「最近、なんだか体調が不安定…急にカーッと熱くなる」
「理由もなくイライラしたり、憂うつになったり…」
「もしかして、歳のせい?」
そう感じているのは、あなただけではありません。
更年期障害は、女性だけの問題ではないのです。
ホルモンバランスの変化は、私たちの心と体に様々なサインを送ります。
「まさか自分が?」と思わずに、更年期障害のリアルを知り、後悔しないための第一歩を踏み出してみませんか?
この記事では、女性はもちろん、男性にも起こりうる更年期障害の症状、原因、そしてつらい時期を乗り越えるための具体的な対策と治療法を、看護師の視点から、あなたの疑問や不安に寄り添いながら、丁寧に解説します。
「女性だけの悩み」じゃない!更年期とは、体と心の変化期
女性の更年期:閉経を挟んだ約10年間
女性の体は、40歳代から徐々に卵巣の機能が低下し、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が減少していきます。
この変化が起こる45歳頃から閉経を迎える55歳頃までの約10年間を「更年期」と呼びます。
この時期に現れる様々な心身の不調が、一般的に「更年期障害」として知られています。
男性の更年期:加齢とともに訪れる変化
一方、男性の体でも、加齢とともに男性ホルモン(テストステロン)の分泌量が徐々に低下していきます。
女性のような明確な閉経はありませんが、このホルモンバランスの変化が、性機能の低下だけでなく、疲労感、気分の落ち込みなど、様々な症状を引き起こすことがあります。
これが、男性の更年期、いわゆる「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)」と呼ばれる状態です。
ホルモンバランスの乱れが引き起こす、様々なサイン
私たちの体は、女性ホルモン(エストロゲン)や男性ホルモン(テストステロン)といったホルモンによって、様々な機能が調整されています。
これらのホルモンバランスが乱れることで、心身に様々なサインが現れます。
女性ホルモン(エストロゲン)の主な働き:
- 肌のハリや潤いを保つ
- 女性らしい体つきを維持する
- 月経周期を調整する
- 骨を丈夫にする
- コレステロール値を調整する
- 自律神経を安定させる
男性ホルモン(テストステロン)の主な働き:
- 筋肉や骨格を維持する
- 精子の生成を促す
- 性欲を高める
- 気力や活力を維持する
これらのホルモンが減少することで、体に様々な変化が現れるのが、更年期障害なのです。
女性の更年期、こんな症状に「まさか」と思わないで
女性の更年期には、実に様々な症状が現れます。
もしかしたら、あなたが感じている不調も、更年期障害のサインかもしれません。
- ホットフラッシュ: 急に顔がカーッと熱くなり、汗が止まらなくなる
- 発汗: 特に夜間に大量の汗をかく
- 動悸・息切れ
- めまい・ふらつき
- 不眠
- イライラ・不安感
- 気分の落ち込み(憂うつ)
- 頭痛
- 肩こり・腰痛
- 疲労感・倦怠感
- 肌の乾燥・かゆみ
- 膣の乾燥・性交痛
- 頻尿・尿漏れ
これらの症状は、一つだけが現れることもあれば、いくつか重なって現れることもあります。
男性にもある!「年のせい」だけじゃない男性更年期のサイン
男性の更年期(LOH症候群)の症状は、女性ほど明確ではありませんが、以下のようなサインが見られることがあります。
- 性欲減退
- 勃起不全(ED)
- 疲労感・倦怠感
- 気力・意欲の低下
- イライラ
- 集中力・記憶力の低下
- 不眠
- 筋肉量の減少
- 骨密度の低下
これらの症状は、加齢による変化と混同されやすいですが、「年のせいかな?」と放置せずに、気になる症状があれば専門医に相談してみることが大切です。
ホルモンバランスの乱れ、どうして起こる?主な原因
更年期障害の主な原因は、女性の場合は卵巣機能の低下による女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少、男性の場合は加齢に伴う男性ホルモン(テストステロン)の緩やかな低下です。
ホルモンバランスが急激に変化することで、自律神経が乱れ、心身に様々な不調が現れると考えられています。
また、ストレス、生活習慣、個人の性格なども、更年期症状の現れ方や程度に影響を与えることがあります。
諦めないで!つらい症状を和らげるための対策
更年期障害の症状を和らげるためには、セルフケアと医療機関での治療を組み合わせることが大切です。
自分でできること:
- バランスの取れた食事: 大豆製品、乳製品、緑黄色野菜などを積極的に摂り、バランスの良い食事を心がけましょう。
- 質の高い睡眠: 規則正しい睡眠時間を確保し、寝室の環境を整えましょう。
- 適度な運動: ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で体を動かす習慣をつけましょう。
- リラックスできる時間を持つ: 趣味を楽しんだり、アロマテラピーなどを試したりして、心身をリラックスさせましょう。
- ストレスを溜め込まない: 悩みや不安を誰かに相談したり、気分転換になるような方法を見つけましょう。
医療機関での治療:
- ホルモン補充療法(HRT): 女性ホルモンを補充することで、症状の改善を目指します。
- 漢方療法: 体全体のバランスを整え、体質に合った漢方薬で症状を和らげます。
- 薬物療法: 症状に応じて、抗うつ薬や自律神経調整薬などが用いられることがあります。
- 心理療法: 精神的な症状が強い場合に、カウンセリングなどが行われます。
「もしかして?」と思ったら、まずは相談を
更年期障害の症状は、人によって様々です。
「こんなことで病院に行っても良いのかな?」と悩まずに、気になる症状があれば、まずは婦人科や泌尿器科、または更年期外来などを訪ねて相談してみましょう。
専門医が、あなたの症状に合わせた適切なアドバイスや治療法を提案してくれます。
更年期障害Q&A
Q:更年期障害の症状は、いつ頃から始まりますか?
A:女性の場合、一般的には40代後半から50代前半にかけて症状が現れ始めることが多いですが、早い方では40代前半から症状を感じることもあります。
男性の場合は、加齢とともに徐々に男性ホルモンが低下していくため、症状が明確にいつから始まったかを特定しにくいこともあります。
40代以降で体調の変化を感じ始めたら、更年期障害の可能性も考慮してみると良いでしょう。
Q:更年期障害の検査は、どのように行うのですか?
A:女性の場合は、問診や内診、血液検査で女性ホルモンの値を測定することがあります。
男性の場合は、血液検査で男性ホルモンの値を測定することが一般的です。
その他、必要に応じて甲状腺機能検査や骨密度検査などが行われることもあります。
自己判断せずに、医療機関を受診して医師の指示に従いましょう。
Q:更年期障害の治療にかかる期間は、どのくらいですか?
A:治療期間は、症状の程度や治療法によって個人差が大きいです。
ホルモン補充療法や漢方療法は、数ヶ月から数年単位で継続することがあります。
大切なのは、焦らずに、医師と相談しながら自分に合った治療法を見つけ、根気強く続けていくことです。
症状が改善してきたら、医師と相談しながら徐々に治療を終了していくことも可能です。
Q:更年期障害の症状を和らげるために、家族ができることはありますか?
A:更年期障害の症状は、本人にとって辛いものです。
家族ができることとして、まずは症状を理解し、寄り添う姿勢が大切です。
家事や育児を分担したり、話を聞いてあげたり、リラックスできる時間を作ってあげたりするなど、できる範囲でサポートしてあげましょう。
症状がひどい場合は、医療機関への受診を勧めることも大切です。
Q:更年期障害は、放置するとどうなりますか?
A:更年期障害の症状を放置すると、日常生活に支障をきたしたり、精神的な負担が大きくなったりすることがあります。
また、女性ホルモンの減少は、骨粗鬆症や動脈硬化のリスクを高める可能性もあります。
我慢せずに、医療機関に相談し、適切な治療やアドバイスを受けることが大切です。
看護師として伝えたいこと:更年期は、新たな自分と向き合う大切な時期です。一人で悩まず、私たちと一緒に乗り越えましょう
更年期は、女性にとっても男性にとっても、心身に大きな変化が訪れる時期です。
戸惑いや不安を感じることもあるかもしれませんが、決して一人で悩まないでください。
私たちは、あなたの体の変化、心の揺れ動きに寄り添い、共にこの時期を乗り越えていくためのサポートをさせていただきます。どんな些細なことでも構いませんので、気になる症状があれば、遠慮なく私たち医療者に相談してください。
出典
- 日本産科婦人科学会 更年期障害:https://www.jsog.or.jp/citizen/5717/
- 日本内分泌学会 男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群):https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=71