「最近、肩が痛くて腕が上がらない…」
「夜中に肩の痛みで目が覚めて、寝不足気味…」
「肩を動かすと激痛が走って、日常生活もままならない…」
もしかしたら、それは五十肩かもしれません。
五十肩は、正式には「肩関節周囲炎」といい、40代以降に多く発症する肩の痛みと可動域制限を主な症状とする病気です。
日常生活に支障をきたすほどの痛みを伴うこともあり、放置すると症状が悪化することもあります。
この記事では、五十肩の症状、原因、改善ストレッチ、治療法について、看護師の視点から詳しく解説します。
五十肩(肩関節周囲炎)とは:肩の痛みと可動域制限を主な症状とする病気
五十肩(肩関節周囲炎)は、肩関節の周囲に炎症が起こり、痛みや可動域制限を引き起こす病気です。
正式な原因はまだ解明されていませんが、加齢に伴う肩関節周辺の組織の変性や、長時間の同一姿勢、肩への負担などが関与していると考えられています。
一般的に、40代以降に発症することが多く、自然に治ることもありますが、症状が長引いたり、悪化したりすることもあります。
五十肩の症状:肩の痛み、可動域制限、夜間痛など
五十肩の主な症状は、以下の通りです。
- 肩の痛み:
- 安静時や夜間にも痛みを感じる
- 肩を動かすと激痛が走る
- 痛みの程度は、個人差が大きい
- 夜中にズキズキと痛み、寝返りも困難
- 可動域制限:
- 腕を上げたり、後ろに回したりすることが困難になる
- 日常生活に支障をきたすことがある
- 症状が進行すると、肩関節がほとんど動かなくなることもある
- 服の脱ぎ着や髪を洗う動作が困難
- 夜間痛:
- 夜中に肩の痛みで目が覚める
- 痛みで寝付けないこともある
- 痛みのために睡眠不足になることもある
- その他:
- 肩周辺の筋肉の緊張
- 肩甲骨の動きの制限
- 肩周辺の腫れや熱感(まれ)
- 首や背中にも痛みを感じることがある
これらの症状は、個人差が大きく、すべてが現れるわけではありません。
また、症状の程度も、軽いものから日常生活に支障をきたすほどの重いものまで様々です。
五十肩の原因:加齢、長時間の同一姿勢、肩への負担など
五十肩の原因は、まだはっきりと解明されていませんが、以下の要因が複雑に関与して発症すると考えられています。
- 加齢:
- 肩関節周辺の組織が変性し、炎症を起こしやすくなる
- 腱や靭帯が硬くなり、可動域が制限される
- 関節液の減少により、関節の動きが滑らかでなくなる
- 長時間の同一姿勢:
- デスクワークや運転など、長時間同じ姿勢を続けることで、肩に負担がかかる
- 肩周辺の筋肉が緊張し、血行が悪くなる
- 猫背や前かがみの姿勢は、肩に負担をかける
- 肩への負担:
- スポーツや重労働など、肩に負担がかかる動作を繰り返すことで、炎症が起こりやすくなる
- 転倒や衝突など、肩に強い衝撃を受けることで、発症することがある
- 重い荷物を長時間持つことも、肩に負担をかける
- その他:
- 糖尿病や甲状腺疾患などの基礎疾患
- ストレス:精神的なストレスは、筋肉の緊張を高める
- 冷え性:血行不良は、筋肉の柔軟性を低下させる
- 喫煙:血行不良を引き起こし、組織の修復を遅らせる
これらの要因が単独で、または複合的に作用して、五十肩を発症すると考えられています。
五十肩の診断方法:問診、身体診察、画像検査など
五十肩の診断には、以下の検査が行われます。
- 問診:
- 症状や発症時期、既往歴などを詳しく聞く
- 痛みの程度や日常生活への影響などを確認する
- どのような時に痛みが出るか、具体的な状況を確認する
- 身体診察:
- 肩関節の可動域や痛みの程度などを確認する
- 肩周辺の筋肉の緊張や腫れなどを確認する
- 腱板や関節包など、特定の部位に痛みがあるかを確認する
- 画像検査:
- レントゲン検査:骨の変形や石灰沈着などを確認する
- MRI検査:腱板断裂や関節唇損傷など、軟部組織の状態を確認する
- 超音波検査:腱板や関節包の炎症、関節液の貯留などを確認する
- 関節造影検査:関節内の状態を詳しく確認する(MRIで診断が難しい場合)
これらの検査結果を総合的に判断して、五十肩と診断されます。
五十肩の治療法:薬物療法、リハビリ、手術など
五十肩の治療法は、症状の程度や進行状況によって異なります。
- 薬物療法:
- 痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬):痛みを和らげる
- ロキソニン、ボルタレンなど
- 痛みが強い場合に、頓服として使用
- ステロイド注射:炎症を抑え、痛みを和らげる
- 関節内注射、腱板周囲注射など
- 効果は一時的だが、痛みを早く取りたい場合に有効
- ヒアルロン酸注射:関節の動きを滑らかにする
- 関節内に直接注射
- 関節の動きを改善し、痛みを和らげる効果がある
- 痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬):痛みを和らげる
- リハビリ:
- 温熱療法:血行を促進し、筋肉の緊張を和らげる
- ホットパック、超音波治療など
- 自宅では、蒸しタオルや入浴も有効
- 運動療法:肩関節の可動域を広げ、筋力を回復させる
- 専門家(理学療法士など)の指導のもと、痛みのない範囲で徐々に行う
- 振り子運動、外旋運動、内旋運動、挙上運動など
- ストレッチ:肩周辺の筋肉をほぐし、柔軟性を高める
- 肩甲骨のストレッチ、胸のストレッチ、首のストレッチなど
- 痛みのない範囲で、ゆっくりと行う
- 温熱療法:血行を促進し、筋肉の緊張を和らげる
- 手術:
- 薬物療法やリハビリで効果がない場合や、症状が重い場合に検討される
- 関節鏡手術:関節内の炎症組織を切除する
- 癒着剥離術:関節の癒着を剥がす
- 手術後は、リハビリが必要
- 薬物療法やリハビリで効果がない場合や、症状が重い場合に検討される
これらの治療法を組み合わせることで、症状の改善や日常生活への復帰を目指します。
五十肩の改善ストレッチ:痛みの程度に合わせた運動療法が中心
五十肩の改善ストレッチは、痛みの程度に合わせた運動療法が中心となります。
- 急性期(発症から2週間程度):
- 安静:無理に動かさず、安静にする
- 痛みがある場合は、無理に動かさない
- 痛みが強い場合は、三角巾などで固定
- 温熱療法:ホットパックなどで温める
- 蒸しタオルや入浴も有効
- 温めることで、血行が促進され、筋肉の緊張が和らぐ
- 軽いストレッチ:痛みのない範囲で、ゆっくりと動かす
- 振り子運動:腕を前後に振る
- 肩甲骨のストレッチ:肩甲骨を寄せる
- 首のストレッチ:首をゆっくり回す
- 安静:無理に動かさず、安静にする
- 慢性期(発症から2週間以降):
- 運動療法:肩関節の可動域を広げ、筋力を回復させる
- 振り子運動:腕を前後に振る
- 外旋運動:腕を外側に開く
- 内旋運動:腕を内側にひねる
- 挙上運動:腕を上げる
- 壁を使ったストレッチ:壁に手をつき、体をゆっくりと倒す
- タオルを使ったストレッチ:タオルを両手で持ち、腕をゆっくりと上げる
- ストレッチ:肩周辺の筋肉をほぐし、柔軟性を高める
- 肩甲骨のストレッチ
- 胸のストレッチ
- 首のストレッチ
- 腕のストレッチ
- 全身のストレッチ
- 運動療法:肩関節の可動域を広げ、筋力を回復させる
これらの運動療法やストレッチは、専門家の指導のもと、痛みの程度に合わせて無理なく行うことが大切です。
五十肩のQ&A
Q:五十肩は、放置するとどうなりますか?
A:五十肩を放置すると、以下のような状態になることがあります。
- 痛みが慢性化し、日常生活に支障をきたす
- 肩関節の可動域が狭くなり、腕が上がらなくなる
- 肩周辺の筋肉が萎縮し、筋力が低下する
- 症状が改善するまでに、時間がかかる
これらの状態になると、日常生活に支障をきたすだけでなく、治療にも時間がかかってしまいます。
早期に適切な治療を受けることが大切です。
Q:五十肩は、自然に治りますか?
A:五十肩は、自然に治ることもありますが、症状が長引いたり、悪化したりすることもあります。
一般的に、自然治癒には半年から2年程度かかると言われています。
早期に適切な治療を受けることで、症状の改善を早め、後遺症のリスクを減らすことができます。
Q:五十肩の治療期間は、どのくらいかかりますか?
A:五十肩の治療期間は、症状の程度や治療への反応によって異なります。
軽症の場合は、数週間から数ヶ月で症状が改善することが多いです。
重症の場合は、数ヶ月から1年程度かかることもあります。
リハビリを継続することで、症状の改善を早め、再発を予防することができます。
Q:五十肩の治療費は、どのくらいかかりますか?
A:五十肩の治療費は、治療法や医療機関によって異なります。
薬物療法やリハビリの場合、1回の治療費は数千円程度です。ステロイド注射やヒアルロン酸注射を行う場合は、1回の治療費が数千円から1万円程度になることがあります。
手術を行う場合は、入院費や手術費用がかかります。
医療費助成制度を利用できる場合もありますので、医療機関や自治体にご相談ください。
Q:五十肩の予防法はありますか?
A:五十肩を完全に予防する方法はありませんが、以下のことに注意することで、発症リスクを下げることができる可能性があります。
- 長時間の同一姿勢を避ける
- 肩に負担のかかる動作を控える
- 適度な運動やストレッチを行う
- 体を冷やさない
- ストレスを溜め込まない
Q:五十肩の相談は、何科に行けば良いですか?
A:五十肩の相談は、整形外科やリハビリテーション科で受け付けています。
看護師として伝えたいこと:諦めずにリハビリを続けましょう
五十肩は、痛みを伴い、日常生活に支障をきたすつらい病気です。
しかし、適切な治療とリハビリを続けることで、必ず改善します。
諦めずに、五十肩と向き合い、より良い生活を取り戻しましょう。
出典
- 日本整形外科学会 「五十肩(肩関節周囲炎)」:https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/frozen_shoulder.html
- 恩賜財団済生会 肩関節周囲炎:https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/scapulohumeral_periarthritis/