「最近、気分が落ち込んで何もかも嫌になる」
「眠れない日が続いてつらい」
「体がだるくて何もできない」
もしかして、うつ病かも…?
この記事では、うつ病の症状、原因、治療法、そして周囲の人のサポートについて、詳しく解説します。
うつ病とは:誰にでも起こりうる心の病気
うつ病(単極性障害)は、気分の落ち込みや意欲の低下が続く心の病気です。
誰にでも起こりうる病気であり、決して特別なものではありません。
「心の風邪」と例えられることもありますが、実際には脳の機能障害や神経伝達物質の異常などが関わっていることが分かっています。
適切な治療を受けることで、多くの方が回復することができます。
うつ病の症状:心の症状と身体症状
うつ病の症状は、心の症状と身体の症状に分けられます。
心の症状
- 気分の落ち込み: 悲しみ、憂うつ、絶望感、無価値感
- 意欲の低下: 何もする気がしない、今まで楽しんでいたことが楽しめない、何かに取り組んでもすぐにあきらめてしまう
- 興味や関心の喪失: 周囲のことに関心がなくなる、趣味や娯楽を楽しめなくなる
- 不安や焦り: 理由もなく不安になったり、焦ったりする、イライラしやすくなる
- 集中力の低下: 物事に集中できなくなる、考えがまとまらない
- 思考力の低下: 考えがまとまらない、決断できない、物事を深く考えすぎる
- 自責感: 自分を責める気持ちが強くなる、罪悪感にさいなまれる
- 希死念慮: 死ぬことを考える、自殺願望
身体の症状
- 睡眠障害: 寝つきが悪い、夜中に目が覚める、朝早く目が覚める、熟睡感がない
- 食欲不振または過食: 食欲がない、または逆に食べ過ぎてしまう、体重が減るまたは増える
- 倦怠感: 体がだるくて動けない、疲れやすい
- 頭痛、肩こり、腰痛など: 様々な体の痛み、原因不明の体の不調
- 動悸、息切れ: 呼吸が苦しくなる、胸が締め付けられるような感じ
- 胃腸の不調: 便秘や下痢が続く、吐き気、胃もたれ
これらの症状は、人によって現れ方が異なります。
また、症状の程度も日によって変動することがあります。
うつ病の原因:様々な要因が複雑に絡み合って発症
うつ病の原因は、一つではなく、様々な要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
- 生物学的要因: 脳の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなど)のバランスの乱れ、遺伝的要因
- 心理的要因: ストレス、トラウマ体験、性格傾向(几帳面、完璧主義、真面目など)
- 社会的要因: 仕事や人間関係のストレス、経済的な問題、家庭環境の変化、孤独
これらの要因が複合的に作用し、うつ病を引き起こすと考えられています。
うつ病の治療:休養、薬物療法、精神療法が柱
うつ病の治療は、休養、薬物療法、精神療法が柱となります。
休養
まずは、心身を休ませることが大切です。
十分な睡眠をとり、ストレスから離れることで、心身の回復を促します。
薬物療法
抗うつ薬を使用して、脳の神経伝達物質のバランスを整えます。
主な抗うつ薬には、以下の種類があります。
- SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬): セロトニンの量を増やすことで、気分の落ち込みを改善します。副作用として、吐き気や食欲不振などがあります。
- SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬): セロトニンとノルアドレナリンの量を増やすことで、気分の落ち込みや意欲の低下を改善します。副作用として、吐き気やめまいなどがあります。
- ミルタザピン: ノルアドレナリンとセロトニンの量を増やすことで、気分の落ち込みや不安を改善します。副作用として、眠気や食欲亢進などがあります。
- トラゾドン: セロトニンの量を増やすことで、気分の落ち込みや不安、不眠を改善します。副作用として、眠気やふらつきなどがあります。
最近では、副作用が比較的少ないSSRIやSNRIが主流となっています。
抗うつ薬の効果が現れるまでには、2~4週間程度の時間がかかります。
また、副作用が出ることがありますので、医師とよく相談しながら、自分に合った薬を服用することが大切です。
自己判断で薬の量を調整したり、服用を中止したりしないようにしましょう。
精神療法(カウンセリング)
認知行動療法など、考え方や行動のパターンを見直すためのカウンセリングも有効です。
認知行動療法では、うつ病の原因となっている考え方の癖や行動パターンを特定し、それを修正するための練習を行います。
その他の治療法
- TMS(経頭蓋磁気刺激療法): 磁気刺激によって脳の活動を活性化させる治療法です。薬物療法で十分な効果が得られない場合に検討されます。
- ECT(電気けいれん療法): 重症のうつ病に対して行われる治療法です。
うつ病の予防:生活習慣の見直しとストレスマネジメント
うつ病を完全に予防することはできませんが、生活習慣を見直すことや、ストレスを適切に管理することで、リスクを減らすことができます。
- 規則正しい生活: 十分な睡眠をとり、バランスの取れた食事を心がけましょう。
- 適度な運動: ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は、気分転換になり、ストレス解消にもつながります。
- ストレスマネジメント: ストレスの原因を突き止め、それを解消するための方法を見つけましょう。
- 周囲とのコミュニケーション: 家族や友人とのコミュニケーションを大切にし、悩みを打ち明けられる人を見つけましょう。
- 休息: 忙しい日々の中で、意識的に休息する時間を取りましょう。
- 趣味: 没頭できる趣味を持つことは、気分転換になり、ストレス解消にもつながります。
うつ病は、誰にでも起こりうる心の病気です。
早期発見し、適切な治療を受けることで、多くの方が回復することができます。
もし、気分の落ち込みや意欲の低下が続くようでしたら、一人で悩まずに、医療機関を受診してください。専門家のサポートを受けることで、きっと楽になるはずです。
出典
- 厚生労働省 うつ病:https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/know/know_01.html
- 国立精神・神経医療研究センター うつ病:https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/disease01.html
- 日本うつ病学会:https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/