「健康診断で白血球が多いと言われた」
「最近、疲れやすくてだるい」
「原因不明の微熱が続く」
もしかたら、それは慢性骨髄性白血病かもしれません。
慢性骨髄性白血病は、血液細胞を作る骨髄の中で、白血球が異常に増殖する病気です。
この記事では、慢性骨髄性白血病の原因、症状、検査、治療法、そして療養生活について、看護師の視点から詳しく解説します。
慢性骨髄性白血病(CML)とは:白血球が異常に増殖する病気
慢性骨髄性白血病(CML)とは、血液細胞を作る骨髄の中で、白血球が異常に増殖する病気です。
緩やかに進行することが多く、初期には自覚症状がないこともあります。
慢性骨髄性白血病の種類:慢性期、移行期、急性期
慢性骨髄性白血病は、病気の進行度合いによって、以下の3つの病期に分けられます。
- 慢性期:
- 白血球数が増加しますが、自覚症状がないこともあります。
- 移行期:
- 白血球数がさらに増加し、倦怠感や疲労感などの症状が現れます。
- 急性期(急性転化):
- 白血病細胞(芽球)が急激に増加し、急性白血病と同様の症状が現れます。
慢性骨髄性白血病の患者数:比較的まれな血液のがん
慢性骨髄性白血病は、比較的まれな血液のがんです。
日本国内の患者数は、人口10万人あたり約1人と言われています。
成人に多く、高齢者に多い傾向があります。
慢性骨髄性白血病の原因:フィラデルフィア染色体が原因
慢性骨髄性白血病の原因は、フィラデルフィア染色体と呼ばれる染色体異常です。
この異常により、BCR-ABL1というがん遺伝子が作られ、白血球の異常な増殖を引き起こします。
慢性骨髄性白血病の症状:初期は無症状、進行すると倦怠感や疲労感
慢性骨髄性白血病は、初期にはほとんど症状がないことが多いです。
健康診断などで、白血球数の増加を指摘されて、初めて気づくこともあります。
病気が進行すると、倦怠感、疲労感、寝汗、体重減少などの症状が現れます。
- 倦怠感、疲労感:
- 体がだるく、何もする気が起きない
- 階段を上るのが辛い
- 少し動いただけで疲れてしまう
- 寝汗:
- 寝ている間に汗をかきやすくなる
- 特に夜間に汗をかく
- シーツが濡れるほど汗をかく
- 体重減少:
- 食欲不振がなくても、体重が減ることがある
- 数ヶ月で数kg体重が減った
- 腹部膨満感:
- 脾臓が腫れることで、お腹が張った感じがする
- お腹が苦しい
- 食後にすぐにお腹がいっぱいになる
- 骨やリンパ節の腫れ:
- 白血病細胞が骨やリンパ節に集まり、腫れることがある
- 首や脇の下のリンパ節が腫れた
- 骨が痛む
- 脳脊髄液や髄膜への浸潤:
- 白血病細胞が脳や脊髄を覆う膜(髄膜)に浸潤すると、頭痛や吐き気などの症状が現れることがある
- 頭痛が続く
- 吐き気が止まらない
- 手足の麻痺
慢性骨髄性白血病の検査:血液検査、染色体検査、骨髄検査など
慢性骨髄性白血病の診断には、以下の検査が行われます。
- 血液検査:
- 白血球数、赤血球数、血小板数などを調べます。
- 染色体検査:
- フィラデルフィア染色体の有無を調べます。
- 骨髄検査:
- 骨髄液を採取し、白血病細胞の数や種類を調べます。
これらの検査結果を総合的に判断し、慢性骨髄性白血病の診断を行います。
慢性骨髄性白血病の治療:分子標的薬、化学療法、骨髄移植
慢性骨髄性白血病の治療法は、以下の通りです。
- 分子標的薬:
- イマチニブ(グリベック)などの分子標的薬は、BCR-ABL1タンパク質の働きを抑え、白血病細胞の増殖を抑制します。
- 副作用が少ないため、第一選択薬として用いられます。
- 化学療法:
- 抗がん剤を使用し、白血病細胞を破壊します。
- 分子標的薬の効果が不十分な場合や、急性転化した場合に用いられます。
- 骨髄移植:
- 造血幹細胞を移植し、正常な血液細胞を作るようにします。
- 根治が期待できる治療法ですが、合併症のリスクも高いです。
慢性骨髄性白血病の予後:分子標的薬により予後が改善
慢性骨髄性白血病の予後は、分子標的薬の登場により大きく改善しました。
現在では、多くの患者さんが長期生存できるようになっています。
慢性骨髄性白血病の療養生活:定期的な検査と服薬、生活習慣の改善
慢性骨髄性白血病の療養生活では、以下のことが大切です。
- 定期的な検査:
- 定期的に検査を受け、病状を把握しましょう。
- 検査結果について、医師や看護師とよく話し合いましょう。
- 服薬:
- 医師の指示通りに、きちんと薬を飲みましょう。
- 飲み忘れた場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。
- 生活習慣の改善:
- バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠を心がけましょう。
- 感染症予防のため、手洗いやうがいをしっかり行いましょう。
- ストレスを溜め込まず、リラックスできる時間を取りましょう。
- 精神的なサポート:
- 病気に対する不安や悩みがあれば、医療スタッフや家族に相談しましょう。
- 同じ病気と闘う人たちとの交流も、心の支えになることがあります。
慢性骨髄性白血病に関するQ&A
Q:慢性骨髄性白血病は、遺伝しますか?
A: 慢性骨髄性白血病は、遺伝する可能性は低いと考えられています。
Q:慢性骨髄性白血病の治療期間はどのくらいですか?
A: 治療期間は、病状や治療法によって異なります。
分子標的薬による治療は、長期にわたることがあります。
Q:慢性骨髄性白血病の患者さんの平均寿命はどのくらいですか?
A: 慢性骨髄性白血病の患者さんの平均寿命は、健康な人とほぼ変わらないと言われています。
ただし、合併症や急性転化のリスクもあるため、定期的な検査と適切な治療が大切です。
看護師として伝えたいこと:不安な気持ちに寄り添います
慢性骨髄性白血病と診断された時は、不安や戸惑いでいっぱいだと思います。
「これからどうなるんだろう…」「治療はつらいのかな…」
そんな気持ちを抱えている方もいるかもしれません。
何か不安なことや心配なことがあれば、いつでもお気軽に医療機関にご相談ください。
出典
- 国立がん研究センター 慢性骨髄性白血病:https://ganjoho.jp/public/cancer/CML/index.html
- 日本小児がん研究グループ 慢性骨髄性白血病(CML)の解説:https://jccg.jp/family/cml/index.html