「最近、朝起きたら片方の手の力が入りにくく、ペットボトルの蓋が開けられなかった。」
「言葉が少しだけどもつれることがあるけど、すぐに治まるから気にしていなかった。」
「健康診断で、無症候性脳梗塞と言われたけど、特に症状がないから放置している。」
もしかしたら、それはラクナ梗塞かもしれません。
ラクナ梗塞は、脳の細い血管が詰まることで起こる脳梗塞の一種で、症状が軽い場合や無症状の場合もあるため、「かくれ脳梗塞」とも呼ばれています。
しかし、放置すると再発や他の脳卒中を引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。
この記事では、ラクナ梗塞の原因、症状、治療法について、看護師の視点から詳しく解説します。
ラクナ梗塞とは:脳の細い血管が詰まる脳梗塞
ラクナ梗塞は、脳の深部にある細い血管(穿通枝)が詰まることで起こる脳梗塞の一種です。
梗塞の範囲が小さいため、症状が軽い場合や、全く症状が現れない場合もあります。
しかし、ラクナ梗塞を放置すると、再発や他の脳卒中(脳出血、くも膜下出血など)を引き起こす可能性もあります。
ラクナ梗塞の症状:手足のしびれ、麻痺、言語障害など
ラクナ梗塞の主な症状は、以下の通りです。
- 手足のしびれや麻痺:
- 片側の手足や顔面がしびれたり、力が入らなくなったりする
- 朝起きたら、片方の手の力が入りにくく、ペットボトルの蓋が開けられなかった。
- 歩行時に、片方の足が思うように動かないことがある。
- 言語障害:
- ろれつが回らない、言葉が出にくいなど
- 言葉が少しだけどもつれることがある。
- 言いたい言葉が出てこないことがある。
- 運動障害:
- 歩行困難、ふらつきなど
- バランスが取りにくく、転倒しやすくなる。
- 細かい作業がしにくくなる。
- 感覚障害:
- 感覚が鈍くなる、触った感じがいつもと違うなど
- 熱さや冷たさを感じにくくなる。
- 痛みを感じにくくなる。
- その他:
- めまい、ふらつき
- 視野狭窄
- 認知機能の低下
これらの症状は、梗塞が起こった場所や大きさによって異なります。
また、ラクナ梗塞は、症状が一時的に現れてすぐに消える「一過性脳虚血発作(TIA)」を引き起こすこともあります。
TIAは、数分から数時間以内に症状が消失するため、見過ごされがちですが、ラクナ梗塞の前兆である可能性もあるため、注意が必要です。
ラクナ梗塞の原因:高血圧、糖尿病、動脈硬化など
ラクナ梗塞の主な原因は、以下の通りです。
- 高血圧:
- 高血圧が続くと、細い血管に負担がかかり、血管が詰まりやすくなります。
- 特に、早朝高血圧はラクナ梗塞のリスクを高めます。
- 糖尿病:
- 糖尿病は、血管を傷つけ、動脈硬化を進行させるため、ラクナ梗塞のリスクを高めます。
- 血糖コントロールが不良な場合、ラクナ梗塞のリスクはさらに高まります。
- 動脈硬化:
- 動脈硬化によって血管が狭くなると、血流が悪くなり、血管が詰まりやすくなります。
- 高脂血症や喫煙は、動脈硬化を進行させます。
- 喫煙:
- 喫煙は、血管を収縮させ、血栓を作りやすくするため、ラクナ梗塞のリスクを高めます。
- 受動喫煙もリスクを高めます。
- 高脂血症:
- 高脂血症は、動脈硬化を進行させるため、ラクナ梗塞のリスクを高めます。
- LDLコレステロールが高いほど、リスクは高まります。
- 加齢:
- 加齢に伴い、血管がもろくなり、血管が詰まりやすくなります。
- 特に、高齢者は脱水になりやすく、血液が固まりやすいため、注意が必要です。
- その他:
- 心房細動などの不整脈
- 睡眠時無呼吸症候群
- 肥満
- ストレス
これらの危険因子が複数重なると、ラクナ梗塞のリスクはさらに高まります。
ラクナ梗塞の治療法:薬物療法、リハビリテーションなど
ラクナ梗塞の主な治療法は、以下の通りです。
- 薬物療法:
- 抗血小板薬:
- 血栓ができるのを防ぎます。
- アスピリンやクロピドグレルなどが使用されます。
- 出血のリスクがあるため、医師の指示に従って服用する必要があります。
- 抗凝固薬:
- 血栓を溶かします。
- ワルファリンやダビガトランなどが使用されます。
- 出血のリスクがあるため、定期的な血液検査が必要です。
- 脳保護薬:
- 脳の神経細胞を保護します。
- エダラボンなどが使用されます。
- 発症後早期に使用することで、効果が期待できます。
- 降圧薬:
- 血圧をコントロールします。
- カルシウム拮抗薬やACE阻害薬などが使用されます。
- 目標血圧は、130/80mmHg未満です。
- 糖尿病治療薬:
- 血糖値をコントロールします。
- ビグアナイド薬やスルホニル尿素薬などが使用されます。
- 目標血糖値は、HbA1c 7.0%未満です。
- 高脂血症治療薬:
- コレステロール値をコントロールします。
- スタチンやエゼチミブなどが使用されます。
- 目標LDLコレステロール値は、120mg/dL未満です。
- 抗血小板薬:
- リハビリテーション:
- 麻痺や運動障害のリハビリテーション:
- 理学療法士や作業療法士が、マンツーマンでリハビリテーションを行います。
- 運動機能の回復や日常生活動作(ADL)の改善を目指します。
- リハビリテーション期間は、数週間から数ヶ月単位で行われることが多いです。
- 言語障害のリハビリテーション:
- 言語聴覚士が、マンツーマンでリハビリテーションを行います。
- 言語機能の回復やコミュニケーション能力の改善を目指します。
- リハビリテーション期間は、数週間から数ヶ月単位で行われることが多いです。
- 日常生活動作(ADL)の訓練:
- 日常生活に必要な動作(食事、排泄、入浴など)の訓練を行います。
- 自立した生活を送るためのサポートを行います。
- 麻痺や運動障害のリハビリテーション:
- 生活習慣の改善:
- 食事:
- 塩分や脂肪分の多い食事を控え、野菜や果物を積極的に摂りましょう。
- 1日の塩分摂取量は、6g未満に抑えましょう。
- 1日の野菜摂取量は、350g以上を目指しましょう。
- 魚や大豆製品を積極的に摂りましょう。
- 運動:
- ウォーキングや水泳などの有酸素運動を毎日30分以上行いましょう。
- 運動強度は、ややきついと感じる程度が目安です。
- 運動前後にストレッチを行いましょう。
- 禁煙:
- 禁煙は、ラクナ梗塞のリスクを大幅に下げます。
- 禁煙外来を受診するなど、専門家のサポートを受けましょう。
- 節酒:
- アルコールの過剰摂取は控えましょう。
- 1日のアルコール摂取量は、男性は純アルコールで20g以下、女性は10g以下にしましょう。
- ストレス解消:
- 趣味や運動などでストレスを解消しましょう。
- 十分な睡眠をとりましょう。
- 定期的な健康診断:
- 定期的に健康診断を受け、血圧や血糖値、コレステロール値などをチェックしましょう。
- 脳ドックも有効です。
- 食事:
治療法は、梗塞の大きさや症状、合併症の有無などによって異なります。
看護師として伝えたいこと:ラクナ梗塞は予防が大切です
ラクナ梗塞は、症状が軽い場合や無症状の場合もあるため、見過ごされがちです。
しかし、放置すると再発や他の脳卒中を引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。
生活習慣の改善や定期的な健康診断など、予防を心がけましょう。
ラクナ梗塞と向き合い、健康な毎日を取り戻しましょう。
出典
- 恩賜財団 済生会 ラクナ梗塞:https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/lacunar_infarction/
- NHK 命を守れ!脳の血管“SOS”「症状がない!?ラクナ梗塞」:https://www.nhk.jp/p/kyonokenko/ts/83KL2X1J32/episode/te/2J6293MNVM/