行度合いに合わせて、薬物療法、リハビリテーション、手術療法などを組み合わせながら行われます。
もしかして?と思ったら:神経内科を受診しましょう
もし、記事で述べたような症状に心当たりがある場合は、自己判断せずに、まずは神経内科を受診してください。
専門医による正確な診断と、適切な治療を受けることが、病気の進行を緩やかにし、より質の高い生活を送るための大事なステップです。
パーキンソン病Q&A
Q:パーキンソン病は、早期に発見できますか?
A:初期症状は、加齢による変化と区別しにくいこともあり、早期発見が難しい場合があります。
しかし、手の震え、動作の遅さ、筋肉のこわばりなどが気になる場合は、早めに神経内科を受診し、専門医に相談することをおすすめします。
Q:パーキンソン病と診断されたら、仕事は続けられますか?
A:パーキンソン病の進行度合いや、仕事内容によって異なります。
初期であれば、工夫次第で仕事を続けられる方も多くいます。
医師や作業療法士と相談しながら、作業環境の調整や福祉サービスの利用などを検討することも可能です。
Q:パーキンソン病の患者さんの食事で気をつけることはありますか?
A:バランスの取れた食事を健康的に摂ることが基本です。
便秘になりやすいので、食物繊維を積極的に摂取しましょう。
嚥下障害がある場合は、食べやすいように食材を工夫したり、姿勢に注意したりする必要があります。
医師や管理栄養士に相談すると良いでしょう。
Q:パーキンソン病の患者さんとコミュニケーションをとる上で、大切なことは何ですか?
A:患者さんのペースに合わせてゆっくりと話しかけ、聞き取りやすいように工夫することが大切です。表情が乏しくても、感情がないわけではありません。優しい態度で接することが重要です。
Q:パーキンソン病の進行を遅らせるために、自分でできることはありますか?
A:適度な運動やリハビリテーションを継続すること、バランスの取れた食事を心がけること、ストレスを溜めないようにすることなどが大切です。 薬を医師の指示通りに服用することも非常に重要です。
看護師として伝えたいこと:パーキンソン病は、決して絶望的な病気ではありません。
パーキンソン病と診断され、戸惑いや不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、適切な医療とサポートがあれば、自分らしく生活していくことは十分に可能です。
どんな些細なことでも構いませんので、気になったら遠慮なく医療機関にご相談ください。
出典
- 日本神経学会 (疾患・用語編) パーキンソン病|神経内科の主な病気:https://www.neurology-jp.org/public/disease/parkinson_detail.html
- 難病情報センター パーキンソン病(指定難病6):https://www.nanbyou.or.jp/entry/169