胃がんの初期症状を見逃さない!原因・検査・治療法

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胃がんは、胃の内側を覆う粘膜から発生する悪性腫瘍です。

日本人の罹患率が高いがんであり、特に男性に多い傾向があります。
しかし、早期に発見し適切な治療を行えば、治癒の可能性も高い病気です。

この記事では、胃がんの初期症状から最新の治療法、術後の生活まで、知っておきたい情報をわかりやすく解説します。

胃の構造と胃がんができる場所

胃は、食道と十二指腸をつなぐ袋状の臓器で、食物を一時的に貯蔵し、消化する役割を担っています。

胃は大きく分けて以下の3つの部分に分けられます。
・食道との接続部である噴門部
・胃の大部分を占める胃体部
・十二指腸との接続部である幽門部

胃がんはこれらのどの部位にも発生する可能性があります。

胃がんの現状:早期発見の重要性

日本では、胃がんは罹患率の高いがんであり、国立がん研究センターがん情報サービスによると、2019年には男性で約9万8千人、女性で約4万3千人が新たに胃がんと診断されています。

男女比では男性の方が約2倍多く、年齢別に見ると、50代から増加し、高齢になるほど罹患率が高くなる傾向があります。

しかし、近年では、胃がん検診の普及や内視鏡検査の進歩により、早期発見されるケースが増加傾向にあります。
早期発見することで、治療の選択肢が広がり、生存率の向上につながります。

胃がんの種類と進行:早期がん、進行がん、スキルス胃がんとは

胃がんは、がんの形態と深達度(がんが胃壁のどの深さまで達しているか)によって分類されます。

形態による分類

内視鏡で観察されるがんの形態は、大きく以下の3つに分類されます。

  • 隆起型: ポリープのように盛り上がっているタイプ。
  • 表面型: 粘膜表面に平坦に広がっているタイプ。
  • 陥凹型: 粘膜が深くへこんでいるタイプ。

深達度による分類

胃壁は、内側から粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜の5層構造になっています。
胃がんは粘膜から発生し、進行するにつれて深層へと広がっていきます。
深達度によって、早期胃がん進行胃がんに分けられます。

  • 早期胃がん: がんが粘膜または粘膜下層にとどまっている状態。自覚症状はほとんどないことが多く、あっても上腹部痛、吐き気、胸やけなど、胃炎と区別がつきにくい症状です。
  • 進行胃がん: がんが固有筋層より深く進行している状態。腹痛、食欲不振、体重減少、吐血、下血、嚥下困難などの症状が現れることがあります。

特に注意が必要なのは、スキルス胃がんです。
スキルス胃がんは、胃壁の中で広がりながら進行するため、内視鏡検査でも発見が難しく、進行も早いという特徴があります。

胃がんの原因とリスク要因:ピロリ菌との関係

胃がんの明確な原因はまだ完全には解明されていませんが、以下の要因がリスクを高めると考えられています。

  • ヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)感染: ピロリ菌は胃粘膜に感染し、慢性的な炎症を引き起こすことで、胃炎、胃潰瘍、そして胃がんのリスクを高めます。ピロリ菌の除菌治療は、胃がんの予防に有効であることが示されています。
  • 萎縮性胃炎: 慢性的な胃炎が進行し、胃粘膜が萎縮した状態は、胃がんの前段階病変と考えられています。
  • 食生活: 塩分過多な食事、喫煙、過度の飲酒、野菜や果物の摂取不足などがリスク要因とされています。
  • 遺伝的要因: 家族歴に胃がんの患者がいる場合、リスクが高まる可能性があります。

胃がんの検査:早期発見のために

胃がんの診断には、以下のような検査が行われます。

  • バリウム検査(胃X線検査): バリウムという造影剤を飲んで行うX線検査です。胃の形や粘膜の状態を観察します。
  • 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ): 内視鏡を口または鼻から挿入し、胃の内部を直接観察する検査です。組織を採取(生検)して確定診断を行うことができます。早期発見に非常に有用な検査です。(画像:内視鏡検査の様子)
  • 生検: 内視鏡検査で採取した組織を顕微鏡で詳しく調べる病理検査です。がん細胞の有無や種類を確定します。
  • 超音波内視鏡検査(EUS): 超音波装置が付いた内視鏡を用いて、胃壁の深達度や周囲のリンパ節の状態などを詳しく調べます。
  • CT検査、MRI検査: 腹部の断層画像を撮影し、がんの広がりや他の臓器への転移の有無などを調べます。
  • 腫瘍マーカー検査: 血液中の特定の物質の量を測定することで、がんの存在や進行度を推測する検査です。胃がんでは、CEA、CA19-9、CA72-4などが用いられますが、診断の補助として用いられます。

胃がんの治療:患者さんに合わせた最適な治療法

胃がんの治療法は、がんの進行度(病期)や患者さんの状態によって異なります。
主な治療法は以下の通りです。

  • 内視鏡治療: 早期胃がんで、がんが粘膜内にとどまっている場合に適応されます。内視鏡を用いてがんを切除します。体への負担が少ない治療法です。
  • 手術(外科手術、腹腔鏡下手術、ロボット支援手術): 進行胃がんやリンパ節転移が疑われる場合に行われます。胃の一部または全部を切除し、必要に応じてリンパ節郭清を行います。近年では、腹腔鏡下手術やロボット支援手術など、体への負担が少ない手術方法も選択肢となっています。
  • 化学療法(抗がん剤治療): 手術で切除しきれない場合や、手術後の再発予防、手術前にがんを小さくする目的などで行われます。
  • 放射線療法: 胃がんの治療としては一般的ではありませんが、症状緩和などの目的で行われることがあります。

胃がんの病期(ステージ)分類と生存率

胃がんの治療方針を決定する上で、がんの進行度、つまり病期(ステージ)を把握することは非常に重要です。
病期は、がんがどの程度進行しているかを示す指標であり、適切な治療を選択し、予後を予測するために用いられます。

胃がんの病期(ステージ)分類:進行度を理解する

胃がんの病期分類は、国際的に用いられているTNM分類に基づいて行われます。
TNM分類は、以下の3つの要素を組み合わせて病期を決定します。

  • T(原発腫瘍): 胃壁におけるがんの深達度(どの深さまで達しているか)
  • N(領域リンパ節): 周囲のリンパ節への転移の有無と程度
  • M(遠隔転移): 胃から離れた臓器への転移の有無

これらの要素を組み合わせることで、胃がんはI期(ステージ1)からIV期(ステージ4)までの病期に分類されます。一般的に、I期が最も早期で、IV期が最も進行した状態です。

病期(ステージ)の決定

以下に病期の進行に伴い現れやすくなる症状を箇条書きで示します。
ただし、これはあくまで一般的な傾向であり、全ての方に当てはまるわけではないこと、また、これらの症状は胃がん以外の病気でも見られることをご理解ください。

早期胃がん(I期)

  • ほとんど無症状であることが多いです。
  • あっても、以下のような軽微な症状が現れる程度です。
    • 胃の不快感
    • 胸やけ
    • 食欲不振
    • 胃もたれ
    • 軽い腹痛

これらの症状は、胃炎や胃潰瘍など他の胃の病気と区別がつきにくいため、症状だけで胃がんと判断することはできません。

進行胃がん(II期、III期)

早期胃がんに見られる症状に加えて、以下のような症状が現れることがあります。

  • 持続的な腹痛
  • 食欲不振の悪化
  • 体重減少
  • 吐き気、嘔吐
  • 吐血(血液を吐く)
  • 下血(便に血が混じる、黒い便が出る)
  • 嚥下困難(食べ物が飲み込みにくい)
  • 腹部のしこり(進行した場合)

これらの症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。

進行胃がん(IV期)

進行が進み、他の臓器に転移が見られるようになると、転移先の臓器に応じた症状が現れます。

  • 肝臓転移:腹部の腫れ、黄疸など
  • 肺転移:咳、血痰、呼吸困難など
  • 腹膜播種:腹水、腹痛、便秘など

病期と治療

病期によって、治療方針は大きく異なります。

  • I期: 内視鏡治療や手術で根治を目指します。
  • II期、III期: 手術を中心に、必要に応じて術前・術後化学療法や放射線療法などを組み合わせた集学的治療が行われます。
  • IV期: 手術による根治が難しい場合が多く、化学療法や放射線療法などで症状の緩和や延命を目指します。

病期と生存率

病期は、予後(病気の経過)にも大きく影響します。
一般的に、早期の段階で発見・治療された場合ほど、予後は良好です。
病期別の5年生存率は、国立がん研究センターがん情報サービスなどで公開されていますが、あくまで統計的なデータであり、個々の患者さんの状態によって大きく異なることをご理解ください。
詳しくは、担当医にご相談ください。

胃切除後の生活:ダンピング症候群と貧血への対策

胃の一部または全部を切除した場合、食後の不快な症状(ダンピング症候群)や貧血などが起こることがあります。

  • ダンピング症候群: 食後すぐに起こる早期ダンピング症候群と、食後2〜3時間後に起こる後期ダンピング症候群があります。
    • 早期ダンピング症候群: 食後30分以内に、発汗、動悸、めまい、顔面紅潮、脱力感、腹痛、下痢などが現れることがあります。
    • 後期ダンピング症候群: 食後2〜3時間後に、脱力感、集中力低下、冷や汗、めまい、手の震えなどが現れることがあります。 ダンピング症候群を予防するためには、食事の回数を増やし、1回の食事量を減らす、糖質の多い食品を避ける、ゆっくりとよく噛んで食べるなどの食事療法が有効です。
  • 貧血: 胃切除後には鉄分やビタミンB12の吸収が低下することで、貧血を起こしやすくなります。定期的な検査と、必要に応じて鉄剤やビタミンB12の補充が必要となります。

手術後の生活については、医師や管理栄養士などの専門家と相談しながら、適切な食事療法や生活習慣を身につけることが大切です。

胃がんは早期発見・早期治療が非常に重要な病気です。
定期的な検診を受け、気になる症状があれば早めに医療機関を受診するようにしましょう。

出典

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