「最近、少し動いただけで息切れがする」
「足がむくんでパンパン」
「疲れやすくて何もする気が起きない」
もしかしたら、それは心不全のサインかもしれません。
心不全は、心臓の機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなる状態です。
放置すると命に関わることもあります。
この記事では、心不全の原因、症状、検査、治療法、そして日常生活での注意点について、看護師の視点から詳しく解説します。
心不全とは:心臓のポンプ機能低下
心不全とは、心臓のポンプ機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなった状態をいいます。
心不全の種類:急性心不全、慢性心不全、左心不全、右心不全
心不全は、発症の仕方や、原因となっている心臓の部位によって、種類が分類されます。
- 急性心不全:
- 急激に心臓の機能が低下した状態です。
- 原因としては、急性心筋梗塞、重症の不整脈、感染症などが挙げられます。
- 慢性心不全:
- 徐々に心臓の機能が低下した状態です。
- 原因としては、高血圧、糖尿病、心臓弁膜症、心筋症などが挙げられます。
- 左心不全:
- 左心室の機能が低下した状態です。
- 肺に血液がうっ滞し、息切れや呼吸困難などの症状が現れます。
- 右心不全:
- 右心室の機能が低下した状態です。
- 全身に血液がうっ滞し、むくみや腹水などの症状が現れます。
心不全の患者数:高齢者に多い
心不全は、高齢者に多くみられます。
日本では、65歳以上の約10人に1人が心不全を患っていると言われています。
心不全の原因:様々な心臓疾患
心不全の原因は、様々な心臓疾患が重症化することで起こります。
主な原因としては、以下のものが挙げられます。
- 虚血性心疾患:
- 心筋梗塞、狭心症など
- 高血圧:
- 高血圧が長期間続くと、心臓に負担がかかり、心不全を引き起こすことがあります。
- 心臓弁膜症:
- 心臓の弁が正常に機能しなくなり、血液の流れが悪くなる病気です。
- 心筋症:
- 心臓の筋肉に異常が起こる病気です。
- 不整脈:
- 心臓のリズムが乱れる病気です。
心不全の症状:息切れ、むくみ、疲れやすい
心不全の主な症状は、以下の通りです。
- 息切れ:
- 少し動いただけで息切れがする、階段を上るのがつらいなど。
- 例:
- 少し歩いただけで息が上がり、ゼーゼーする。
- 階段を上るのがつらい。
- 夜寝る時に、息苦しくて横になれない。
- 例:
- 少し動いただけで息切れがする、階段を上るのがつらいなど。
- むくみ:
- 足や顔がむくむ、靴がきつくなるなど。
- 例:
- 夕方になると、足がむくんで靴が履きづらくなる。
- 朝起きた時に、顔がむくんでいる。
- 指輪がきつくなる。
- 例:
- 足や顔がむくむ、靴がきつくなるなど。
- 疲れやすい:
- 疲れがなかなか取れない、倦怠感が続くなど。
- 例:
- ちょっとした家事でも、すぐに疲れてしまう。
- 何もする気が起きない。
- 体がだるくて、動きたくない。
- 例:
- 疲れがなかなか取れない、倦怠感が続くなど。
- その他:
- 動悸、胸痛、咳、食欲不振、吐き気、腹部膨満感などが現れることもあります。
心不全の検査:問診、身体診察、血液検査、心電図検査、胸部X線検査、心臓超音波検査
心不全の診断には、以下の検査が行われます。
- 問診:症状や、既往歴、生活習慣などを詳しくお伺いします。
- 身体診察:呼吸音や心音を聴診したり、むくみの有無を確認したりします。
- 血液検査:心臓の状態を確認するための血液検査を行います。
- 心電図検査:心臓の電気的な活動を記録します。
- 胸部X線検査:肺の状態を確認します。
- 心臓超音波検査:心臓の構造や機能を詳しく調べます。
これらの検査結果を総合的に判断し、心不全の診断を行います。
心不全の治療:薬物療法、生活習慣の改善、リハビリテーション
心不全の治療は、薬物療法、生活習慣の改善、リハビリテーションを組み合わせて行われます。
- 薬物療法:
- 利尿薬、血管拡張薬、強心薬、β遮断薬など、症状や状態に合わせて薬を使用します。
- 例:
- 利尿薬:体内の余分な水分を排出し、むくみを改善します。
- 血管拡張薬:血管を広げ、心臓の負担を軽減します。
- 強心薬:心臓の収縮力を高め、血液を送り出す力を強くします。
- β遮断薬:心拍数を抑え、心臓の負担を軽減します。
- 例:
- 利尿薬、血管拡張薬、強心薬、β遮断薬など、症状や状態に合わせて薬を使用します。
- 生活習慣の改善:
- 塩分制限、水分制限、体重管理、禁煙、節酒など、心臓への負担を軽減するための生活習慣の改善を行います。
- 例:
- 塩分制限:1日の塩分摂取量を6g以下にする。
- 水分制限:1日の水分摂取量を医師や看護師の指示に従って制限する。
- 体重管理:適正体重を維持する。
- 禁煙:禁煙する。
- 節酒:アルコール摂取量を控える。
- 例:
- 塩分制限、水分制限、体重管理、禁煙、節酒など、心臓への負担を軽減するための生活習慣の改善を行います。
- リハビリテーション:
- 心臓の機能を回復させるために、リハビリテーションを行うことがあります。
心不全の予後:早期発見・早期治療が重要
心不全は、早期発見・早期治療が重要です。
早期に発見されれば、治療によって進行を抑えることができ、症状を改善することも可能です。
心不全の予防:生活習慣病の予防、定期的な健康診断
心不全を予防するためには、生活習慣病を予防することが大切です。
- バランスの取れた食事、適度な運動、禁煙、節酒などを心がけましょう。
- 定期的な健康診断を受け、高血圧、糖尿病などの生活習慣病を早期に発見し、適切な治療を受けましょう。
心不全に関するQ&A
Q:心不全と診断されたら、食事はどのように気を付ければ良いですか?
A: 心不全と診断された場合は、塩分を控えることが大切です。
1日の塩分摂取量は、6g以下が目安となります。
また、水分の摂りすぎも心臓に負担をかけるため、医師の指示に従って適切な水分量を守りましょう。
Q:心不全の治療期間はどのくらいですか?
A: 心不全の治療期間は、原因となっている病気や、症状の程度によって異なります。
長期間にわたって治療が必要となることもあります。
Q:心不全を予防するために、どんな運動をすれば良いですか?
A: 心不全を予防するためには、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動が効果的です。
ただし、運動を行う際には、医師に相談し、無理のない範囲で行うようにしましょう。
看護師として伝えたいこと:不安な気持ちに寄り添います
心不全と診断された方は、不安や心配を抱えているかもしれません。
「これからどうなるのだろう…」「日常生活に支障が出るのではないか…」
そんな気持ちを抱えている方もいると思います。
何か不安なことや心配なことがあれば、医療機関にご相談ください。
一緒に、心不全と向き合い、より良い未来を目指しましょう。
出典
- 日本循環器学会 心不全とは?:https://www.j-circ.or.jp/sikkanpg/case/case2/
- 日本心不全学会:https://www.asas.or.jp/jhfs/index.html
- 国立循環器病研究センター 心不全と虚血性心疾患の疫学:https://www.ncvc.go.jp/coronary2/column/20211209_05.html