「階段を数段上がっただけで、胸がドキドキして息が切れる。」
「最近、動悸や息切れがひどく、めまいもする。」
「胸が締め付けられるように痛む。」
もしかしたら、それは心房細動かもしれません。
心房細動は、心臓の拍動が不規則になる不整脈の一種です。
放置すると、脳梗塞や心不全などの重篤な合併症を引き起こすことがあります。
この記事では、心房細動の危険なサインと最新治療について、看護師の視点から詳しく解説します。
心房細動とは:心臓の拍動が不規則になる不整脈
心房細動は、心臓の拍動が不規則になる不整脈の一種です。
通常、心臓は規則正しい電気信号によって拍動していますが、心房細動では、心房という部屋が不規則に興奮し、細かく震えるため、心房から心室への電気信号が不規則になります。
その結果、心室も不規則に拍動し、脈がバラバラになります。
心房細動の症状:動悸、息切れ、胸の不快感など
心房細動の主な症状は、以下の通りです。
- 動悸:
- 階段を数段上がっただけで、胸がドキドキして息が切れる。
- 安静時も脈がバラバラになる。
- 動悸が激しく、夜も眠れない。
- 息切れ:
- 軽い運動でも息苦しくなる。
- 横になると息苦しい。
- 息苦しくて、日常生活に支障をきたす。
- 胸の不快感:
- 胸が締め付けられるように痛む。
- 胸がドキドキして、気持ちが悪い。
- 胸に違和感がある。
- その他:
- めまいやふらつきが頻繁に起こる。
- 失神することがある。
- 疲れやすく、体がだるい。
- 集中力が低下する。
これらの症状は、心房細動の種類や個人差によって異なります。
また、無症状の場合もあります。
心房細動の種類:発作性心房細動、持続性心房細動、永続性心房細動
心房細動は、持続時間によって、発作性心房細動、持続性心房細動、永続性心房細動に分類されます。
- 発作性心房細動:
- 発作が自然に止まる。
- 7日以内に停止することが多い。
- 発作の頻度や持続時間は個人差が大きい。
- 持続性心房細動:
- 7日以上持続する。
- 自然に停止しない。
- 治療によって洞調律に戻る可能性がある。
- 永続性心房細動:
- 1年以上持続する。
- 治療によっても洞調律に戻らない。
- 症状がない場合もある。
心房細動の原因:加齢、高血圧、心臓病など
心房細動の主な原因は、以下の通りです。
- 加齢:
- 高齢になるほど発症リスクが高まる。
- 60歳以上で発症率が上昇する。
- 高血圧:
- 心臓に負担がかかり、心房細動を引き起こしやすくなる。
- 高血圧を放置すると、心房細動のリスクがさらに高まる。
- 心臓病:
- 弁膜症、心筋梗塞、心不全など。
- 心臓の構造や機能に異常があると、心房細動を引き起こしやすい。
- その他:
- 糖尿病:血糖値が高い状態が続くと、心臓に負担がかかる。
- 甲状腺機能亢進症:甲状腺ホルモンの過剰分泌が、心臓に影響を与える。
- 睡眠時無呼吸症候群:睡眠中に呼吸が止まることで、心臓に負担がかかる。
- 過度の飲酒:アルコールは心臓に悪影響を与える。
- ストレス:精神的なストレスが、心臓に負担をかける。
これらの原因が複雑に関与している場合もあります。
心房細動の治療法:薬物療法、カテーテルアブレーション、電気的除細動など
心房細動の治療法は、症状や合併症のリスクによって異なります。
- 薬物療法:
- 抗凝固薬:脳梗塞予防のために使用される。
- ワーファリン、ダビガトラン、リバーロキサバンなど。
- 定期的な血液検査が必要な場合がある。
- 抗不整脈薬:心房細動の予防や停止のために使用される。
- ジゴキシン、アミオダロン、ベプリジルなど。
- 副作用に注意が必要。
- 脈拍数を抑える薬:心房細動による動悸などの症状を軽減するために使用される。
- カルシウム拮抗薬、β遮断薬など。
- 血圧低下に注意が必要。
- 抗凝固薬:脳梗塞予防のために使用される。
- カテーテルアブレーション:
- カテーテルという細い管を足の付け根などから心臓まで挿入し、心房細動の原因となる部分を焼灼する治療法。
- 成功率は約80~90%。
- 入院期間は数日間。
- 治療後、再発する可能性がある。
- 電気的除細動:
- 電気ショックによって心房細動を停止させる治療法。
- 全身麻酔下で行われる。
- 成功率は約90%。
- 再発予防のために、薬物療法が必要になる場合がある。
治療期間は、心房細動の種類や状態によって異なります。
心房細動に関するQ&A
Q:心房細動を放置するとどうなりますか?
A:心房細動を放置すると、以下のような合併症を引き起こすことがあります。
- 脳梗塞:心房細動によって心臓内に血栓ができやすくなり、その血栓が脳に運ばれると脳梗塞を引き起こします。
- 心房細動患者の脳梗塞リスクは、健常者の約5倍。
- 脳梗塞は、後遺症が残る可能性が高い。
- 心不全:心房細動によって心臓の機能が低下し、心不全を引き起こすことがあります。
- 心不全は、息切れやむくみなどの症状を引き起こす。
- 心不全が悪化すると、入院治療が必要になる。
- 認知症:心房細動は、認知症のリスクを高める可能性があります。
- 心房細動によって脳の血流が悪くなり、認知機能が低下する。
- 認知症は、日常生活に支障をきたす。
特に、脳梗塞は、心房細動の最も重篤な合併症です。
心房細動と診断された場合は、医師の指示に従い、適切な治療を受けましょう。
Q:心房細動は、治りますか?
A:心房細動の種類や状態によっては、完全に治らない場合もあります。
しかし、適切な治療を行うことで、症状を軽減したり、脳梗塞などの合併症を予防したりすることは可能です。
諦めずに、医師と相談しながら治療を進めましょう。
Q:心房細動の治療期間は、どのくらいかかりますか?
A:心房細動の治療期間は、心房細動の種類や状態によって異なります。
発作性心房細動の場合、発作が自然に止まることがありますが、再発予防のために薬物療法が必要になることがあります。
持続性心房細動や永続性心房細動の場合、薬物療法やカテーテルアブレーションなどの治療が必要になり、治療期間は数ヶ月から数年単位になることがあります。
Q:心房細動の治療費は、どのくらいかかりますか?
A:心房細動の治療費は、治療法や医療機関によって異なります。
薬物療法の場合、月々の薬代や診察料がかかります。
カテーテルアブレーションの場合、入院費や手術費用がかかります。
電気的除細動の場合、入院費や治療費用がかかります。
医療費助成制度を利用できる場合もありますので、医療機関や自治体にご相談ください。
Q:心房細動の予防法はありますか?
A:心房細動を完全に予防する方法はありませんが、以下のことに注意することで、発症リスクを下げることができる可能性があります。
- 高血圧、糖尿病、心臓病などの生活習慣病を予防、管理する。
- 過度の飲酒を控える。
- ストレスを溜め込まない。
- 十分な睡眠をとる。
- バランスの取れた食事を心がける。
- 適度な運動をする。
Q:心房細動の相談は、何科に行けば良いですか?
A:心房細動の相談は、循環器内科で受け付けています。
Q:心房細動の時に、運動をしても良いですか?
A:心房細動の症状や状態によって異なります。
軽い運動であれば、心房細動の予防や症状改善に効果がある場合があります。
しかし、激しい運動は、心臓に負担をかけ、心房細動を悪化させる可能性があります。
運動をする場合は、医師に相談し、適切な運動の種類や強度、時間などを確認しましょう。
Q:心房細動の時に、食事で気をつけることはありますか?
A:心房細動の予防や症状改善のために、以下の食事に気をつけましょう。
- 塩分を控える。
- カリウムを豊富に含む食品を摂る。
- マグネシウムを豊富に含む食品を摂る。
- 抗酸化作用のある食品を摂る。
- アルコールやカフェインを控える。
Q:心房細動の時に、仕事や日常生活で気をつけることはありますか?
A:心房細動の症状や状態によって異なります。
症状が軽い場合は、通常の仕事や日常生活を送ることができます。
しかし、症状が重い場合は、仕事や日常生活に制限が必要になることがあります。
医師に相談し、指示に従いましょう。
看護師として伝えたいこと:早期発見・早期治療が大切です
心房細動は、無症状の場合もあります。
しかし、放置すると重篤な合併症を引き起こすことがあります。
気になる症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。
心房細動と向き合い、健康な毎日を取り戻しましょう。
出典
- 日本循環器協会 心房細動:https://www.j-circ.or.jp/old/about/jcs_ps5th/index02.html
- 国立長寿医療研究センター あなたの脈乱れていませんか?~心房細動のお話:https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/44.html