頭痛は、日常生活で誰もが経験する可能性のある身近な症状です。
しかし、慢性的に繰り返される頭痛は、日常生活に支障をきたし、生活の質を大きく低下させる要因となります。
慢性頭痛は大きく「群発頭痛」「緊張型頭痛」「片頭痛（偏頭痛）」の3つに分類され、それぞれ原因や症状、適切な対処法が異なります。
この記事では、それぞれの頭痛の特徴を詳しく解説し、つらい頭痛から解放されるための効果的な治し方をご紹介します。
群発頭痛：激しい痛みの原因と対処法
群発頭痛は、慢性頭痛の中で最も激しい痛みを伴うと言われています。
耐えがたいほどの激痛に襲われるため、日常生活に大きな支障をきたします。
症状：目の奥をえぐられるような激痛
- 片側の目の奥をえぐられるような、または突き刺すような激しい痛みが特徴で、じっとしていられないほどの苦痛を伴います。
- 2年に1回から毎年1～2回程度の頻度で、一定期間（数週間から数ヶ月）集中的に起こることが多いです。この期間を「群発期」と呼びます。
- 特に冬の季節や明け方など、特定の時間帯に現れやすい傾向があります。
- 頭痛発作中は、痛む側の目の充血、鼻水、涙、瞼の腫れ、瞳孔の縮小などの症状を伴うことがあります。
- 男性に多く、喫煙や多量の飲酒習慣のある人に比較的多く見られます。
原因：血管の拡張と神経の炎症が関与？
群発頭痛の明確な原因はまだ完全には解明されていませんが、目の後ろを通る太い血管（内頸動脈）の拡張と、その周囲の三叉神経という神経への刺激や炎症が関与していると考えられています。
対処法：病院での治療が基本
群発頭痛は非常に強い痛みを伴うため、市販の鎮痛薬では効果が不十分な場合が多いです。
医療機関（神経内科、脳神経外科、頭痛外来など）を受診し、適切な治療を受けることが重要です。
- 急性期治療： 痛みを和らげるために、トリプタン製剤の注射や点鼻薬、酸素吸入などが行われます。
- 予防療法： 群発期に頭痛の発作を予防するために、副腎皮質ステロイド薬やカルシウム拮抗薬などが用いられることがあります。
緊張型頭痛：首や肩こりからくる締め付けられる痛み
緊張型頭痛は、頭全体や後頭部から首にかけての締め付けられるような、または圧迫されるような痛みが特徴です。
比較的多くの方が経験したことがある頭痛です。
症状：頭全体が締め付けられるような痛み
- 後頭部から首にかけての筋肉の緊張による、頭の締め付けられるような、または圧迫されるような鈍い痛みが特徴です。
- 目の疲れ、倦怠感、めまい、肩や首のこりなどを伴うことがあります。
- 長時間パソコン作業をする人、デスクワークなど同じ姿勢を続ける人に多く見られます。
- 首を回した際に、一瞬ふわっとするようなめまいを感じることもあります。
原因：筋肉の緊張と精神的なストレス
急な寒さなどで筋肉が緊張し、頭を締め付けることで起こると考えられています。
精神的なストレスや緊張、不安、疲労なども発症に関与します。
対処法：市販薬と生活習慣の見直し
緊張型頭痛は、市販の鎮痛薬（アセトアミノフェン、イブプロフェンなど）で症状が緩和されることが多いです。
- 市販薬： 痛みが強い場合は、市販の鎮痛薬を服用しましょう。ただし、用法用量を守り、長期間の連用は避けてください。
- 生活習慣の見直し： 長時間同じ姿勢を続けないように、適度に休憩を取り、ストレッチなどを行うことが有効です。精神的なストレスを解消するために、リラックスできる時間を持つことも大切です。
- 温める： 首や肩を温めることで、筋肉の緊張が和らぎ、痛みが軽減することがあります。
片頭痛（偏頭痛）：脈打つ痛みと吐き気
片頭痛は、頭の片側（または両側）に起こる、脈打つようなズキンズキンとした痛みが特徴です。吐き気や嘔吐を伴うことも多く、日常生活に大きな影響を与えます。
症状：脈打つ痛みと吐き気、前兆がある場合も
- 頭の片側が脈に合わせてズキンズキンと痛みますが、両側に起こる場合もあります。
- 痛みのピーク時には吐き気や嘔吐、光や音、匂いに対する過敏などを伴うことがあります。
- 頭を振ったり体を動かしたりすると、痛みが強くなる傾向があります。
- 頭痛が起こる前に、生あくび、肩こり、首の張り、視覚的な前兆（閃輝暗点など）が現れることがあります。
原因：神経の炎症と血管の拡張
脳の血管周囲で何らかの原因による神経の炎症が起こり、三叉神経から放出される神経ペプチドという物質の影響で脳血管が拡張することで発生すると考えられています。
片頭痛を引き起こす要因（誘因）：
片頭痛は、様々な要因によって引き起こされることがあります。
以下に主な誘因をカテゴリー別にまとめました。
- 生活習慣： 睡眠不足、寝過ぎ、不規則な食生活、過労、ストレスなど
- 環境要因： 天候の変化、気圧の変化、騒音、強い光、匂いなど
- 食品： アルコール（特に赤ワイン）、チョコレート、チーズ、加工食品など
- ホルモン： 月経、排卵、妊娠など女性ホルモンの変動
対処法：市販薬、病院での治療、予防法
片頭痛の治療には、痛みを和らげる急性期治療と、発作を予防する予防療法があります。
- 市販薬： 軽度の片頭痛であれば、市販の鎮痛薬（イブプロフェン、ロキソプロフェンなど）で症状が緩和されることがあります。ただし、市販薬を頻繁に使用する場合は、薬剤の使用過多による頭痛（薬物乱用頭痛）を引き起こす可能性があるため、医師または薬剤師に相談することをお勧めします。
- 病院での治療（急性期治療）： 中等度から重度の片頭痛には、トリプタン製剤やCGRP関連製剤などの専門的な薬が有効です。これらの薬は医療機関で処方を受ける必要があります。
- 病院での治療（予防療法）： 片頭痛の発作を頻繁に繰り返す場合は、予防療法が検討されます。β遮断薬、抗てんかん薬、抗うつ薬などが用いられることがあります。
- 生活習慣の見直し： 規則正しい生活、十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動などを心がけることが重要です。
- 片頭痛ダイアリー： 頭痛の発作が起こった日時、症状、誘因などを記録することで、自身の頭痛のパターンを把握し、対策に役立てることができます。
受診について：専門医への相談を推奨
頭痛の診療は、一般的には神経内科または脳神経外科で行われています。
最近では、頭痛専門外来を設けている医療機関も増えています。
頻繁に頭痛を起こす場合や、市販薬で改善しない場合は、専門医に相談することをお勧めします。
特に、以下のような症状がある場合は、すぐに医療機関を受診してくださいね。
- 突然の激しい頭痛
- 手足の麻痺やしびれ、言語障害などを伴う頭痛
- 発熱や意識障害などを伴う頭痛
出典：
- 日本頭痛学会ウェブサイト (https://www.jhsnet.net/)
- 厚生労働省ウェブサイト (https://www.mhlw.go.jp/)
