「なんだか声がガラガラする…」
「喉が痛くて、咳も止まらない。熱っぽい気もする…」
「これって、いつもの風邪かな?でも、なんだかいつもと違うような…放置すると危ない?」
もしかして、あなたはそんな不安を感じながら、つらい喉の症状に悩んでいませんか?
喉は、呼吸をするための空気の通り道であり、声を出すための大切な器官でもあります。
この喉に炎症が起こる喉頭炎は、声がれや咳といった一般的な風邪の症状と似ているため、安易に自己判断して放置してしまう方も少なくありません。
しかし、喉頭炎を放置すると、症状が悪化し、呼吸困難などの重篤な状態を引き起こす可能性もあるのです。
この記事では、喉頭炎の真実を明らかにし、その原因、風邪との違い、見逃してはいけない危険なサイン、そして今すぐできる即効対処法、市販薬の選び方まで、看護師の視点から詳しく解説します。
喉頭炎とは:喉の奥で起こる炎症、放置すると呼吸困難のリスクも
喉頭炎(こうとうえん)とは、喉頭という、声帯を含む器官に炎症が起こる病気の総称です。
喉頭は、気管の入り口に位置し、呼吸と発声に不可欠な役割を担っています。
炎症によって喉頭の粘膜が腫れたり、声帯の動きが悪くなったりすることで、声がれや声が出にくくなるなどの症状が現れます。
さらに、炎症が進行すると、空気の通り道が狭くなり、呼吸困難を引き起こす危険性もあるため、決して軽視できない病気です。
ただの風邪と違う?喉頭炎の症状:声がれ、咳、喉の痛み、呼吸困難に注意
喉頭炎の主な症状は、以下の通りです。風邪と似ている症状もありますが、注意すべき点があります。
- 声がれ(嗄声):
- 声がかすれる、しわがれる
- 声が出しにくい、声量が小さくなる
- 声が低くなる、裏返る
- しゃがれ声が続く
- 咳:
- 乾いた咳(空咳)
- 痰が絡む咳
- 咳が止まらない、連続して出る
- 夜間や明け方に咳が悪化する
- 犬が吠えるような咳(クループ症候群の場合)
- 喉の痛み:
- 喉の奥がヒリヒリする、ズキズキ痛む
- 飲み込む時に痛む(嚥下痛)
- 喉の異物感、つかえる感じ
- その他の症状(風邪と共通することも):
- 発熱(微熱から高熱まで)
- 鼻水、鼻詰まり
- 痰(黄色や緑色の場合は細菌感染の可能性)
- 頭痛
- 全身倦怠感
- 関節痛、筋肉痛
- 首のリンパ節の腫れ、痛み
特に注意が必要な症状:
- 呼吸困難:息苦しい、ゼーゼーする、呼吸が速くて浅い
- 喘鳴(ぜんめい):呼吸をする時にヒューヒュー、ゼーゼーという音がする
- 激しい喉の痛みで唾液を飲み込むのもつらい
- 高熱が続く
- 意識が朦朧とする
これらの症状が現れた場合は、すぐに救急外来を受診してください。
喉頭炎の原因を徹底解剖:ウイルス、細菌、生活習慣まで
喉頭炎の主な原因は多岐にわたります。
- ウイルス感染:
- ライノウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルスなど、一般的な風邪のウイルスが最も多い原因です。
- 麻疹ウイルス、風疹ウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルスなども喉頭炎を引き起こすことがあります。
- 細菌感染:
- A群β溶血性レンサ球菌(溶連菌)
- インフルエンザ菌
- 黄色ブドウ球菌
- 細菌感染は、ウイルス感染に続いて起こったり、免疫力が低下している場合に起こりやすくなります。
- 声の使いすぎ・誤った発声:
- 長時間のカラオケ、大声での会話や応援、無理な発声などが喉頭に負担をかけ、炎症を引き起こすことがあります。
- 刺激物:
- 喫煙(直接的な刺激と免疫力低下)
- アルコールの過剰摂取(粘膜の炎症)
- 乾燥した空気(粘膜の乾燥と防御機能低下)
- 刺激性のガスや化学物質の吸入
- 胃酸の逆流(胃食道逆流症による慢性的な刺激)
- アレルギー(アレルギー反応による炎症)
- その他:
- 全身性疾患(シェーグレン症候群などの膠原病)
- 喉頭腫瘍(まれな原因)
原因を特定することは、適切な治療と再発予防のために非常に重要です。
今すぐできる!喉頭炎の即効対処法:安静、保湿、痛みを和らげる工夫
喉頭炎の症状を和らげるために、今すぐできる即効対処法をご紹介します。
- 徹底的に安静にする:
- 声をできるだけ使わない(筆談やメッセージアプリを活用する)
- 仕事や学校を休み、体をゆっくり休ませる
- 睡眠を十分に取る
- 喉を徹底的に保湿する:
- 加湿器をフル活用する(室温50~60%を目安に)
- 温かい飲み物をこまめに飲む(水、白湯、麦茶、ハーブティーなど)
- マスクを着用する(呼気で喉が潤う)
- 蒸気吸入を試す(熱いお湯を入れたマグカップから立ち上る蒸気をゆっくり吸い込む。火傷に注意)
- 喉の痛みを和らげる:
- 市販ののど飴やトローチをゆっくり舐める(メントールや抗炎症成分配合のものがおすすめ)
- 温湿布を喉に当てる(血行を促進し、痛みを和らげる)
- 炎症を抑える作用のある食品を摂取する(ハチミツ、生姜など)
- うがいをこまめに行う:
- 生理食塩水(0.9%の食塩水)でのうがいが刺激が少なくおすすめ
- 市販のうがい薬を使用する場合は、用法・用量を守る
- 刺激物を徹底的に避ける:
- 禁煙、飲酒は絶対に避ける
- 香辛料の強い食べ物、熱すぎる食べ物は控える
- 乾燥した場所や汚れた空気の場所は避ける
これらの対処法を実践しても症状が改善しない場合は、自己判断せずに医療機関を受診してください。
薬剤師に聞く!喉頭炎に効く市販薬の選び方と注意点
喉頭炎の初期症状に対して、市販薬を使用することも一つの選択肢ですが、選び方には注意が必要です。必ず薬剤師に相談し、症状に合った薬を選びましょう。
- 声がれが主な症状の場合:
- 去痰作用のある成分(L-カルボシステイン、アンブロキソール塩酸塩など)配合の薬が有効な場合があります。
- 炎症を抑える成分(トラネキサム酸、グリチルリチン酸二カリウムなど)配合ののどスプレーやトローチも試してみる価値があります。
- 咳が主な症状の場合:
- 咳の種類(乾いた咳か、痰が絡む咳か)によって選ぶべき薬が異なります。
- 乾いた咳には、中枢性の咳止め(デキストロメトルファンなど)が有効な場合があります。
- 痰が絡む咳には、去痰作用のある成分(L-カルボシステイン、アンブロキソール塩酸塩など)配合の薬を選びましょう。
- 喉の痛みが主な症状の場合:
- 解熱鎮痛成分(アセトアミノフェン、イブプロフェンなど)配合の飲み薬や、抗炎症成分配合ののどスプレー、トローチなどが有効です。
- 総合感冒薬の注意点:
- 複数の症状に効果があるように思えますが、不要な成分が含まれている場合もあります。薬剤師に相談し、ご自身の症状に合った成分が含まれているか確認しましょう。
市販薬を使用する際の注意点:
- 服用前に必ず添付文書をよく読み、用法・用量を守って使用する。
- 症状が改善しない場合や悪化した場合、5~6日使用しても症状が良くならない場合は、使用を中止し、医療機関を受診する。
- 妊娠中や授乳中の方、持病のある方は、必ず医師または薬剤師に相談する。
- 小児や高齢者の場合は、特に慎重に使用し、薬剤師に相談する。
市販薬はあくまで一時的な症状緩和を目的としたものです。症状が続く場合は、根本的な原因を特定するために、必ず医療機関を受診してください。
喉頭炎のQ&A
Q:声がれが2週間以上続いています。放置しても大丈夫でしょうか?
A:いいえ、声がれが2週間以上続く場合は、放置せずに必ず耳鼻咽喉科を受診してください。
長引く声がれの原因は、単なる炎症だけでなく、声帯ポリープ、声帯結節、喉頭腫瘍など、他の病気が隠れている可能性があります。
特に、喫煙者の方や、声を使う職業の方は注意が必要です。
早期に適切な診断を受け、治療を開始することが、重症化を防ぎ、声の機能を守るために非常に重要です。
Q:喉頭炎の咳がひどくて、夜も眠れません。何か良い対策はありますか?
A:夜間の咳は本当につらいですね。少しでも楽に眠れるための対策をいくつかご紹介します。
- 寝室の湿度を適切に保つ:加湿器を使用するか、濡れたタオルを枕元に置くなどして、寝室の湿度を50~60%程度に保ちましょう。乾燥は咳を悪化させる要因になります。
- 寝る前に温かい飲み物を飲む:ハチミツを加えた白湯や、ノンカフェインの温かいハーブティーなどは、喉を潤し、咳を和らげる効果が期待できます。
- 枕を高くして寝る:上半身を少し高くすることで、気道が確保されやすくなり、咳が出にくくなることがあります。
- 寝る前の刺激物を避ける:寝る前の喫煙や飲酒、カフェインの摂取は避けましょう。
- 市販の夜用の咳止め薬を検討する:薬剤師に相談し、眠気を誘う成分が含まれている夜用の咳止め薬を使用するのも一つの方法です。ただし、自己判断での長期使用は避け、症状が改善しない場合は医療機関を受診してください。
これらの対策を試しても咳が改善せず、睡眠不足が続く場合は、遠慮なく医療機関を受診してください。
Q:喉頭炎は、周りの人にうつりますか?感染力はどのくらいですか?
A:喉頭炎の原因によって、人にうつる可能性と感染力は異なります。
ウイルスや細菌が原因の急性喉頭炎の場合は、咳やくしゃみなどの飛沫感染や、ウイルスが付着した手で物に触れることによる接触感染で、周囲の人にうつる可能性があります。
特に、風邪のウイルスが原因の場合は感染力が強く、家庭内や職場などで集団感染を引き起こすこともあります。
感染を広げないためには、風邪やインフルエンザと同様の感染対策が重要です。
- 手洗いを徹底する
- 咳エチケットを守る(マスクを着用する、咳やくしゃみをする際は口や鼻を覆う)
- 共用物の消毒を心がける
- 体調が悪いときは外出を控える
一方、声の使いすぎや刺激物、アレルギーなどが原因の喉頭炎は、人にうつることはありません。
Q:喉頭炎を繰り返しやすいのですが、体質でしょうか?何か予防策はありますか?
A:喉頭炎を繰り返しやすいとのこと、お辛いですね。体質も関係する可能性はありますが、予防策を講じることで、発症頻度を減らすことができるかもしれません。
- 免疫力を高める生活習慣:バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動を心がけましょう。
- 喉の乾燥を防ぐ:加湿器の使用やこまめな水分補給を習慣にしましょう。
- 禁煙、受動喫煙を避ける:タバコの煙は喉の粘膜を傷つけ、炎症を起こしやすくします。
- 刺激物を避ける:アルコール、香辛料の強い食べ物、熱すぎる食べ物は控えめにしましょう。
- うがいを習慣にする:外出後や人混みにいた後は、うがいをして喉を清潔に保ちましょう。
- 適切な発声方法を身につける:声を使う職業の方は、専門家(ボイストレーナーなど)の指導を受けるのも有効です。
- 胃酸の逆流を防ぐ:胃食道逆流症がある場合は、医師の指示に従い適切な治療を受けましょう。
- アレルギー対策:アレルギーが原因の場合は、アレルゲンを避けるように心がけましょう。
これらの予防策を実践しても喉頭炎を繰り返す場合は、慢性喉頭炎の可能性や、他の病気が隠れている可能性も考えられますので、耳鼻咽喉科を受診して相談してください。
Q:喉頭炎の相談は、何科を受診するのが適切ですか?
A:喉の痛み、声がれ、咳などの症状がある場合は、まず耳鼻咽喉科を受診してください。
耳鼻咽喉科は、喉の専門家であり、喉頭の状態を直接観察したり、必要な検査を行ったりして、喉頭炎の原因を特定し、適切な治療やアドバイスを受けることができます。
症状が重い場合や、呼吸困難がある場合は、迷わず救急外来を受診してください。
看護師として伝えたいこと:つらい喉の症状は、放置せずに専門医に相談してください
声がれや咳、喉の痛みは、日常生活に大きな影響を与えます。
「そのうち治るだろう」と安易に考えずに、症状が長引く場合や悪化する場合は、遠慮せずに医療機関を受診してください。
早期に適切な診断と治療を受けることで、症状の緩和と早期回復につながります。
出典
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 口・のどの症状:https://www.jibika.or.jp/modules/disease/index.php?content_id=17
- 龍角散 急性喉頭炎:https://www.ryukakusan.co.jp/nodolabo/disease/22