「最近、疲れやすい」
「体重が増加傾向にある」
「首が腫れている気がする」
もしかしたら、それは橋本病(慢性甲状腺炎)の症状かもしれません。
橋本病は、甲状腺に慢性的な炎症が起こる病気で、自己免疫疾患の一種です。
この記事では、橋本病の原因、症状、検査、治療法、そして日常生活での注意点について、看護師の視点から詳しく解説します。
橋本病とは:甲状腺の慢性炎症
橋本病(慢性甲状腺炎)とは、自己免疫の異常によって、自分の甲状腺を攻撃してしまう病気です。
その結果、甲状腺に慢性的な炎症が起こり、甲状腺ホルモンの分泌量が変化することがあります。
橋本病の種類:甲状腺機能の変化で分類
橋本病は、甲状腺機能の変化によって、以下のように分類されます。
- 甲状腺機能低下型:
- 甲状腺ホルモンの分泌量が低下するタイプです。
- 最も一般的なタイプです。
- 甲状腺機能亢進型:
- 一時的に甲状腺ホルモンの分泌量が増加することがあるタイプです。
- バセドウ病と間違えやすいことがあります。
- 無痛性甲状腺炎:
- 甲状腺の腫れや痛みがないタイプです。
- 産後に発症することがあります。
橋本病の患者数:女性に多い
橋本病は、女性に多くみられます。
30~40歳代の女性に多く、10人に1人が橋本病であるとも言われています。
橋本病の原因:自己免疫の異常、遺伝的要因も示唆
橋本病の原因は、完全には解明されていませんが、以下のような要因が関係していると考えられています。
- 自己免疫の異常:
- 免疫が自分の甲状腺を攻撃してしまうこと。
- 遺伝的要因:
- 家族に橋本病や他の自己免疫疾患の既往歴があること。
- その他:
- ヨウ素の過剰摂取、ストレス、出産なども関与していると考えられています。
橋本病の症状:多彩、甲状腺機能の変化による
橋本病の症状は、甲状腺機能の変化によって異なります。
- 甲状腺機能低下症の症状:
- 疲れやすい:
- 朝起きても疲れが取れない。
- 少し動いただけで疲れてしまう。
- 横になりたいと思うことが増えた。
- 体重増加:
- 食欲がないのに体重が増える。
- むくみやすい。
- 寒がり:
- 人より寒く感じる。
- 厚着をしても寒い。
- 便秘:
- 便が出にくい。
- お腹が張る。
- 皮膚の乾燥:
- 肌がかさかさする。
- かゆみがある。
- 脱毛:
- 髪の毛が抜けやすい。
- 眉毛が薄くなる。
- 月経不順:
- 生理が遅れる。
- 生理の量が多い。
- 疲れやすい:
- 甲状腺機能亢進症の症状:
- 動悸:
- ドキドキする。
- 脈が速い。
- 発汗:
- 汗をかきやすい。
- 暑がり。
- イライラ:
- 落ち着かない。
- 怒りっぽい。
- 体重減少:
- 食欲があるのに体重が減る。
- 手の震え:
- 手が震える。
- 字が書きにくい。
- 動悸:
橋本病の検査:血液検査、超音波検査
橋本病の検査には、以下のようなものがあります。
- 血液検査:
- 甲状腺ホルモン(FT3、FT4)や甲状腺刺激ホルモン(TSH)の値を測定します。
- 抗サイログロブリン抗体(TgAb)や抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)の値を測定します。
- 超音波検査:
- 甲状腺の大きさや形状、腫瘍の有無などを確認します。
- 超音波検査の流れ:
- 首にゼリーを塗ります。
- 超音波プローブを首にあて、甲状腺の画像を映し出します。
- 甲状腺の大きさや形状、腫瘍の有無などを確認します。
- 超音波検査の流れ:
- 甲状腺の大きさや形状、腫瘍の有無などを確認します。
橋本病の治療:甲状腺ホルモン補充療法
橋本病の治療は、甲状腺ホルモン補充療法が一般的です。
甲状腺ホルモン薬(レボチロキシン)を服用し、甲状腺ホルモンの値を正常に保ちます。
- レボチロキシン:
- 甲状腺ホルモン(T4)を補充する薬です。
- 1日1回、朝食前に服用します。
- 副作用はほとんどありませんが、まれに動悸や発汗などが起こることがあります。
橋本病の予防:原因不明、自己判断でのヨウ素摂取は控える
橋本病の原因は不明であり、有効な予防法は確立されていません。
自己判断でのヨウ素の摂取は控えましょう。
橋本病に関するQ&A
Q:橋本病は、必ず治療が必要ですか?
A: 橋本病は、甲状腺機能が正常であれば、無治療で経過観察となることが多いです。
しかし、甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症の症状がある場合は、治療が必要です。
Q:橋本病の治療期間はどのくらいですか?
A: 橋本病の治療は、甲状腺ホルモン補充療法が一般的で、治療期間は数ヶ月から数年に及ぶことがあります。
定期的な血液検査で甲状腺ホルモンの値を確認しながら、薬の量を調整します。
Q:橋本病の人は、妊娠・出産できますか?
A: 橋本病の人でも、甲状腺ホルモンの値が正常に保たれていれば、妊娠・出産は可能です。
しかし、甲状腺ホルモンの値が不安定な場合は、流産や早産のリスクが高くなります。
妊娠を希望する場合は、医師と相談し、適切な治療を受けましょう。
看護師として伝えたいこと:症状に気づいたら早めに受診を
橋本病は、症状がゆっくりと進行するため、気づきにくいことがあります。
「疲れやすい」「体重が増えた」「首が腫れている」
そんな症状があれば、我慢せずに医療機関を受診してください。
早期発見・早期治療で、症状の悪化を防ぎ、快適な生活を送りましょう。
出典