「仕事のプレゼンが1週間後にあるというだけで、毎日眠れないほど不安になる。」
「些細なことでイライラしてしまい、家族や友人に当たってしまう。」
「常に悪いことが起こるのではないかと不安で、何も手につかない。」
もしかしたら、それは全般性不安障害かもしれません。
全般性不安障害は、日常生活における様々なことに対して、過剰な不安や心配が6ヶ月以上続く精神疾患です。
誰でも不安や心配を感じることはありますが、全般性不安障害では、その程度が強く、日常生活に支障をきたすほどになります。
この記事では、全般性不安障害の原因、症状、治療法について、看護師の視点から詳しく解説します。
全般性不安障害とは:日常生活の様々なことに過剰な不安を感じる精神疾患
全般性不安障害(GAD)は、特定の状況や対象だけでなく、日常生活の様々なことに対して、過剰な不安や心配が6ヶ月以上続く精神疾患です。
不安や心配の内容は、仕事、人間関係、健康、経済状況など、多岐にわたります。
不安や心配が強いため、集中力の低下、イライラ、睡眠障害など、様々な症状が現れ、日常生活に支障をきたすことがあります。
全般性不安障害の原因:様々な要因が複雑に関与
全般性不安障害の原因は、まだはっきりと解明されていません。
しかし、以下の要因が複雑に関与していると考えられています。
- 遺伝的要因:家族に全般性不安障害の人がいる場合、発症リスクが高まる
- 脳機能の異常:脳内の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン、GABAなど)のバランスが崩れる
- 性格傾向:神経質な性格、完璧主義な性格、心配性な性格など
- 環境要因:ストレスの多い環境、トラウマ体験、虐待など
- 身体疾患:甲状腺機能亢進症、低血糖など
- 心理的要因:過去の経験からくるトラウマや、自己肯定感の低さなども影響することがあります。
全般性不安障害の症状:過剰な不安、心配、身体症状など
全般性不安障害の主な症状は、以下の通りです。
- 精神症状:
- 過剰な不安や心配
- 常にイライラしている
- 集中力の低下
- 落ち着きがない
- 些細なことを必要以上に心配する
- 悪いことが起こるのではないかと常に不安
- 理由もないのに憂鬱になる
- 決断力の低下
- 思考停止
- 記憶力の低下
- 身体症状:
- 筋肉の緊張(肩こり、頭痛、腰痛など)
- 動悸、息切れ
- 発汗
- めまい、吐き気
- 頻尿、下痢
- 睡眠障害(不眠、中途覚醒など)
- 疲労感
- 震え
- 口渇
- その他:
- 日常生活に支障をきたす
- 仕事や学業の効率が低下する
- 人間関係が悪化する
- 趣味や好きなことに興味がなくなる
- アルコールや薬物への依存
これらの症状は、個人差が大きく、すべてが現れるとは限りません。
全般性不安障害の治療法:薬物療法、精神療法、生活習慣の改善
全般性不安障害の治療法は、大きく分けて薬物療法と精神療法の2つがあります。
- 薬物療法:
- 抗不安薬:
- 不安や緊張を和らげる
- 短期的な効果が期待できる
- 長期的な使用は依存のリスクがあるため、医師の指示に従って服用する
- 抗うつ薬:
- 気分の落ち込みやイライラを改善する
- 効果が現れるまでに数週間かかる
- 医師の指示に従って、根気強く服用を続ける
- その他:
- 睡眠薬:睡眠障害を改善する
- 抗精神病薬:不安やイライラが強い場合に補助的に使用する
- 抗不安薬:
- 精神療法:
- 認知行動療法:
- 考え方や行動のパターンを変える
- 不安や心配の原因となる考え方の癖を修正する
- 具体的な対処法を身につける
- 治療効果が持続しやすい
- 支持的精神療法:
- 悩みや不安を話すことで、気持ちを楽にする
- 安心して話せる場を提供することで、精神的な安定を図る
- 症状の改善だけでなく、自己理解や問題解決能力の向上にもつながる
- その他:
- 森田療法:あるがままを受け入れることを学ぶ
- 自律訓練法:リラックス状態を作り出す
- マインドフルネス:今この瞬間に意識を向ける
- 認知行動療法:
- 生活習慣の改善:
- 十分な睡眠:
- 睡眠不足は不安を悪化させる
- 毎日同じ時間に寝起きする
- 寝る前にリラックスできる時間を作る
- バランスの取れた食事:
- 栄養バランスの偏りは、心身の不調につながる
- 規則正しい食生活を心がける
- カフェインやアルコールの摂取を控える
- 適度な運動:
- 運動はストレス解消や気分転換になる
- ウォーキングやヨガなど、軽い運動から始める
- 継続することが大切
- ストレス解消:
- 自分に合ったストレス解消法を見つける
- 趣味や好きなことに時間を使う
- 友人や家族と過ごす
- アロマテラピーや音楽療法なども効果的
- カフェインやアルコールの摂取を控える:
- カフェインやアルコールは、不安を悪化させる可能性がある
- 摂取量を減らす、または控える
- ノンカフェインの飲み物や、ノンアルコール飲料を選ぶ
- 十分な睡眠:
治療法は、症状の程度や原因によって、医師が個別に判断します。
全般性不安障害に関するQ&A
Q:全般性不安障害は、自然に治りますか?
A:全般性不安障害は、自然に治ることはほとんどありません。
症状が軽い場合は、生活習慣の改善やストレス解消などで改善することもありますが、多くの場合、専門的な治療が必要です。
放置すると、症状が悪化し、うつ病などの他の精神疾患を合併するリスクもあります。
早期発見・早期治療が大切です。
Q:全般性不安障害の治療期間はどのくらいですか?
A:全般性不安障害の治療期間は、個人差や症状の程度によって異なります。
薬物療法の場合、数ヶ月から数年単位で継続することがあります。
精神療法の場合、週1回程度のカウンセリングを数ヶ月から数年単位で受けることがあります。
治療期間の目安としては、薬物療法と精神療法を併用した場合、1年~2年程度です。
しかし、治療期間はあくまで目安であり、症状が改善しても、再発予防のために治療を継続することがあります。
Q:全般性不安障害の治療費はどのくらいかかりますか?
A:全般性不安障害の治療費は、治療法や医療機関によって異なります。
薬物療法の場合、月々の薬代や診察料がかかります。
精神療法の場合、1回のカウンセリング料は、医療機関やカウンセラーによって異なります。
保険診療の場合、3割負担で1回あたり数千円程度です。
自由診療の場合、1回あたり1万円以上かかることもあります。
医療費助成制度を利用できる場合もありますので、医療機関や自治体にご相談ください。
Q:全般性不安障害を予防する方法はありますか?
A:全般性不安障害を完全に予防する方法はありませんが、以下のことに注意することで、発症リスクを下げることができる可能性があります。
- ストレスを溜め込まない
- 十分な睡眠をとる
- バランスの取れた食事を心がける
- 適度な運動をする
- 悩みや不安を一人で抱え込まず、誰かに相談する
- 趣味やリラックスできる時間を持つ
- 完璧主義な考え方を改める
- 過去のトラウマと向き合う
- 自己肯定感を高める
Q:全般性不安障害の相談は、何科に行けば良いですか?
A:全般性不安障害の相談は、精神科や心療内科などで受け付けています。
また、メンタルクリニックやカウンセリングルームでも相談できます。
Q:全般性不安障害の人は、仕事ができないのでしょうか?
A:全般性不安障害の方でも、適切な治療を受けることで、仕事を続けることは可能です。
しかし、症状が重い場合は、休職や転職が必要になることもあります。
職場に相談し、業務内容や勤務時間などを調整してもらうことも検討しましょう。
Q:全般性不安障害の人は、結婚や出産はできますか?
A:全般性不安障害の方でも、結婚や出産は可能です。
しかし、妊娠・出産・育児は、心身に大きな負担がかかるため、医師と相談しながら計画的に進めることが大切です。
パートナーや家族のサポートも得ながら、無理のない範囲で生活しましょう。
Q:全般性不安障害の人は、運転免許を取得できますか?
A:全般性不安障害の程度によっては、運転免許の取得や更新が制限される場合があります。
医師の診断書が必要になる場合もありますので、運転免許センターにご相談ください。
Q:全般性不安障害の人は、障害者手帳を取得できますか?
A:全般性不安障害の程度によっては、障害者手帳を取得できる場合があります。
障害者手帳を取得することで、医療費の助成や公共交通機関の割引など、様々な支援を受けることができます。
詳しくは、お住まいの自治体にご相談ください。
看護師として伝えたいこと:一人で悩まず、専門家の力を借りましょう
全般性不安障害は、決して珍しい病気ではありません。
一人で悩まず、専門家の力を借りることで、症状を改善し、安心して生活できるようになります。
全般性不安障害と向き合い、穏やかな毎日を取り戻しましょう。
出典
- 厚生労働省 不安障害:https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/know/know_02.html
- 日本精神神経学会 大坪天平先生に「全般不安症(GAD)」を訊く:https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=53