「最近、みぞおちのあたりが痛む」「胸やけが続く」「食欲がない」
もしかして、それは胃潰瘍かもしれません。
胃潰瘍は、胃の粘膜が傷つき、潰瘍(ただれ)ができる病気です。
この記事では、胃潰瘍の原因、症状、種類、検査、治療法、そして日常生活でできる対策について、看護師の視点から詳しく解説します。
胃潰瘍とは:胃粘膜が傷つく病気
胃潰瘍とは、胃の粘膜が何らかの原因で傷つき、潰瘍(ただれ)ができる病気です。
健康な胃は、胃液の刺激から粘膜を守る粘液で覆われています。
しかし、ストレスやピロリ菌感染などによって粘膜が弱まると、胃酸によって粘膜が溶かされ、潰瘍ができてしまいます。
胃潰瘍の症状:みぞおちの痛み、胸やけ、胃もたれ
胃潰瘍の主な症状は、以下のとおりです。
- みぞおちの痛み: 食事中や食後、空腹時、特に夜間に痛むことが多い。
- 胸やけ: 胸のあたりが焼けるような感じ、締め付けられるような感じ。
- 胃もたれ: 胃の不快感、膨満感、吐き気。
- その他: 食欲不振、げっぷ、口臭、吐血(黒褐色の血)、黒色便(タール便)。
これらの症状は、空腹時や夜間に悪化することがあります。
胃潰瘍の種類:急性胃潰瘍と慢性胃潰瘍
胃潰瘍には、急性胃潰瘍と慢性胃潰瘍の2種類があります。
急性胃潰瘍
- 精神的なストレスやアルコールの飲み過ぎなどが原因で、突発的に起こります。
- 比較的早く治癒することが多いです。
慢性胃潰瘍
- ピロリ菌感染が主な原因です。
- 症状が慢性的に続き、再発しやすい傾向があります。
胃潰瘍の原因:ストレス、ピロリ菌、生活習慣
胃潰瘍の主な原因は、以下のとおりです。
- ストレス: 精神的なストレスは、自律神経のバランスを崩し、胃酸の分泌を促進する。また、胃粘膜の防御機能を低下させるため、胃潰瘍のリスクを高めます。
- ヘリコバクター・ピロリ菌感染: ピロリ菌は、胃粘膜に感染し、炎症を引き起こす細菌です。胃潰瘍の7割以上の原因がピロリ菌感染とされています。
- 生活習慣: 暴飲暴食、刺激の強い香辛料の摂取、喫煙、過度の飲酒、コーヒーの飲み過ぎなどは、胃粘膜を刺激し、胃潰瘍のリスクを高めます。
- 薬剤: 解熱鎮痛薬(NSAIDs)、ステロイド薬などは、胃粘膜を荒らす副作用があり、胃潰瘍の原因となることがあります。
胃潰瘍の検査:胃カメラ検査、ピロリ菌検査
胃潰瘍の診断には、胃カメラ検査(上部消化管内視鏡検査)が最も有効です。
胃カメラ検査では、食道、胃、十二指腸の粘膜を直接観察し、潰瘍の有無や状態を確認することができます。
また、組織の一部を採取して病理検査を行うこともあります。
ピロリ菌感染の有無を調べる検査としては、以下のものがあります。
- 尿素呼気試験: 検査薬を服用し、呼気中の二酸化炭素量を測定する検査です。
- 抗体測定: 血液検査でピロリ菌に対する抗体の有無を調べる検査です。
- 便中抗原検査: 便中のピロリ菌抗原を調べる検査です。
- 内視鏡検査(生検): 胃カメラ検査時に組織を採取し、ピロリ菌の有無を調べる検査です。
胃潰瘍の治療:薬物療法、生活習慣の改善、ピロリ菌除菌
胃潰瘍の治療は、薬物療法、生活習慣の改善、そしてピロリ菌除菌が中心となります。
薬物療法
症状を抑えるために、以下の薬が使用されます。
- 胃酸分泌抑制薬: 胃酸の分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬、H2受容体拮抗薬)
- 粘膜保護薬: 胃粘膜を保護する薬
- 制酸薬: 胃酸を中和する薬
- 消化管運動機能改善薬: 胃の運動機能を改善する薬
生活習慣の改善
- 食事療法:
- 刺激の強い香辛料、酸味の強いもの、カフェイン、アルコールを控える
- 消化の良いものを食べる(おかゆ、うどん、豆腐など)
- 規則正しい食生活を送る
- 食べ過ぎない
- その他:
- 禁煙
- ストレス解消
- 十分な睡眠
ピロリ菌除菌
ピロリ菌感染が確認された場合は、除菌治療を行います。
除菌治療は、通常、3種類の薬(2種類の抗菌薬と1種類の胃酸分泌抑制薬)を1週間服用します。
看護師として伝えたいこと:早期発見・早期治療で合併症を予防
胃潰瘍は、放置すると出血や穿孔(穴があく)などの合併症を引き起こすことがあります。
症状が続く場合は、自己判断せずに早めに医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けることが大切です。
また、生活習慣の改善は、胃潰瘍の予防や再発防止に役立ちます。食事や生活習慣を見直し、健康的な生活を心がけましょう。
出典
- 日本消化器病学会 消化性潰瘍:https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/kaiyou.html
- 慶應義塾大学病院 胃潰瘍と十二指腸潰瘍: https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000229.html