「最近、会社に行くのが辛い」
「学校で友達と上手くいかない」
「環境が変わってから体調が悪い」
もしかしたら、それは適応障害かもしれません。
適応障害は、ストレスの多い現代社会で誰にでも起こりうる心の不調です。
この記事では、適応障害の原因、症状、検査、治療法、そして予防策について、看護師の視点から詳しく解説します。
適応障害とは:ストレス反応が日常生活に支障をきたす状態
適応障害とは、特定のストレス因(例:仕事、学校、人間関係、環境の変化など)に対して、過剰なストレス反応を示し、心身に様々な症状が現れて、社会生活や日常生活に支障をきたす状態を指します。
誰にでも起こりうる反応ですが、症状が重い場合は、専門家のサポートが必要になります。
適応障害の有病率:明確なデータは少ない
適応障害の有病率に関する明確なデータは、日本ではまだ少ないのが現状です。
しかし、ストレス社会と呼ばれる現代において、多くの人が適応障害に悩んでいると考えられています。
適応障害の症状:心身に様々な症状が現れる
適応障害の症状は、人によって様々ですが、主な症状としては以下のものが挙げられます。
- 精神的な症状:
- 気分の落ち込み、イライラ、不安、焦り、集中力の低下、不眠など
- 例:
- 今まで楽しめていたことが楽しめなくなる
- 何をしても気分が晴れない
- 些細なことでイライラしたり、怒りっぽくなる
- 将来への不安が拭えない
- 集中力が続かず、ミスが増える
- 寝つきが悪く、何度も目が覚める
- 例:
- 気分の落ち込み、イライラ、不安、焦り、集中力の低下、不眠など
- 身体的な症状:
- 頭痛、動悸、吐き気、食欲不振、倦怠感、めまいなど
- 例:
- 頭痛が頻繁に起こる
- 胸がドキドキして、息苦しくなる
- 吐き気や嘔吐が続く
- 食欲がなく、体重が減る
- 体がだるく、疲れが取れない
- 立ちくらみやめまいがする
- 例:
- 頭痛、動悸、吐き気、食欲不振、倦怠感、めまいなど
- 行動的な症状:
- 遅刻や欠席、仕事の能率低下、人間関係の悪化、飲酒や喫煙量の増加など
- 例:
- 会社や学校に行きたくない
- 遅刻や欠席が増える
- 仕事や勉強に集中できない
- 人間関係が上手くいかない
- ストレス解消のためにお酒やタバコの量が増える
- 例:
- 遅刻や欠席、仕事の能率低下、人間関係の悪化、飲酒や喫煙量の増加など
これらの症状は、ストレス因がなくなると自然に軽快することが多いですが、長引く場合は、専門家のサポートが必要になります。
適応障害の原因:ストレス因と個人の脆弱性
適応障害の原因は、ストレス因と個人の脆弱性の2つが考えられます。
- ストレス因:
- 仕事、学校、人間関係、環境の変化など、日常生活で遭遇する様々なストレスが原因となります。
- 例:
- 仕事のノルマ達成
- 学校での友人関係
- 転勤や引っ越し
- 結婚や出産
- 病気や怪我
- 家族の介護
- 経済的な問題
- 例:
- 仕事、学校、人間関係、環境の変化など、日常生活で遭遇する様々なストレスが原因となります。
- 個人の脆弱性:
- 性格的な傾向や、過去のトラウマ、発達障害などが、適応障害の発症に影響する可能性があります。
- 例:
- 完璧主義
- 依存心が強い
- ストレスに弱い
- 過去のトラウマ体験
- 発達障害
- 例:
- 性格的な傾向や、過去のトラウマ、発達障害などが、適応障害の発症に影響する可能性があります。
これらの要因が複合的に絡み合い、適応障害を発症すると考えられています。
適応障害の検査:問診が中心
適応障害の診断には、問診が中心となります。
- 問診:
- 症状や、ストレス因となった出来事、生活状況、性格傾向などについて詳しくお話を伺います。
- 具体的にどのような時に、どのような症状が現れるのか、詳しくお伺いします。
- ストレス因となっている状況について、客観的な視点から評価します。
- 心理検査を行うこともあります。
- 例:
- 抑うつ状態を評価する検査
- 不安状態を評価する検査
- 性格傾向を評価する検査
- 例:
問診を通して、適応障害の診断や、症状の程度を評価します。
適応障害の治療:休養と環境調整、薬物療法、カウンセリング
適応障害の治療は、以下の3つを柱として行われます。
- 休養と環境調整:
- まずは、心身を休ませることが大切です。
- 十分な睡眠時間を確保し、心身ともにリラックスできる時間を取りましょう。
- ストレス因となっている環境から一時的に離れることも有効です。
- 例:
- 休職
- 転地
- 人間関係の調整
- 例:
- 薬物療法:
- 症状に応じて、抗不安薬や抗うつ薬などが用いられます。
- 薬物療法は、あくまで対症療法であり、根本的な解決にはなりません。
- 例:
- 不安が強い場合には、抗不安薬
- 抑うつ気分が強い場合には、抗うつ薬
- 不眠が続く場合には、睡眠薬
- 例:
- カウンセリング:
- カウンセラーとの対話を通して、ストレスの原因や対処法を学びます。
- 認知行動療法や、支持療法などが有効です。
- 例:
- 認知行動療法:
- ストレスに対する考え方や行動パターンを見直し、より適応的なものに変えていく治療法
- 支持療法:
- カウンセラーが患者さんの話をじっくりと聞き、共感することで、精神的な安定を図る治療法
- 認知行動療法:
- 例:
これらの治療法を組み合わせることで、より効果的に適応障害を改善することができます。
適応障害の予防:ストレスマネジメントが重要
適応障害を予防するためには、ストレスマネジメントが重要です。
- ストレスの原因を理解する:
- 自分にとって、どのようなことがストレスになるのかを把握しましょう。
- ストレスの原因を特定することで、対策を立てやすくなります。
- ストレスを解消する方法を見つける:
- 趣味や運動、休息など、自分に合ったストレス解消法を見つけましょう。
- ストレスを溜め込まずに、こまめに発散することが大切です。
- 周りの人に相談する:
- 悩みを抱え込まずに、信頼できる人に相談しましょう。
- 誰かに話すだけでも、気持ちが楽になることがあります。
- 適度な運動をする:
- 適度な運動は、ストレス解消に効果的です。
- ウォーキングやジョギングなど、無理のない範囲で続けられる運動を見つけましょう。
- 十分な睡眠をとる:
- 睡眠不足は、ストレスを感じやすくします。
- 毎日同じ時間に寝て、十分な睡眠時間を確保しましょう。
- バランスの取れた食事をする:
- 栄養バランスの取れた食事は、心身の健康を保ちます。
- 偏食を避け、バランスの良い食事を心がけましょう。
これらのストレスマネジメントを実践することで、適応障害の発症リスクを減らすことができます。
適応障害に関するQ&A
Q:適応障害は、誰でもなる可能性がありますか?
A: はい、誰でもなる可能性があります。
ストレス社会と呼ばれる現代において、多くの人が適応障害に悩んでいます。
Q:適応障害は、自然に治ることはありますか?
A: ストレス因がなくなれば、自然に軽快することもあります。
しかし、症状が長引く場合は、専門家のサポートが必要になります。
Q:適応障害の治療期間はどのくらいですか?
A: 治療期間は、症状の程度や、治療法によって異なります。
数週間から数ヶ月かかることもあります。
Q:適応障害の薬は、依存性がありますか?
A: 薬の種類によっては、依存性があるものもあります。
医師の指示に従って、正しく服用しましょう。
看護師として伝えたいこと:あなたは一人ではありません
適応障害は、誰にでも起こりうる心の不調です。
「もしかして、適応障害かも…?」
と、少しでも不安に感じたら、我慢せずに、早めに医療機関を受診してください。
あなたは一人ではありません。
つらい気持ちを抱え込まずに、周りに頼りましょうね。
出典
- 厚生労働省 用語解説 適応障害:https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1653/
- 日本精神神経学会 日本精神神経学会 精神療法委員会に「精神療法について」を訊く:https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=58