「階段を数段上がっただけで、心臓がドキドキして息が切れる。夜も動悸で目が覚めてしまう。」
「些細なことでイライラして、家族に当たってしまう。自分でもどうしていいか分からず、落ち込む毎日。」
「最近、目が大きく見えると言われる。もしかして、眼球が飛び出てきたのかも…。」
もしかしたら、それはバセドウ病のサインかもしれません。
バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気で、放置すると重症化することがあります。
この記事では、バセドウ病の原因、症状、検査、対策、そして治療法について、看護師の視点から詳しく解説します。
バセドウ病とは:甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気
バセドウ病とは、自己免疫疾患の一つで、甲状腺を刺激する自己抗体が作られることで、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。
甲状腺ホルモンは、全身の新陳代謝を調節する役割を担っています。
過剰に分泌されると、動悸、多汗、体重減少、イライラなどの症状が現れます。
バセドウ病の原因:自己免疫疾患、遺伝的要因、ストレスなどが考えられる
バセドウ病の主な原因は、以下の通りです。
- 自己免疫疾患:
- 免疫システムが誤って甲状腺を攻撃し、甲状腺ホルモンを過剰に分泌させます。
- 免疫システムは、本来、細菌やウイルスなどの異物から体を守る役割を担っています。
- しかし、自己免疫疾患では、免疫システムが自分の体を異物と認識し、攻撃してしまうのです。
- 遺伝的要因:
- 家族歴がある場合、発症リスクが高まる可能性があります。
- 特に、母親や姉妹にバセドウ病の方がいる場合、発症リスクが高いと言われています。
- ストレス:
- 精神的ストレスや肉体的ストレスが、発症のきっかけになることがあります。
- ストレスは、免疫システムに影響を与えると考えられています。
- その他:
- 喫煙、妊娠、出産、ヨウ素の過剰摂取なども、発症リスクを高める可能性があります。
- 喫煙は、バセドウ病眼症のリスクを高めることが知られています。
- 妊娠や出産は、ホルモンバランスの変化により、バセドウ病を発症しやすい時期です。
- ヨウ素は、甲状腺ホルモンの材料となるため、過剰摂取は甲状腺機能を亢進させることがあります。
バセドウ病の患者数:20~30代の女性に多い
バセドウ病は、20~30代の女性に多く見られます。
男女比は1:5程度で、女性の方が発症しやすい病気です。
バセドウ病の症状:動悸、多汗、体重減少、イライラなど
バセドウ病の主な症状は、以下の通りです。
- 動悸、頻脈:
- 階段を数段上がっただけで、心臓がドキドキして息が切れる。夜も動悸で目が覚めてしまう。
- 心臓がドキドキしたり、脈が速くなったりします。
- 安静時でも脈拍が100回/分を超えることがあります。
- 多汗、暑がり:
- 汗をかきやすくなったり、暑さを人一倍感じやすくなったりします。
- 夏場はもちろん、冬場でも汗をかくことがあります。
- 体重減少:
- 食欲が増しても体重が減少することがあります。
- 1ヶ月に数kg体重が減少することもあります。
- イライラ、不安感:
- 精神的に不安定になり、イライラしたり、不安になったりすることがあります。
- 集中力が低下したり、落ち着きがなくなったりすることもあります。
- 手の震え:
- 手が小刻みに震えることがあります。
- 細かい作業がしにくくなることがあります。
- 眼球突出:
- 眼球が前に突き出て、目が大きく見えることがあります。
- まぶたが腫れたり、目がゴロゴロしたりすることもあります。
- 甲状腺の腫れ:
- 首の前側にある甲状腺が腫れることがあります。
- 首が太くなったように見えることがあります。
- その他:
- 疲れやすい、睡眠障害、下痢、生理不順、脱毛、筋肉の脱力などの症状が現れることがあります。
- 症状の程度や現れ方は、個人差があります。
バセドウ病の検査:血液検査、超音波検査、アイソトープ検査など
バセドウ病の検査は、以下の方法で行われます。
- 血液検査:
- 甲状腺ホルモン(FT3、FT4)や甲状腺刺激ホルモン(TSH)の値を測定します。
- 自己抗体(TSH受容体抗体)の有無を調べます。
- 血液検査費用は、保険適用で3割負担の場合、3,000円~5,000円程度です。
- 超音波検査:
- 甲状腺の大きさや状態を観察します。
- 血流の状態を調べます。
- 超音波検査費用は、保険適用で3割負担の場合、3,000円~5,000円程度です。
- アイソトープ検査:
- 放射性ヨウ素を投与し、甲状腺への取り込み率を調べます。
- 甲状腺の機能を評価します。
- アイソトープ検査費用は、保険適用で3割負担の場合、5,000円~10,000円程度です。
- その他:
- 眼科検査:眼球突出や眼の症状を評価します。
- 心電図検査:心臓の状態を評価します。
バセドウ病の治療:薬物療法、放射性ヨウ素内用療法、手術など
バセドウ病の治療は、以下の方法があります。
- 薬物療法:
- 抗甲状腺薬を使用し、甲状腺ホルモンの分泌を抑えます。
- 治療の中心となる方法です。
- 使用される薬剤は、メルカゾール、プロパジールなどです。
- 投与方法は、内服薬です。
- 副作用は、発疹、かゆみ、肝機能障害、白血球減少などです。
- 副作用対策として、定期的な血液検査や肝機能検査が行われます。
- 治療期間は、1~2年程度が一般的です。
- 薬物療法費用は、使用する薬剤や投与量によって異なりますが、保険適用で3割負担の場合、1ヶ月あたり3,000円~5,000円程度です。
- 放射性ヨウ素内用療法:
- 放射性ヨウ素を内服し、甲状腺組織を破壊します。
- 甲状腺機能低下症になる可能性があります。
- 治療後、半年~1年程度は妊娠を避ける必要があります。
- 放射性ヨウ素内用療法費用は、使用する放射性ヨウ素の量によって異なりますが、保険適用で3割負担の場合、30,000円~50,000円程度です。
- 手術:
- 甲状腺の一部または全部を切除します。
- 薬物療法や放射性ヨウ素内用療法で効果が得られない場合や、甲状腺が大きい場合に行われます。
- 手術後、甲状腺機能低下症になる可能性があります。
- 手術費用は、手術方法や入院期間によって異なりますが、保険適用で3割負担の場合、10万円~30万円程度です。
- その他:
- バセドウ病眼症に対する治療:ステロイド薬、放射線療法、手術などが行われます。
- 心臓合併症に対する治療:β遮断薬、抗不整脈薬などが使用されます。
バセドウ病に関するQ&A
Q:バセドウ病は、自然に治りますか?
A:バセドウ病は、自然に治ることはほとんどありません。
適切な治療を受けないと、症状が悪化し、重症化することがあります。
自己判断せずに、医療機関を受診しましょう。
Q:バセドウ病の治療期間はどのくらいですか?
A:バセドウ病の治療期間は、治療方法や患者さんの状態によって異なります。
薬物療法の場合は、1~2年程度が一般的です。
放射性ヨウ素内用療法や手術の場合は、治療後も定期的な経過観察が必要です。
Q:バセドウ病の人は、日常生活でどのようなことに注意すれば良いですか?
A:バセドウ病の人は、以下のことに注意しましょう。
- ストレスを溜め込まないように、リラックスできる時間を作りましょう。
- 過労や睡眠不足を避け、規則正しい生活を送りましょう。
- バランスの取れた食事を心がけ、禁煙・節酒に努めましょう。
- 医師の指示に従い、薬をきちんと服用しましょう。
- 定期的に医療機関を受診し、経過観察を受けましょう。
看護師として伝えたいこと:早期発見・早期治療が大切
バセドウ病は、早期に発見し、適切な治療を行うことで、症状をコントロールし、自分らしい生活を送ることができます。
「ただの疲れだろう」と軽く考えず、気になる症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。
バセドウ病と向き合い、健康な生活を取り戻しましょう。
出典