「突然、交通事故の場面が鮮明に蘇り、動悸や震えが止まらなくなる。まるで、その場にいるかのように感じる。」
「夜も眠れないほど、つらい記憶が蘇る」
もしかしたら、それは心的外傷後ストレス障害(PTSD)かもしれません。
PTSDは、命の安全が脅かされるような出来事を経験することで、心に深い傷(トラウマ)が残り、様々な症状が現れる病気です。
この記事では、PTSDの原因、症状、検査、治療法、そして日常生活での注意点について、看護師の視点から詳しく解説します。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)とは:トラウマ体験による心の傷
PTSDは、トラウマとなる出来事を経験した後、1ヶ月以上にわたってフラッシュバックや悪夢などの症状が続く病気です。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の原因:大災害、事故、犯罪被害など
PTSDの主な原因は、以下の通りです。
- 大災害:地震、津波、台風など
- 事故:交通事故、飛行機事故、列車事故など
- 犯罪被害:性犯罪、虐待、暴力など
- その他:戦争、テロ、いじめなど
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の患者数:推定患者数と潜在的なリスク
PTSDの正確な患者数を把握することは難しいですが、日本では約1~3%の人がPTSDを経験すると推定されています。
しかし、トラウマとなる出来事を経験しても、PTSDを発症する人ばかりではありません。
個人の性格や過去の経験、周囲のサポート体制などが複雑に関係しています。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状:フラッシュバック、悪夢、過覚醒など
PTSDの主な症状は、以下の通りです。
- フラッシュバック:トラウマとなった出来事を鮮明に思い出し、まるで実際に体験しているかのように感じる
- 突然、交通事故の場面が鮮明に蘇り、動悸や震えが止まらなくなる。まるで、その場にいるかのように感じる。
- 悪夢:トラウマとなった出来事に関連する悪夢を繰り返し見る
- 過覚醒:常に神経が張り詰めた状態になり、些細な物音にも過剰に反応する
- 回避:トラウマとなった出来事を思い出させる場所や状況を避ける
- 感情の麻痺:感情が鈍くなり、喜びや悲しみを感じにくくなる
- その他:不眠、集中力低下、イライラ、パニック発作、解離症状など
これらの症状が1ヶ月以上続く場合は、PTSDの可能性があります。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の検査:問診、心理検査など
PTSDの検査は、以下の方法で行われます。
- 問診:トラウマとなった出来事や症状について詳しく聞き取りを行います。
- 心理検査:PTSDの症状の程度や、他の精神疾患の可能性などを評価します。
- 質問紙法や面接法などがあります。
- 検査時間は30分~1時間程度です。
- 検査費用は、医療機関によって異なりますが、数千円程度です。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療:薬物療法、心理療法
PTSDの治療は、薬物療法と心理療法を組み合わせることが一般的です。
- 薬物療法:
- 抗うつ薬や抗不安薬などを使用し、症状を緩和します。
- SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)などが使用されます。
- 医師の指示に従い、適切な量を服用しましょう。
- 副作用として、吐き気、眠気、性機能障害などが起こることがあります。
- 抗うつ薬や抗不安薬などを使用し、症状を緩和します。
- 心理療法:
- 持続エクスポージャー療法(PE):トラウマとなった出来事を安全な環境で繰り返し語ることで、記憶を整理し、症状を軽減します。
- 治療期間は数ヶ月~1年程度です。
- 認知処理療法(CPT):トラウマとなった出来事に対する考え方や捉え方を変えることで、症状を軽減します。
- 治療期間は数ヶ月~1年程度です。
- EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法):眼球運動などの刺激を与えながら、トラウマ記憶を処理し、症状を軽減します。
- 治療期間は数ヶ月~1年程度です。
- 集団精神療法:同じような体験をした人たちが集まり、互いに支え合いながら回復を目指します。
- 治療期間は数ヶ月~1年程度です。
- 持続エクスポージャー療法(PE):トラウマとなった出来事を安全な環境で繰り返し語ることで、記憶を整理し、症状を軽減します。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)の予防:周囲のサポート、早期のケア
PTSDを予防するためには、以下のことが大切です。
- 周囲のサポート:トラウマとなる出来事を経験した人に寄り添い、話を聞いてあげることが大切です。
- 早期のケア:トラウマとなる出来事を経験した後、早めに専門機関に相談し、適切なケアを受けることが重要です。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)に関するQ&A
Q:PTSDは、自然に治りますか?
A: PTSDは、自然に治ることもありますが、症状が長引いたり、悪化したりすることもあります。
早期に適切な治療を受けることで、回復を早めることができます。
Q:PTSDの治療期間はどのくらいですか?
A: PTSDの治療期間は、症状の程度や治療法によって異なります。
数ヶ月から数年かかることもあります。
Q:PTSDの人は、日常生活でどのようなことに注意すれば良いですか?
A: PTSDの人は、以下のことに注意しましょう。
- 無理をしない:疲れた時は、休息をとりましょう。
- 安心できる場所や人との時間を大切にする:安全で安心できる環境で過ごしましょう。
- ストレスを避ける:ストレスを感じたら、リラックスできる方法を試しましょう。
- アルコールや薬物に頼らない:一時的に症状が楽になることがあっても、依存症になるリスクがあります。
看護師として伝えたいこと:一人で悩まず、まずは相談を
PTSDは、誰にでも起こりうる病気です。
「こんなにつらいのは、自分が弱いからだ」「誰にも分かってもらえない」
そう思って、一人で悩んでいる方もいるかもしれません。
医療機関に相談してくださいね。
PTSDと向き合い、安心できる生活を取り戻しましょう。
出典
- 国立精神・神経医療研究センター PTSD(心的外傷後ストレス障害):https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/disease35.html
- 厚生労働省 私がPTSDになったとき:https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_ptsd_sub1.html