「階段を上る時に、胸がドキドキして息苦しくなる。今まで感じたことのない脈の乱れを感じる。」
「夜中に胸がドキドキして目が覚める。脈が飛ぶような感じがして、不安になる。」
もしかしたら、それは不整脈かもしれません。
不整脈は、心臓の拍動が乱れる病気で、放置すると脳梗塞や心不全、突然死など、命に関わる病気を引き起こすこともあります。
この記事では、不整脈の原因、症状、検査、対策、そして治療法について、看護師の視点から詳しく解説します。
不整脈とは:心臓の拍動が乱れる病気
不整脈とは、心臓の拍動が正常なリズムから逸脱した状態を指します。
心臓は、洞結節と呼ばれる部分から発生する電気信号によって規則的に収縮と拡張を繰り返していますが、この電気信号の異常や、心臓の構造的な異常によって、不整脈が起こります。
不整脈の原因:加齢、生活習慣、心臓の病気などが要因に
不整脈の主な原因は、以下の通りです。
- 加齢:
- 加齢に伴い、心臓の機能が低下し、不整脈が起こりやすくなります。
- 特に、高齢者の場合、心臓の弁や筋肉が硬くなり、電気信号の伝達が乱れることがあります。
- 生活習慣:
- ストレス、過労、睡眠不足、喫煙、過度の飲酒、カフェインの過剰摂取などは、自律神経のバランスを崩し、不整脈を引き起こすことがあります。
- 特に、睡眠不足は、心臓に負担をかけ、不整脈を悪化させることがあります。
- 心臓の病気:
- 心筋梗塞、心不全、弁膜症、心筋症などの心臓の病気は、不整脈の原因となります。
- 心臓の病気によって、心臓の筋肉や弁が損傷すると、電気信号の伝達が乱れることがあります。
- その他:
- 甲状腺の病気、肺の病気、電解質異常、薬の副作用なども、不整脈を引き起こすことがあります。
- 特に、甲状腺機能亢進症の場合、心臓の働きが活発になり、不整脈が起こりやすくなります。
不整脈の種類:代表的な不整脈とその特徴
不整脈には、様々な種類があります。代表的な不整脈とその特徴は以下の通りです。
- 期外収縮:
- 正常な拍動よりも早く起こる不整脈です。
- 動悸や胸の不快感を感じることがありますが、ほとんどの場合、心配はありません。
- 心房細動:
- 心房が細かく震え、不規則な脈を打つ不整脈です。
- 動悸、息切れ、胸の痛みなどを感じることがあります。
- 脳梗塞のリスクを高めるため、注意が必要です。
- 心房粗動:
- 心房が規則的に速く拍動する不整脈です。
- 心房細動と同様の症状が現れます。
- 心房細動に移行することがあります。
- 発作性上室性頻拍:
- 突然、脈が速くなり、動悸や息切れを感じる不整脈です。
- 数分から数時間で自然に治まることが多いですが、繰り返すことがあります。
- 心室細動:
- 心室が細かく震え、血液を送り出せなくなる不整脈です。
- 突然死の原因となるため、緊急の治療が必要です。
- 徐脈:
- 脈が遅くなる不整脈です。
- めまいや失神を起こすことがあります。
- ペースメーカーが必要になることがあります。
不整脈の患者数:高齢になるほど増加
不整脈の患者数は、高齢になるほど増加します。
特に、60歳以上の方に多く見られ、加齢に伴い、心臓の機能が低下することが主な要因です。
不整脈の症状:動悸、胸の痛み、めまい、失神など
不整脈の主な症状は、以下の通りです。
- 動悸:
- 階段を上る時に、胸がドキドキして息苦しくなる。今まで感じたことのない脈の乱れを感じる。
- 胸がドキドキする、脈が飛ぶ、脈が速くなる、脈が遅くなるなどの症状が現れます。
- 胸の痛み:
- 胸が締め付けられるように痛む、胸がチクチク痛むなどの症状が現れます。
- 狭心症や心筋梗塞と間違えやすいので、注意が必要です。
- めまい・失神:
- めまいや立ちくらみが起こったり、意識を失って倒れたりすることがあります。
- 徐脈や心室細動などの重篤な不整脈の場合に起こりやすいです。
- その他:
- 息切れ、倦怠感、吐き気、冷や汗などの症状が現れることがあります。
- 症状がない場合もあります。
不整脈の検査:心電図検査、ホルター心電図検査、心臓超音波検査など
不整脈の検査は、以下の方法で行われます。
- 心電図検査:
- 心臓の電気信号を記録し、不整脈の種類や程度を調べます。
- 検査は、短時間で終わります。
- 検査費用は、保険適用で3割負担の場合、1,000円~2,000円程度です。
- ホルター心電図検査:
- 小型携帯型の心電計を装着し、24時間または数日間、心電図を記録します。
- 一時的に起こる不整脈や、夜間の不整脈などを検出するのに有効です。
- 検査中は、日常生活を送ることができます。
- 検査費用は、保険適用で3割負担の場合、3,000円~5,000円程度です。
- 心臓超音波検査(心エコー検査):
- 超音波を使って心臓の構造や動きを観察し、心臓の病気の有無を調べます。
- 心臓の弁や筋肉の状態、血流などを確認します。
- 検査費用は、保険適用で3割負担の場合、3,000円~5,000円程度です。
- その他:
- 血液検査:甲状腺ホルモンや電解質などを調べます。
- 胸部レントゲン検査:心臓や肺の状態を確認します。
- 運動負荷心電図検査:運動中の心電図を記録し、不整脈の有無を調べます。
- 電気生理学的検査:カテーテルを使って心臓内の電気信号を詳しく調べます。
不整脈の対策:生活習慣の改善、薬物療法、カテーテル治療など
不整脈の対策は、以下の方法があります。
- 生活習慣の改善:
- ストレスを溜め込まないように、リラックスできる時間を作りましょう。
- ストレス解消法:入浴、アロマテラピー、音楽鑑賞、読書、散歩など
- 過労や睡眠不足を避け、規則正しい生活を送りましょう。
- 睡眠時間:7時間程度
- 睡眠の質を高める:寝る前にスマートフォンやパソコンを見ない、寝室を暗く静かにする
- 禁煙、節酒、バランスの取れた食事、適度な運動を心がけましょう。
- バランスの取れた食事:野菜、果物、魚、肉などをバランス良く食べる
- 適度な運動:ウォーキング、ジョギング、水泳など
- カフェインの過剰摂取は控えましょう。
- カフェイン:コーヒー、紅茶、緑茶、チョコレートなどに含まれる
- 脱水症状にならないように、水分をこまめに摂取しましょう。
- 水分摂取量の目安:1日1.5リットル~2リットル
- 持病がある場合は、主治医と相談し、適切な治療を受けましょう。
- 特に、高血圧、糖尿病、甲状腺の病気などは、不整脈のリスクを高めます。
- ストレスを溜め込まないように、リラックスできる時間を作りましょう。
- 薬物療法:
- 抗不整脈薬、抗凝固薬、抗血小板薬などを使用し、不整脈の発生を抑えたり、血栓の形成を防いだりします。
- 抗不整脈薬:不整脈の種類によって、様々な薬が使用されます。
- 抗凝固薬:心房細動などの場合、脳梗塞を予防するために使用されます。
- 抗血小板薬:心筋梗塞などの場合、血栓の形成を防ぐために使用されます。
- 薬は、医師の指示に従って正しく服用しましょう。
- 副作用が現れた場合は、医師に相談しましょう。
- 抗不整脈薬、抗凝固薬、抗血小板薬などを使用し、不整脈の発生を抑えたり、血栓の形成を防いだりします。
- カテーテル治療:
- カテーテルという細い管を血管に通し、電気信号の異常な部分を焼灼したり、ペースメーカーを埋め込んだりします。
- カテーテルアブレーション:不整脈の原因となる異常な電気信号を焼灼します。
- ペースメーカー植え込み:徐脈性不整脈の場合、心臓の拍動を補助します。
- ICD(植え込み型除細動器)植え込み:心室細動などの致死性不整脈の場合、電気ショックで心臓の動きを正常に戻します。
- カテーテル治療は、入院して行われることが多いです。
- 治療後は、医師の指示に従って安静に過ごしましょう。
- カテーテルという細い管を血管に通し、電気信号の異常な部分を焼灼したり、ペースメーカーを埋め込んだりします。
- その他:
- 重度の場合は、手術が検討されることがあります。
- 手術は、弁膜症や心筋症などの心臓の病気が原因で、不整脈が起こっている場合に行われます。
- 手術の種類は、原因となる病気によって異なります。
- 重度の場合は、手術が検討されることがあります。
不整脈に関するQ&A
Q:不整脈は、自然に治りますか?
A:不整脈の種類や原因によっては、自然に治ることもありますが、放置すると悪化する可能性もあります。
症状が気になる場合は、早めに医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けましょう。
Q:不整脈の治療期間はどのくらいですか?
A:不整脈の治療期間は、不整脈の種類や原因によって異なります。
薬物療法やカテーテル治療は、数ヶ月から年単位で継続することがあります。
生活習慣の改善による治療の場合は、数ヶ月から年単位で効果が現れることがあります。
Q:不整脈の人は、日常生活でどのようなことに注意すれば良いですか?
A:不整脈の人は、以下のことに注意しましょう。
- ストレスを溜め込まないように、リラックスできる時間を作りましょう。
- 過労や睡眠不足を避け、規則正しい生活を送りましょう。
- 禁煙、節酒、バランスの取れた食事、適度な運動を心がけましょう。
- カフェインの過剰摂取は控えましょう。
- 医師の指示に従い、薬をきちんと服用しましょう。
- 定期的に医療機関を受診し、経過観察を受けましょう。
- 緊急時の対応について、家族や周囲の人と共有しておきましょう。
看護師として伝えたいこと:胸の違和感は我慢せずに、まずは相談を
不整脈は、放置すると命に関わる病気を引き起こすことがあります。
「ただの動悸だろう」と軽く考えず、胸の違和感を感じたら、早めに循環器内科を受診しましょう。
不整脈と向き合い、健康な生活を取り戻しましょう。
出典
- 日本循環器学会 不整脈:https://www.j-circ.or.jp/sikkanpg/case/case5/
- 国立循環器病研究センター 不整脈:https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/arrhythmia/